太陽みたいな人だと。そう、言ったことがある。
それはずっと秘めておくつもりだった僕の本心。
いつものように集落を回るあの人の後ろを着いていって。
いつものようにおしゃべりして、笑う彼女を見て。つい口を滑らせてしまった。
『先生は太陽みたいな人ですね』
そう、うっかり言ってしまった後、しまったと思った。
必死で、それ以上追求されないように笑顔を作った。
周りの人は深く考えなかったのか、褒め言葉だと思って先生に笑いかけていた。
でも、先生だけは僕の顔を見て硬い表情をしていた。
しまった、と。思った。
2人きりの帰り道。
どういう意味ですが、と問われた。
一瞬跳ね上がった心臓を押さえながら、必死で、別に、と答えた。
顔を上げることが出来なかった。
横目で彼女を見たとき、目が合った。
にこり、といつものように温かい笑顔で笑いかけてくれる先生。
その笑顔を見た瞬間、無性に悲しくなった。
でも、悟られないように笑顔で返した。
不恰好な、偽物の笑顔。
先生の後ろで、太陽が水平線に沈みかけていた。
赤く染まる空と、太陽。
でも、僕が言っている太陽とは違う。こんなものは先生じゃない。
『そんなに似てますか?』
突然立ち止まった先生が、沈む夕日を見ながらそう言った。
どう答えればいいのかわからず、何か言いたいのに何も言えぬままでいた。
首を振ることすら出来ず、言葉になれなかった吐息が、苦しげに零れていった。
でも、先生。上手くいえないけど。僕が言っているのは、こんな夕日のことじゃないんだ。
どの集落でも、どんなものが相手でも。
いつでも笑顔を絶やさない貴方を見ながら、いつも思っていた。
貴方は真昼の太陽なのだと。
貴方と一緒に出かけるとき、頭上で僕らを照らしている太陽こそが貴方なのだと。
太陽の光はいつでも暖かい。
あの人の笑顔はそれと一緒だった。
誰にでも、区別なく、注がれる暖かな笑顔。
太陽は照らす相手を選ばない。
だからこそ、僕は太陽から選ばれない。
水平線に沈んでいく太陽を見続けていた。
沈んでしまった後、真っ暗な道を何も言わぬまま2人で歩いた。
たまに目が合うと、いつも先生は微笑みかけてくれた。
そんな笑顔を見るたびに、僕はまた泣きたくなった。
僕に注がれるその笑顔は、決して、僕だけのものに成りえない。
太陽みたいな人だと。そう、言ったことがある。
あの人の笑顔は相手を選ばない。だから、僕も選ばれない。
太陽は、遠すぎる。
FIN.
―――――――
ウィルア。そんな感じ。
アティsideの後に読んでくれないとちと困る。
つまりはアティ先生勘違いってことで。
アティは真昼の太陽なんです。夕日じゃなくて。
人を区別せずみんなを照らす真昼の太陽。
全てを選ぶから、誰か一人を選んでくれない。
優しい、でも、残酷な。そんな人だと、思うのです。
(2004.4.7)
ぶらうざばっく