[ 彼女の性格 ]




この男をどうしてくれよう。
彼女は、部室に転がり込んできた邪魔者を一瞥してそう思った。

部活終了後の部室。
残っているのは、グラウンドで自主練習に励む真面目人間数名と、
片付けをしている女子部兼マネージャーの女子数名。
そして、こうして部日誌をつけている有希。
そして、そんな彼女の怒りの矛先、シゲであった。



「なー、小島ちゃんー」

「何よ」

「今日が何の日か覚えてないん?」

「何のこと?」

「ほんまに覚えてへんのん?今日やで?今日」

「うるさい」

「7月8日やで?7月8日ー」

「うるさい」

「何で覚えてへんねや!?何日も前から言うとったやんかー」

「・・・・・知らないわよ」

「ほんまに何の日か覚えてへんの?」

「知・り・ま・せ・ん」

「嘘や。絶対覚えとる。覚えてへんはずあらへん」

「何を根拠にそんな・・・・」

「7月8日やで?よー考えてみ?」

「・・・・・・・・・・・・那覇(78)の日?」


「・・・・・・・・」





一瞬、部屋に沈黙が降りた。




「・・・・・・あんな、小島ちゃん」

「―――何も言わないでいいわ」

「今のはちょっと無理矢理すぎる思うで」

「何も言わなくて良いってば!」

「素直やないねんから」

「うるさい。黙れ」

「ほんまはわかっとるくせにー」

「知らないったら知らないわよ」

「なー、小島ちゃんー」

「うるさい」

「今日何の日か知っとるやろー?」

「知らない」

「7月やで?8日やで?こーじーまーちゃーん」

「あー、もう!しつこいっ!!」



腹に据えかねた、という風に叫んで、
有希がだんっと大きな音をたてて、傍らに置いていた自分の学生鞄を机の上に置いた。
叩きつけた、という表現の方が正しいかもしれない。
とにもかくにも自分の鞄を机の上に上げて、彼女は
ぶつぶつと文句を言いながらそれを開け始めた。



「だいたいね、普通は催促しないもんなのよ?
誕生日のお祝いなんて」

「ほら、やっぱ知っとるやん」

「うるさい。このまま外に放り出されたいの?」

「大人しうしときます」

「よろしい。――――ホントは、皆が帰った後に渡すつもりだったのよ」

「そないもったいぶらんでもええのに・・・」

「・・・・・皆にバレて、自分の取り分、なくなっても知らないわよ」



シゲの言葉には直接答えず、呟くそうにそう言って、
有希がシゲに、小さな包みを投げてよこした。
危なっかしくそれを受け取り、間髪居れずに紐を解く。
普通、開けて良いか確認とか取らない?とため息混じりに言った有希の言葉を軽く受け流して、包みの中に見たもの。
それは、星の形をしたクッキーだった。



「感謝しなさいよ。
結構大変だったんだから、部活の後にそれだけ焼くの」

「手作りなん?」

「いちよーね」

「・・・・・・・・・・おおきに」

「・・・・・・・」

「・・・・・・何でそない驚いた顔してるん?」

「だって、びっくりしたんだもん」

「何が?」

「あんたもそんな風に真面目にお礼言ったりするのね・・・・」

「心外や・・・・・・」

「日頃の行いでしょ?」

「ひどー」



軽く叩いた有希の嫌味に、シゲが嘘泣きするようにして言った。
そんなシゲを見て、有希が笑う。
そんな有希を見て、シゲも笑う。



「ほんま、おおきに」

「いえいえ、どーいたしまして」

「来年はケーキでええで」

「・・・・・って、ちゃっかり来年の催促までしてんじゃないわよ!」

「ええやん。予約や予約」

「強欲・・・・・」

「まじないみたいなもんや」

「おまじない?」

「せや、まじない」



問い返した有希に、きっぱりとそう答えて、
怪訝そうな表情を浮かべる彼女の耳に顔を寄せて、呟いた。




「来年もちゃんとおってな」




軽口を叩けるような。
プレゼントを催促できるような。
一緒に笑い合えるような。

そんな距離に、場所に、来年もちゃんと、いられますように。




FIN.

―・―・―・―・―・―

ギリギリセーフ(遅すぎ)
なんとか終わりました。許してください(平伏し)

分かる人には分かるでしょうが、
この小説は単に有希嬢に「那覇の日」宣言させたかったのです(死)
だから、締めがイマイチ甘いでしょう?
それは、書きたかった部分をとうに書いてしまっていたからなのですよ(待て)
えー・・・・ごめんなさい(笑)

つーわけで、シゲさん誕生日おめでとー!!