今年の梅雨は、そんなにたくさんの雨も降らなくて、
梅雨入り宣言も、梅雨明け宣言も、聞かなかったような気がする。
気がつくと、太陽がさんさんと照りつけていて、あぁ、夏だな。って思ってたんですが。

どうして、今日はこんなお天気なんでしょう?





  





空は今にも泣き出しそうなくらい黒みがかった灰色で、
ご丁寧にごうごうと風の轟く音までオマケにつけている。
昨日はあんなに晴れてたのに。たった一夜にして、空模様って変わるものなんだろうか。


流れる、あからさまな雨雲を凝視しながら、有希は怪訝な表情を固めた。

雲は水をたっぷり含んだスポンジのようで、少し絞ったら大雨が降りそうだ。
この分だと、明日の快晴を願うのは。何ともムリな願いのように思えた。


せっかくの、一年に一度の七夕なのに。










「空に、何かあるのか?」


「――・・・私には、雲しか見えないけど」





突然の問いかけに、ぶっきらぼうに答える。
答えてから、その相手の確認のために、くるりと振り返った。



「・・・何してるのよ」



振りかえって、(半分くらいはわかっていたけど)相手を確認して、少し投げやりに問う。






「ふと見ると、空を凝視していた。何かあるのかと気になったから聞きに来たのだが・・・」





彼らしいといえば彼らしい不破の答えに、乾いた笑いを浮かべて、ふぅと息をつく。


そんなにきつく見つめていただろうか。
そのことを問おうとして、再度不破に顔を向ける。

―――と、見えたのは、なんとも不思議な表情で。“どうしたんだ”と顔が言ってるようで。


自分の聞きたかった事は忘れてしまった。





「明日・・・七夕でしょ?」



仕方ないから、不破が疑問に思っていることの答え合わせをすることにした。



「でも、この雨じゃ織姫とか彦星とか会えないんだろうなー・・って思ってたの」





一年にたった一度しか合うことが許されないのに。

会えなければ、また一年、寂しい思いをするのだろうか。





沈黙が流れて、風の音が嫌に大きく感じられた。
隣に不破がいることも気にせず、
もう降り出すだろうか。雷でも鳴り出さないだろうか。などと考えていたら、
ずっと下を向いていた不破が、ふと顔を上げた。





「――雨が降っているとしても、それは地球上のごく一部の範囲のみ言える事だ。
つまり、天の川のある宇宙には、何の影響もないぞ」


「・・・・はい?」





あくまで真面目に(いつものことだけど)言った不破に、間抜けな返事を返す。
何が言いたいのか。その理解もままならぬままに、それならば、と補足をつける。




「確かにその通りだけど、その場合、織姫とか彦星とかって宇宙でどうやって生きてることになるわけ・・・?」


「――なるほど」




返ってきた言葉に、また下を向いて、
ああでもないこうでもないと言った感じで、不破がぶつぶつつぶやき始めた。








もしかして、フォローするつもりだったんデスか?






未だ下を向いて考え込んでいる不破を見ながら、なんだか言葉が出てこなかった。






不器用だね。もう少し、言い方ってのがあるでしょ?


ああ、でも。




意外過ぎて、嬉しいかも。






そんなことを思っていたら、突如として笑いがこみ上げてきて、
一人で笑っていたら、当然の如く、また不思議そうに見られてしまった。
それを適当にあしらって、部活へ遅れる。ってことで事を有耶無耶にした。

無理矢理引っ張って部活へ向かう最中も、尚納得いかない表情の不破だったけれど、
グラウンドについた時には、もうすでにサッカーに神経が行ってるみたいだった。




見上げれば、空はまだまだ暗いです。黒いです。


でも、空の向こうに雨なんてないから。ちゃんと、会えるよね?





FIN.


着手今日。書き上げ今日。UP今日。
・・・無謀だった。仕上がってよかった。
でも、微妙に日付ずれてますね。お話の中の日は6日だもの(死)

対なるシゲ有希サイドとは、まったく違う世界だと思ってください。
有希ちゃんはフタマタとかじゃないしね(撲殺)


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