平和な毎日、というものが、ここ最近続いている。
朝起きれば学校が待っているし、それが終われば好きなことをしてる。
もちろん1日は変わらず24時間で、夜の次には朝が来た。
当たり前のように巡って行く毎日。
でも、私を取り巻く世界は、確かに一つのものを失った。
「小金井は元気にやってんのかなー」
まだ明るい空を見上げながら、
ほとんど中身の詰まっていないかばんをぶんぶんと振り回して風子が言う。
その隣を、かばんに当たらないように少し離れて水鏡は歩いていた。
「400年前って、どんな世界なんだろうね・・・・」
途方もない時間。
その時を越えて、私を取り巻いていた世界のピースは消えていった。
それは確かにあいつが自分で望んだことで、
これを成し遂げたことであいつが満足してるだろうことも、今幸せだってこともわかってる。
それでも、ピースが1つ欠けた世界が、
何の支障もなく当たり前みたいに巡っていることがやけに、寂しかった。
「寂しいか?」
「ん、まあ・・・・・・それなりにね」
心の中を読まれたような鋭い問いに、苦笑いしながら答えた。
口にしなくても、顔に出さなくても、誰もが思っている・・・正直な答え。
「ま、あいつのことだから。あっちで元気にやってるとは思うけど」
「そういう奴だからな」
「それに、紅麗も一緒だしね」
「ああ・・・」
「今頃、兄弟仲良く暮らしてんじゃないの?」
「兄弟・・・・か」
呟いて、水鏡が静かに空を見上げた。
思い出すのはいつも、笑顔で去っていった小金井の姿。
「正直言っちゃうとね。何で小金井が紅麗と一緒に行っちゃったんだろって、たまに思うんだ」
「風子・・・」
「確かに小金井にとって紅麗は特別だったのかもしれない。
・・・でも、私らだって、それなりに特別だったと思うんだ。でも・・・」
あいつが選んだのは私たちじゃなかった。
あいつが選んだのは、一緒に戦ってきた私たちでも、初めて通った中学校の友達でもなくて。
兄弟となろうと、そう言ってくれた人だった。
「悔しいって思うときもある。寂しいって思うこともあるよ」
まだまだいっぱい、やりたいことがあった。
パズルの簡単な解き方教えてもらう約束もしてたし、今度遠くまで遊びに行こうって話もしてた。
でも、それはもう叶えることの出来ない約束。
それを思うと、悔しかった。寂しかった。
でも。
「あいつがそうしたかったんなら、それでいっか・・・って。最後は、そう思っちゃうんだよね」
あいつが最後に選んだのが私たちじゃなかった。
でも、この世界の全てを捨てて、紅麗と共に行くとそう言ったあいつは。
確かに、笑顔だったから。
「確かにここに小金井はいないし、もう会うことも出来ない。
・・・でも、今まで一緒にいたってのは本当だし、今でも小金井は私らの仲間。
それはこれからも変わらない。ずっと一緒。だから」
寂しいなんて、言ってらんないよね?
そう言って見上げた水鏡の顔は、うっすらと笑顔を浮かべていた。
つられるようにして風子も笑顔を浮かべる。
それは泣き笑いに近かったかもしれない。強がりだったかもしれない。
でも、その言葉に嘘はなかった。
私の世界から消えたピースは、今頃。
今日みたいな青い空の下で、幸せに暮らしているんだろう。
FIN.
ごめんなさい村長。