福島次郎
三島由起夫との同性愛関係をつづった実名小説。
本屋の主人にいずれこの本は絶版になると言われて買っておいた本だ。
出版されたときから、手紙15通を遺族の了承を得ずに掲載したとして、
手紙が著作物かどうかということで争われてきたが、
著作権侵害を認め、本の著者福島次郎と発行元の文芸春愁が
出版禁止や賠償金500万円の支払うこととなった。
絶版になるだろうと聞いて買っておいたものの、
三島由紀夫自体にあまり興味がもてなかったことと、
告白本ということに、暴露本みたいな下品なイメージが強く読まずにいたが
良質で誠実に書かれた文学作品だった。
ホモセクシャルに特別興味があるわけではない。
ただ愛の形は、男女のそれだけとは限らないと私は思っている。
福島次郎は、三島由紀夫の人間性、文学的才能を高く評価し、
彼のもつカリスマ性に惹かれ尊敬しつつも、
著者は生理的に彼の肉体に魅力を感じることができなかった。
彼の肉体ごと愛してみようと努力したのだが、
彼との肉体交渉は苦痛でしかなかった、という著者のこの感覚は
わかるような気がする。遺族の了解を得ずに手紙を掲載したことで、
著作権侵害の判決を受けたのは妥当だろう。
ただこの作品は、三島の手紙抜きでは成り立たなかったことを考えると
遺族との交渉をおこなうべきだったと思う。
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