ひみつの場所






子供は何かと秘密を作りたがるものなのかと、最近の願子を見てそう思う。
近所の子供と遊ぶことの増えた願子は、最近秘密基地とやらを作りはじめたらしかった。
どこにあるのかも、何を作っているのかもこっちは全部わかってるのに、あの子達は気付かれてないと思ってる。
たまに聞いてみても、「教えない」と言われてしまうだけ。
そう言って、とても楽しそうに笑うのだ。
子供にとって、秘密はとても楽しいものなんだろう。



そういえば、私も昔はそんなものを作ったっけな。
烈火と2人で、学校の近くの空き地にいろんなガラクタを持ち込んで。

古い破れた傘は屋根だった。
そこらへんの空き缶を積んで壁にした。
ビニールシートを持ち出してテントみたいにして、晴れた日はお菓子を持ち込んで食べたっけ。
雨の日は家でその秘密基地が壊れてないか心配してた。


どこからでもすぐ見渡せる、みんなが知ってた『秘密』基地。
それが、私たちのお城だった。




そこでたくさん遊んで、もちろんケンカもして。
それでも最後は「また明日」って言って帰った。
次はここにこれを作ろう、今度はあそこにあれを作ろう。
だんだんと大きくなっていく秘密基地。
あの頃の私たちは、本当に、誰にも気付かれてないって思ってた。
そのことがおかしくて、毎日毎日遊んでた。
でも今になって思うと、秘密基地で毎日遊ぶのが楽しかったんじゃなくて、
誰かと秘密を共有してる、っていう事実が嬉しかったんだろうな。


2人だけの秘密、っていう奇妙な結束感。
2人のものだから大事にしなきゃっていう責任感。
知らないうちに私たちは、ケンカするのも忘れて秘密基地存続のために絆を深めていった。



それが終わったのは、何日も雨が続いたとき。
強い雨が続いて、何日かいて晴れた日に行ってみたら、基地はもうぼろぼろだった。
傘は吹き飛ばされて、積み上げた缶はそこらへんに散らばっていた。
ビニールシートはびしょ濡れで、ものすごく悲しかったのを覚えてる。

どうして雨の間ずっと放っといた!・・・って言ってケンカになって。
2人ともわーわー泣いてその日は別れた。
どっちも悪くないってことは2人ともわかってたのに、
そのときはただ悲しいのが先立って冷静になることが出来なかった。


次の日からは、何もなかったように別の場所で遊んだ。
もう一回作ろう、とはどちらも言わなかった。





終わりこそ苦かった、秘密基地にまつわる思い出。
それまではあんなに楽しかったのに、終わりを思い出すのが辛くて今まで封印してた。
そういえばあれから一度も見に行っていない。







玄関から、願子の声がする。
いってきます、と言っているところを見ると、これからまた例の秘密基地へ行くのだろう。
部屋の窓から、家の前の道路を走っていく願子を見送る。
その背中を見ながら、なんだか妙に懐かしい気分になった。


そうか、あれは・・・・昔の私だ。








願子の姿がすっかり見えなくなった後、
居ても立ってもいられなくて、すぐ電話に向かって走っていった。
かける相手はもちろん烈火。
日曜のこの時間だと寝てる可能性は大きいけど、この際関係ない。
叩き起こしてでもつき合わさせてやる。






ねえ烈火。
久しぶりにあそこにいこうか。
終わりこそ苦かったけれど、でもすごく楽しかったあの頃の秘密基地へ。
今はもう違う誰かが秘密の基地を作ってるであろう、あの、私たちだけのひみつの場所へ。




FIN.

烈風。烈&風?