第二話
血は争えないものでございます
    貞子より恐かった妹と祖父

    三男坊はいま11歳、小学校5年生だ。
    彼は時々夜に寝ぼける癖がある。
    ひょこっと起き出して、パジャマから洋服に着替えたり
    ( 寝ぼけて学校へ行く用意をしているらしい)
    歯磨きをしてみたり、なにか訳のわからないことを、
    起きているわたしに訴えに来る。
    たいていは「ほらほら、夜中だよ、」と言って
    ベッドに連れて行き、しばらくそばにいてあげると安心して眠る。
    息子の夢遊病はわたしのほうの遺伝子である。
    祖父も夢遊病者だった。
    私の妹も夢遊病で、彼女のの行動はさらに奇怪だった。

    夢遊病:眠っているときに無意識に起き上がり、
    動作・歩行などをし、目が覚めてから
    そのことを覚えていない病気

    今では笑い話だが、当時の妹の夢遊病の行動は恐怖だったし
    祖父の夢遊病の話も当時は笑えなかった。
    そう・・あれは私が小学校3年か4年の寒い冬の夜の出来事だ。
    すでに寝床にはいっていた3歳年下の妹が、
    ベッドから起き出して、ふらふらとトイレに行った。
    わたしはこたつにはいって、家族とテレビを見ていた。
    妹はなかなかトイレから戻ってこなかった。
    気になった父親が様子を見に行ったのだと思う。
    なんだかお風呂場あたりが騒々しい。
    父親の怒鳴り声で母親が慌てて駆けつける。
    トイレに行ったと思っていた妹は、パジャマのまま湯船に入り、
    湯船の中で眠っていたのだ。
    父親に湯船から引きずり出され、ずぶぬれの妹の姿・・・。
    その姿を、私と弟は凍り付いたままみていた。
    とにかく大騒ぎの夜だった。
    妹の夢遊病が巻き起こす騒動はこればかりではない。
    夏になると、浮き袋を持ち出して床で泳いでいた。
    家の外に出て、すぐ近所のお寺に向かって走り出した事もある。

    ところで、祖父の夢遊病だが、祖父は長身で骨太の体格
    ある夜、祖父は夜中になにを思ったか毛布を片手に丸めて持ち、
    ドアの横の壁に体当たりして壁をぶち壊し、
    裸足のまま夜の町を駆け抜けたらしい。
    祖父は、町内一足の速い男と評判だったそうな。


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