: 指きり :
内緒だよと言って笑った、 彼女の楽しげな笑顔が目に焼き付いている。 誰にも内緒の約束。 何か悪戯を企んでいるような、子供みたいな彼女の表情。 綺麗な場所を見つけたんだと彼女は言った。 一緒に行こうね。と、 まるでそうするのが当然であるかのように、続けて言った。 嫌だ、と素っ気無く言ったのに、怯むどころか彼女は笑う。 「やっぱり、ルックはそう言うと思った」 そう言って、彼女は笑うのだ。 「本当にね、綺麗だったんだよ」 だからどうした、と冷たく言っても彼女には効かない。 「だから、今度一緒に行こう。約束だよ」 そう言って、一方的に約束を取りつける。 「もー、なんでそんな顔するのよ! ほら、指きりしよ!!」 言いながら、強引に腕を取って、指を絡ませる。 抵抗する隙も与えずに、勝手に指をきってしまう。 そして浮かべる、満足そうな笑顔。 その笑顔には、きっと一生勝てない。 「じゃ、約束だよ、ルック!」 言い残して、走り去る。 残された僕は、呆然とただ、きられた指を見つめる。 自分勝手。 強引。 傍迷惑。 ・・・・でも、嫌じゃない。 左手の小指を見つめる。 生まれて初めてきった指は、痛くもないのにただ、熱かった。 FIN. からめた小指で ロッテも、なかなか強引な人間だろうと思う。 |