[[[ 捜索 ]]]
窓から差し込む朝日を浴びて、この部屋の現在の宿泊客は目を覚ました。
ゆっくりと起きあがり、ふと、自分の頬をつたう見ずに気付いて、軽く手で拭う。
どんな夢を見ていたのかなど覚えてもいないけれど、
この様子だと、彼が出てきていたのは間違いないだろうと考えて、自嘲気味に軽く微笑んだ。
ベッドを軽く軋ませて、静かにそこから下りる。
そして、脇に置いてある小さなテーブルに乗ったジャケットを手に取り、おもむろにそれを羽織った。
のんびりしてなどいられない。
今日もまた、あの人を探して場所を移さなくてはならないのだから。
そう、頭を切り替えて、数無い荷物を簡単にまとめに入る。
それと同時に、今日はどこを探すか、どこへ行くかを頭の中で考える。
こんな生活を続けて、いったいどれだけ経ったのだろう。
そんな思いが、不意に頭を過る。
あの人を、あの人だけを思って、ひたすら旅を続けて。
求めては、逃してきた。
この追いつづけていても、もう、彼には会えないのではないだろうか。
不安はいつも、つきまとっていた。
もう、会えない・・・・・・・?
――――パンッ!
自らの手で、両の頬を勢い良く叩く。
予想以上に大きな音を為したが、今はそんなことも気にならない。
弱気になっていてどうするの!
心で叫んで、軽く頭を2、3度振る。
大丈夫よ、絶対・・・・・・会える。
そう唱えて、目を閉じる。そして、開く。
その瞳からは不安が消え、勝気に輝いていた。
まとめ終えた荷物を抱えて、すっくと彼女は立ち上がる。
あの人に会うまで――私は死なない。
絶対に・・・・諦めない。
決意を胸に、部屋の扉を開け放った。
FIN.