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第三話 血は争えないものでございます |
夢の中で飛ぶ母と娘 祖父の夢遊病、妹の夢遊病は第二話で話した。
母親は、夢遊病こそなかったが、異常に霊感の強い人だった。 恐い夢を頻繁に見るらしく、そういう夜は決まって、奇声を発していた。 これが、実に気持ちが悪い。 夢の中で得体の知れない何者かに追われているとか、 先祖らしき人たちの顔がずらっと出てくるのだとか、 次の日には、こんな恐い夢を見たのだと、 話して聞かせる母だった。 わたしたちも慣れたもので、夜中この奇声を聞くと母を揺り起こしていた。 いつの頃だったか、 この母の奇声が、奇妙な笑い声に変わった。 理由はこうだ。 「最近、恐い人がでてくると、わたしは飛べるようになった」 つまりこういうことらしい。 恐い得体の知れない人間に追われる場面で、 母は、この得体の知れないやつが、届くか届かないかの すれすれのところまで、体を宙に浮かせるというのだ。 母は「ざまああみろっ!」と、それは、奇妙な笑い声となって、 私たちが、聞く事にとなる奇声となる。(勝ち誇ったような高笑い) 「ケケケ」という、人間の声ともつかない奇妙な声で 母の夢の内容より、こっちのほうがよっぽど恐怖なのだ。 母は、恐い夢の中で、 「これは、夢である」というのを認識している。 わたしもそうだ。 恐い夢を見ているときは、これが夢だという事を認識している。 だが声がでない、体を動かせない。 母は、その恐怖の場面から逃げるための 飛ぶという技を身につけてしまったのだった。 血とは、争えないものだ。 お母さん、実はわたしも同じことができる。 数年前わたしも同じく、 恐怖の場面から逃げるために、飛んでしまうということをやってしまった。 以前NHKの何かの番組で 夢をコントロールするというのは、 ある程度可能であるという事を言っていた。 |