ここにいる






少し時季のはずした来訪。
青い空の下に吹く風は、心なしか少し冷たかった。



「連れてきてくれたの初めてだね」

「まあな」



片手に花を、片手に水を持って進む。
いくつもの石の家ー墓を潜り抜けていくのは、ちょっとだけ胸が痛い。



「ここだ」



そう言って、水鏡が立ち止まる。
続いて風子が立ち止まり、ずっと下げていた目線を上げた。
水鏡家之墓、とだけ書かれた、お世辞にも立派だとはいえない墓が、そこにはあった。



「ここに、お姉さんがいるんだね」

「・・・・ああ」



手にしていた花を供えて、墓に水をかける。
風子も、持っていた線香を取り出して火をつけ、水がかからないように注意して、土に差した。

黙々の進む作業。
声をかけるのが、なんだか悪いような気がした。

一通りの作業が済んで、立ち上がった水鏡が、無言で手を合わせる。
それに倣うようにして風子も手を合わせる。
目を閉じるフリをして、ちらりと横目で水鏡を見る。
天国のお姉さんに、何を言っているんだろうかと、少し、気になった。



「・・・・どんな人だった?」

「?」

「お姉さん」



手を合わせたまま、ぽつりと聞いた。
閉じていた目を開けて、水鏡がこちらを向く。



「いい人だった?」

「・・・そうだな」

「綺麗だった?」

「ああ」

「みーちゃんみたいにしっかりしてたの?」

「そうでもなかった・・・かもな」

「姉弟仲、良かったんでしょ?」

「いや・・・・困らせてばかりだった」

「でも、大好きだったんだよね」



独り言のように呟いて、あわせていた手を下ろした。
いつもと違う風子の様子に、水鏡が不思議そうに首を傾げる。



「私はみーちゃんのお姉さんになれないし。
お姉さんみたいに、命がけでみーちゃんのこと守ったり、出来ないかもしれない」

「・・・・風子?」

「でもさ、私、生きてるから」



ずっと墓に向けていた視線を上げて、水鏡を見た。
怪訝な顔をした水鏡が、隣に居た。



「ここにいるから。
みーちゃんのお姉さんがしてたことは、私には出来ないかもしれない。
でも、みーちゃんがして欲しいこと、ちょっとは出来るかもしんないし。
生きてるから。ここに・・・いるから。だから・・・・・その・・・・」



言葉がまとまらないのか、風子が眉間にしわを寄せる。
そして、考えることを放棄したように、表情をぱっと戻して。
びし、っと。水鏡に向けて指を差した。



「だから!もっと頼れよ!」



必死な、でも、あまりに簡単な言葉に。
思わずといった風に、水鏡がぷっと吹き出した。



「・・・・・笑わなくてもいいじゃん・・・・・」

「いや・・・・悪い。何を言い出すかと思えば・・・・・」

「な、何さ!」

「言われなくても」



頼りにしている。
呟いた言葉が予想以上に優しくて、不覚にもドキドキした。




生きてるから。ここにいるから。



FIN.
ーーーーーーーー
映画をね、見たんですよ。
演技がすっごい上手くてさ、ぞくぞくした。
いやー、面白かったなー。
その中のワンフレーズです。素敵。
でもあのオチはどうかと思うの。ある意味涙が出たよ。ううう。

あ、作品の解説してないや。・・・まいっか。

(2004.4.23)

ぶらうざばっく