第八話
夫婦の罪と罰
妻は罪を、夫は罰を
まだ、次男、三男がこの世に生れていなかった頃、 夫はとにかく帰りが遅かった。 いつも午前様で、終電に間に合わずに、 タクシーに乗って大阪から帰ってくるのだ。 大阪から奈良まで、タクシー代にゆうに1万はかかるのだよ。 当時、会社が近いからと(会社は奈良) 夫の兄と従業員の一人が我が家に居候をしていた。 わたしは、慣れない育児に疲れてる上に、 他人との同居で、わたしのストレスはすごいものだった。 夫と、子供の話や、今日1日の出来事を あれこれ話したいと思っていても、その時間が作れない。 夫の帰りは午前様も珍しくなかった。 夫の兄は、「まあ、大目にみてやれ」と言って慰めてくれたが、 慰めはいいから、君たち家に帰ってくれと内心思っていた。 自分で起こした会社が、まだ軌道に乗っていない時期で、 そこら中駆け回っていたし、 若くて、実績のない夫に 銀行はなかなかお金を貸してはくれない。 ストレスも、相当なものだったのだろう。 当然、その憂さを夫は酒ではらしていた。 夫は、仕事の事で、決して妻のわたしに 愚痴るということをしなかったし、 それが、彼なりの思いやりだったのだろうが、 わたしの愚痴は、どこではらせばいいというのか。 好きだった仕事をすっぱり辞めて 若くで結婚、出産したわたしは、 当時、自分が社会から取り残されたような 気持ちになって、鬱々としていた。 他人との同居もつらかった。 顔で笑って、かいがしくお世話していても、 ストレスは相当なものだった。 (その後24のとき、過労で40日の入院を余儀なくされる) ある夜、夫はいつものように 酔って夜中に、大阪からタクシーに乗って帰宅した。 帰りが遅い事を愚痴ろうにも、 飲んでる夫では無理というもの。。。 ほとんどへべれけ状態で話にならん。 ポケットマネーとは言え、 タクシー代に1万円(月に3〜4度)を浪費するのも 許せないではないかっ。 その夜わたしは夫の財布から万札を全部抜き取った。 6万だったと思う。 懲らしめてやるのだっ 朝になり、夫は財布の中に万札がない事に気がつき えらく慌てていた。 わたしは知らん顔をしていた。 夫は夫で、そのことで何も聞かなかった。 そしてその日わたしは、 OOOOに買い物に行き、その6万で シックな花瓶、花柄の大きな傘つぼ、 30センチほどの高さの猫の置物に、 籐のおしゃれな棚を買って帰って来たのだった。 は〜〜〜〜 見事なショッピング。ぴったし6万也 その後も、夫は財布から無くなった6万円の事には 一切触れなかったし、 わたしが抜いたのだということも、 わたしは言わずに、数ヶ月が過ぎた。 それから、夫の実家の法事で 実家に行ったときに、 夫の弟に、こう言われたのだった。 「お姉さんっ、OO兄さん、えらいめにおうたらしいですね」 「え??」 「どっかで、財布の中から万札抜かれたって言うてました。」 「タクシーの中かも知れんって・・」 「悪い奴、おるもんやねええ」 「ぼくも気を付けますっ」 わたしは一瞬考えて、、、 弟に正直に話した 「あああ。。あれね、、犯人はわたしです」 「帰りがいつも遅いんで、お財布から万札抜いたんです こらしめてやろうと思いましてね」 「ははははは・・ 」 このことを知った夫は、 わたしを怒ると思いきや、 犯人がわたしだと分かってほっとしていた。 逆にわたしは、 ほかの人が、犯人だと疑われてしまった事に、 ものすごく罪悪感を感じたのだった・・・・ 以後、、そのような事は一切していない。 懺悔・・・・ 今ですか? 大阪からタクシーに乗って帰宅するなどという もったいない事はしなくなった。 今は逆に、、、 会社が落ち着き、自宅から会社が近い事もあり 頻繁に帰宅する夫に、 ほとほと困っている・・・ 帰宅するのは、、日に一回で十分だ・・・ 人間とは無い物ねだりだ。

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