トントン。
部屋にリズム良い包丁の音が響く。
初めは危なっかしかった包丁を持つ手つきも、
最近はずいぶんとさまになってきたと思う。

土曜の昼下がり。
水鏡に背を向け昼食を作る姿はさながら若奥様(爆)
実に和やかで、絵になるその風景。


ぶち壊しているのは、彼女が歌っている、歌だった。













::















「おとこはおーかみなのーよー、きをつけなさーいー」


「・・・・・・」


「としごろにーなあったなーらー、つつしみなさーいー」


「・・・・・・」


「ひつじのかおしていてーもー、こころのなかーじゃー」


「・・・・・・風子」


「おおかみがー・・・・・・・・・・・何、みーちゃん?」




包丁を動かす手と、機嫌良く口ずさんでいた歌を止めて、
風子が呼ばれた方へ振り返る。




「・・・・・・・・何でも無い」


「・・・・・・?何でもないならいいけどさー・・・・・?」


「何でも無い。続けろ」




呼んだにも関わらず、何も無いをつきとおす水鏡を不信に思いながらも、続けろを言われたからには作業を続けようと風子もくるりと体勢を戻し――そして続けた。




「ひつじのかおしていてーもー、こころのなかーじゃー」


「風子!」


「・・・・・だ・か・ら!何なのさ、みーちゃん!!」




意図の掴めない水鏡の行動に、痺れを切らした風子が吼える。
どうやら皆まで言わねばわかってもらえないらしいことを悟った彼は、1つ嘆息してから切り出した。




「その歌、止めろ」


「何で?」


「・・・聞いてて楽しいものじゃない」


「・・・・・・そんなに下手だった?」


「上手い下手の問題じゃない」




はあ・・・と深く息を吐いて、何とも居心地悪そうな表情を示す。
どうやら、本気でこの歌を聞くのは嫌らしい。




「何で?いいじゃんこの歌。面白くて」


「面白くない」


「面白いと思うけどなー・・・・・・歌詞とか」


「・・・・・・それが嫌なんだろうが・・・・・・・」




ぽつり小さく呟いた水鏡の言葉に、力はこもっていなかった。















「そんな邪険するほど嫌わなくてもいいじゃんか」




出来あがった昼食を目の前に、
どうも納得いかないという風に風子がぼやく。
随分前の曲ではあるものの、彼女はこの歌が好きらしい。
相反して水鏡は、どうもこの曲が苦手らしい。




「好き嫌いの問題じゃない」


「歌詞だって、深く考えないでテキトーに流しちゃいなよ。
そしたら楽しい歌だって」


「・・・・・・・・」


「――― 嫌いなのは仕方ないかもしんないけどさー・・・。
私は好きだよ、この歌。――― いろいろ考えさせられるし?」




そう言って悪戯に笑った風子を、不思議そうに水鏡が見る。
すると風子は半ば子悪魔それを笑顔に浮かべて、言った。




「風子ちゃんもいちおーお年頃だし?
みーちゃん家来るとき、キャミ着てきた事ないじゃん」


「・・・・・・」


「短パンもなかっただろ?」


「・・・・・学校帰りに制服で来るからだろう、それは」


「まあ、それもあるけどさー・・・・・」


「それに、その割にはべたべたとくっつくのはやめなかっただろう。
すぐ人を背もたれにする・・・・・」


「だって寒いし」


「夏でもか?」


「誰かさんがあーんまり涼しげな顔してたから、悔しかったんだよ」




そう言って、ケラケラと笑った。




「ダイジョブダイジョブ。心配ないって」


「・・・・・・何が゛心配ない”だ」


「別に相手がみーちゃんだから、とかいう問題じゃないよ?」


「・・・・・?何が・・・・・・・」




言葉の真意を掴み損ねて、水鏡が問いかける。
その言葉すら遮って、風子は淡々と答えた。




「だって、錐常備だもん」


「・・・・・・・・・・」

















どうやら、狼も楽じゃないらしい。








FIN.


・・・・・・何コレ(待て)
どこらへんが狼なんだ!?・・・・ああ、テーマか!(納得すんな)
所詮stmimiにはこの程度が限界です。
甘いのなんか期待しちゃだめよ〜(逃げ)

何はともあれ、1234HITリクでした。
・・・・・・・・今のカウンタ数から引き算はしないでください;;;;
えらい遅くてほんますいません;;;;;(平謝り)





モドル