はしる あめ




朝はまだ晴れていたんだ。
言い訳するように胸中で呟いた。
見上げた空は、水を存分に含んでいることを主張するようにどんより薄暗い。
今にも降り出しそうだ、そう思いながらぼんやり空を見上げていた。
強い風が髪をさらう。それに導かれたように、ぼつりと、地面に水滴が落ちた。



「何してんの、みーちゃん」



降り注ぐ雨を呆然と眺めていたとき、後ろから声がした。
振り返るまでも無く声で誰かなんてことはわかる。
それでも反射的に後ろを振り返ると、首をかしげて不思議そうにしている彼女と目が合った。



「あー、やっぱ降ってきちゃったんだ、雨」



もう少しもってくれたらなあ。
空を見上げながらぼやく彼女の手には、しっかりと傘が握られている。
ずいぶんと用意がいいことだ。もしかして、予報で今日は雨だと言っていたのだろうか。



「何してんの?帰ろうよ」



言いながら、バン、と傘を開く。
傘を差し、雨の中へ一歩踏み出した自分に続く気配もなく、屋根の下にとどまる水鏡を見て、
再度風子が首をかしげた。
どうかしたのか、目がそう言っている。
その問いかけに、彼も無言で答えた。肩をすくめて、空を見上げる。



「・・・・・・もしかして傘、無い?」

「朝は晴れてたからな」

「天気予報で午後は雨だってあんなにはっきり言ってたじゃん」

「見てなかった」

「いつもは用意周到なみーちゃんらしくない」

「うるさい」



からかうような口ぶりで楽しそうに言う風子に、冷たく言い放つ。
そんな態度すら楽しかったのか、笑い声が上がる。
何といえばいいのか、ひどく、負けた気分だ。



「ま、傘忘れちゃったんならしゃーないよね」



そう言って、雨の中にいた彼女が屋根の下へ戻ってきた。
水の滴り落ちる傘を閉じて、畳む。



「みーちゃん家まで、走れば10分かかんないよね」

「お前まで濡れる気か?」

「まだ小雨だもん。大丈夫だって」

「・・・・・・・まったく」



ひらひらと手を振って笑顔を浮かべる風子に、水鏡がため息をついた。
この場合、普通なら置いていくか、傘に入れるかなりしそうなものなのに。
そうではなく自分の傘を畳むことを選ぶとは。
そんなところが、ひどく彼女らしいような気がした。



「んじゃ、みーちゃんの家まで競争ってことで」

「あのな」

「いくよ?よーい・・・ドン!」



一足先にスタートを切った風子が、水溜りを豪快に走り抜けていった。





FIN.

相合傘よりは、一緒に濡れて帰りそうだな、というイメージ。
村長に競り勝ちました!勝利!!(笑)
二番煎じは嫌だとのことは、彼女は彼女で別のことやってくれるらしいですよ。
楽しみにしてましょうね。ああ、発売が楽しみだ・・・!


(2004.6.4)