第十一話
命知らずの妊婦
  
救急隊員に、行き先を指示した大胆不敵な妊婦
どもを3人も出産すると、 出産に至るまでにも、いろいろとあるものだ。 一番目の子を妊娠中、 骨盤が狭いからと、大きな病院で 「あなたは、帝王切開です」と 早いうちに言われていたが、 他の助産院で、私はラマーズ法で自然分娩した。 初めてのお産にもかかわらず、安産だった。 二人目も、安産だったが、彼の場合は 私の不注意で、大変なことになってしまった。 そう・・あれは 24の春・・(遠い目) わたしは、妊娠7ヶ月の身重の体だった。 長男は、ただ今2歳。 どうしても朝から、 行かなければならない用事が入って 長男が寝ている間にと、子どもを置いて オットの会社へとバイクを走らせた。 (身重の体でバイクに乗るという大胆不敵な妊婦) 用事を済ませると、わたしは家路に急いだ。 2歳になる長男を一人で寝かせたまま出て来たので 気が急いたのだろうか。 信号機の前で、右折するとき バイクといっしょに、派手に倒れてしまったのだ。 あ=================================!!! 時間は、通勤するサラリーマンが行き交う8時頃 一瞬、頭が真っ白になったわ・・・ そして、倒れている私の周りに、人だかりが・・・ あ・・起きなくちゃ・・ 鼻から、生暖かいものが流れてくるのがわかる なんだか、体が重い。 体を起こそうとする背後から 女性の大きな声が待ったをかける・・・ 「動いたらあかんっ!!!!」 「今救急車を呼ぶから、動いたらあかんっ!!」 バイクごと倒れたわたしを見たこの女性は わたしが妊婦だという事に気がついたのだろう。 わたしはこのまま、救急車で運ばれるのかっ。 鼻血を垂らしたまま、いわれる通り わたしは倒れたままの姿勢でじっとしていた。 通りがかりのみんなに取り囲まれ なんだか殺人現場みたいになってしまっている。 ほどなくして救急車が駆けつけてきた。 妊婦である事は、119番で連絡済みなのだろう わたしは救急隊員に抱えあげられ、 即、救急車の中にいれられた。 「妊娠していますね、大丈夫ですか?」 ただちに、OO産婦人科に向かいますからね」 「待って下さい(ちょっと待った!)」 「すみませんが、このままわたしの自宅に救急車を 走らせて下さい・・・・」 とっさのことだったが、口から出た言葉だった。 救急隊員に、行き先の指示をだした、 大胆不敵な妊婦は、他にいないだろう 「え???」と驚く救急隊員。 「2歳になる息子が寝てるんです。 いっしょに、、、連れていくから 救急車を自宅に回してください・・・」 わたしの必死のお願いに、 サイレンの音を鳴らしながら自宅に向かった救急車 自宅についたわたしは、よろめきながら 2階で寝ているベッドから 息子を抱きかかえて、また救急車に。 その後無事産婦人科で処置を受けたが、 この事故の衝撃で、妊娠7ヶ月のお腹は かんかんに張ってしまって即入院。 以後2週間、子宮弛緩剤の点滴に苦しんだ。 バイクでこけた妊婦が、 病院へ向かう途中、自宅に寄り子供を連れていった話は その後、救急隊員がよく利用していたという 喫茶店から、噂がたちまち広がってしまったらしい。 喫茶のママは親しくしている知人だった。 見舞いに来た喫茶のママは、 「とんでもない妊婦というのは、ちゃこちゃんやったんか」 と呆れ顔だった。 義母には、夫共々罵倒されてしまったこの事故だ 息子は、わたしの小さな体から、 無事健康体で、3310グラムという立派な大きさで生れてくれた。 その息子が、先日小学校を卒業した。 実に、感慨深い。