開始間際の部活。一人いない部員。
探してきてくれと頼まれて、
ぶつぶつ文句を言いながら予想される居場所に走った。
「まだここにいたの?」
走ってきたせいか、肩で行きをしながら有希が言う。
視線の先には、椅子にもたれ窓に寄りかかる、シゲの姿。
ここは、シゲのクラスだった。
「あんたね、そんなとこでボケっとしてないでさっさと部活来なさいよ!
あんたがのろのろしてるせいで、ここまで探しに来るハメになったのよ!?」
頭ごなしに怒りに任せて、言いたい事を全て並べる。
いつもなら、ここらでシゲの苦笑交じりの弁解が入ったりするのに、
今日に至っては、何の謝罪も言い訳も、反応すら無い。
人気の無くなった教室で、自分の声だけが響く中、
いい加減おかしいと気付いた有希はシゲに近付き―――そして気付いた。
「・・・・・・・・寝てる?」
覗き込んだシゲの顔。
静かに立てる、寝息が聞こえる。
「こんなところで何してるのかと思ったら・・・・」
呆れ気味に呟いて、シゲの前の席に座り込む。
腰を下ろした椅子は、陽光を存分に浴びて、ほんのり暖かい。
軽く手をついた机も同じく。
なるほど、眠りを誘うにはもってこいの場所なのらしい。
「まあ、気持ちはわかるけど」
ぽつり呟いて、暖かな机に倒れ込む。
触れる頬に伝わる熱。ぽかぽかして気持ち良い。
眠くなる気持ちも、わかる。
机に伏した状態で、視線だけ上げてシゲを見る。
気持ちよさそうに閉じた目。規則正しく呼吸を刻む肩。
少し、羨ましくなった。
部活はもう始まってる。
私がいなくて、困ってるかもしれない。
でも、ま。
「5分くらいなら、大丈夫よ・・・ね」
起きあがり、小さく呟く。
腕にしていた時計を外して、5分後にアラームをセットした。
「あと、5分だけよ」
そう呟いて、間抜けな顔をして眠りこけるシゲの鼻の頭をちょんとつついてから、
もう1度暖かな机に身を預けて、やがて有希も目を閉じた。
短いようで長い5分。
暖かな光が降り注ぐ。
日当たりの良い窓辺。
FIN.
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日当たりの良い窓辺シリーズその2.
でも書きあがったのは一番という矛盾した作品(待て)
中学生は平和でいいなあ・・・・・!(待て)
こんな可愛らしいカップルであって欲しいと思います。
シゲ有希に関わらず、笛カップリは全て。