うとうと




彼女は、とても眠そうだった。
寝てしまえばいいのに、と思うほど、彼女は眠そうだ。
けれど、何とか寝ないようにと努力しているのがとてもよくわかる。
懸命に閉じようとするまぶたを押し上げ(それでも目はもう半分以上閉じられているのだけど)、
時折がくんと首が落ちる度に、はっと顔を上げて体勢を持ち直す。
何をそんなにムキになっているのか。呆れながら、彼はため息をついた。



「風子」



寝そうになったら起こして!と言っていたのを思い出したわけではないが、
とりあえず意識があるのか確認するように、水鏡が静かに呼びかける。
ゆっくり舟をこいでいた頭がすっと上がり、閉じられていた瞳が薄っすら開かれた。



「なーにー・・・・・?」



力の抜けたしまりの無い言葉に、はあ、と再度ため息をついた。



「どこまで進んだ?」

「なにがー?」

「本、読んでたんじゃなかったのか?」

「よんでるよー」

「どこまで進んだ?」

「・・・・・・・・・・・」



のろい動作で、辛うじて取り落とさなかったらしい手元の本を風子が持ち上げる。
しおりが挟まれている位置を確認しようとしているらしい。
しかし悲しいかな、取り落とさなかったのは本のみで。
しおりは、しっかり床に落ちていた。



「・・・・・・・どこまで読んだっけ?」

「いい加減、諦めて寝たらどうだ?」

「い・や」

「どうせ頭に入ってないんだろう?」

「でも読まないと・・・・・貸し出し期間今日までだし」

「再度借りればいい」

「予約入ってて当分借りれそうにないんだもん」



そう言って、とろんと下がった目をごしごしとこすった。
普段読書などしない人間のくせに、どうしてそこまでムキになるのか。
話題になっているから読んでみたい、と言っていたのはまだ記憶に新しい。
運よく図書室で貸し出されているのを借り出し、早1週間が過ぎようとしている。

眠気をこらえて読もうとするほど面白いと考えればいいのか、
読んでいると眠くなるほど面白くないと考えればいいのか。
そんなことを思いながら、必死で活字を追う風子を水鏡は正面の席に座って見ていた。



「面白いか?」

「んー」

「残りはどれくらいだ」

「・・・・ちょっと」

「何時までに返せばいい?」

「5時」

「今は3時だな」



自分の時計を見ながら水鏡がそう言う。
その言葉を話半分で聞きながら活字を目で追う風子は、なおもうつらうつら夢心地。
そんな彼女の手から、ぱっと、本が消えうせた。



「・・・・・みーちゃん?」

「起こしてやるから、寝てろ」

「でも・・・・」

「半分寝てるような頭で読むより、そのほうがずっと効率的だ」

「・・・・・・・・・本っ当に起こしてくれる?」

「1時間したら起こしてやる」



奪い取った本を撫でるように流し読む水鏡の横顔を見ながら、
がくりと、脱力するように風子が机に伏した。
人の居ない静かな図書室に、やがて寝息が聞こえ始める。
慣れない事をするからだ。
すやすや眠る目の前の少女を見ながら、小さく笑った。




FIN?

根性です。どこぞの村長がリンクなんて貼るから、プレッシャーなんてかけるから・・・!
本当なら「眠いからパス」ってな感じに気軽に出来る企画のはずだったのに・・・!
期待されてるみたいなので頑張りました。ここまで何も考えずに小説書いたのは久しぶりです(死)
別に日常の一こまが書きたくてこんな話になったんじゃないですよ?
指が勝手に物語を作っていったのです。マジで。マジで。
だからご不明な点があっても私のせいじゃないです(責任逃れ)

ね、眠い・・・・・!


(2004.6.5)