日が沈むにはまだ早い。
空が青い、帰り道。寄り道。




「たっだいまー」

「いつからここはお前の家になったんだ」



靴を脱いで上がり込む風子のセリフに、後ろから水鏡のツッコミが入った。
学校の帰り道。時間が早いので寄り道。
別段珍しくも無いその行動パターンに、
毎度ツッコミを入れる水鏡は律儀といえば律儀だ。



天気が良いとは言えど、まだまだ寒い今日この頃。
風の吹く外とは違い、部屋の中はまだマシ。
お世辞にも暖かいとは言えなくとも、少なくとも寒くは無い。
外の寒さにすっかり凍えた2人は、風の止んだ室内の温度に、
ほっと一息、息をついた。



「最近マシになったけど、やっぱりまだ寒いよねー」

「そうだな」



冷たくなった手に息を吹きかけながら言った風子に、
鞄を下ろしながら水鏡が答える。
真似るように風子も鞄を下ろし、そしてそのままの動作で、
がらりと、窓を開けた。



「・・・・・・・・・おい」

「ん?何?」

「今寒いと言ったばかりだろうが」

「うん、それが?」

「・・・・・・・・・・」

「あ、窓?」



矛盾しまくりの風子の行動に、言葉を失った水鏡の動作の意味を読み取り、
風子が明るく言った。水鏡が、無言で頷いた。



「この部屋って日当たりいいからさー」

「それで?」

「ほら、来て見たらわかると思うけど、
日が当たってるとこって結構暖かいんだよ、床」

「で?」

「窓際は暖かいから、窓開けてるくらいが丁度良い」



きっぱりと言い放った風子に、水鏡は二の次が言えず・・・・否。
二の次を言う事を諦めて、何も言わずにため息をついた。


『子供は風の子』
そんな言葉が頭を過る。
彼女は自分と1つしか年が違わなかったような気もするけれど。



「ほんとに暖かいんだよ。
信じてないでしょ?来てみたらわかるってば!」



明らかに信じていなさそうな水鏡の腕を無理に引いて、窓際に引っ張り込む。
カーテンを全開にした大きな窓の傍には、太陽の光が目一杯差し込んでいた。

腕を引かれるままに、その場所に座り込んだ。
なるほど、確かに日中ずっと日を浴びていた床はほんのり温かい。



「あー、気持ちいー」



陽光を全身に浴びて、風子がそう呟いた。

窓際に座り込み、見上げる空は青い。
座り込む床はほんのり温かい。
過ぎる風は冷たいけれど、騒ぐほど、冷たいわけでもない。


確かに、これくらいで丁度良いかもしれない。
ふとそんなことを思った。








日当たりの良い窓辺。

暖かくなった床に座り込む。

少し開けた窓から、冴え渡る風が吹き込む。

日が落ちるまでの短い時間。

あと少し、昼間を楽しむ。




FIN.
――――――――

日当たりの良い窓辺シリーズその1.
寒がりの私にはとても出来そうにない芸当(じゃあ書くなよ)

水鏡の家は日当たりかなりよさそう。
しかも窓でかそう。
そんなことを思って書きました(おい)

 

モドル