「なんでマネージャーおらんねんっっっ!!!」



照りつける太陽の中、やっとやってきた部活合間の休憩時間。
桜上水中学校のグラウンドで、軽快な関西弁が響いた。









或る男共の欠席に関する論争













「―――・・・いるが?」


叫んだ張本人であるシゲの後方から聞こえた不破の言葉に、
さも不満そうな表情をして、彼ははぁっとため息をついた。



「ちゃうわ。俺が言うてんのは小島ちゃんや。こ・じ・ま・ちゃ・ん」


そんくらい、わかってくれや・・・。と呟いて、
持っていたドリンクをぐいっと飲み干す。


今現在グラウンドにいる女子部員。
1・2・3・4・・・・・・4人。
足りない、足りないのだ。
何度数えても、一番居るべき人物がいないのだ。

女子部部長であり、マネージャーである彼女、小島有希が。



風祭にも負けず劣らずサッカー好きの彼女の彼女が、
今この場にいないと言うのは、何とも信じがたいことである。
でも、実際彼女はいないのだ。
グラウンドのどこからも、彼女の声が聞こえず、気配すら感じられない。


そんなこんなで、シゲのやる気はいつもの0.73倍(当社比)ほどしか出ていなかったのだった。






「っはぁ〜。なんでおらんねんな、買い出しか?
せやったら俺も行ったったのにー」


空になったボトルを持て余しながら言うシゲに、
再度不破からの問題発言が飛び出した。







「小島なら、今日は欠席していたらしいな」








絶望的なお言葉に、シゲ叫び出すまで。3・2・・・・・









「うそやろっ!?」


「本当だが・・・」





コンッ、コロロロロ・・・・・


軽い効果音をつけて、シゲの手からドリンクのボトルが落ちた。
一昔前の反応かとも思われたけれども、もちろん本人は本気である。



「なんでやねんな〜。昨日元気そうやったやんかー。
休む理由なんかないやろ〜」

「さあ・・・どうだろうな」


思いっきり脱力中のシゲの言葉に、無愛想ながらも返事を返すと、
不破は集合の合図のかかるグラウンドへ戻ろうとする。が。




ガシッ!



腕をしっかりつかまれてしまったのだった。



「―――・・・なんだ?」


「なんで知ってんねん」



当然の不破の問いに返された、シゲの質問系の言葉に、
不破の頭上に『?』が浮かぶ。
その様子を、不機嫌そうな表情で見て、シゲが付け加える。




「なんで小島ちゃんが休みやって知っててん」



あぁ、そんなことか。
一瞬そんな顔をして、不破が答える。



「職員室で見たんだが」

「見たぁ?」

「欠席者は黒板に名前が書かれるからな。――知らないのか?」

「――・・・行かんからなぁ・・・」



なんや、そんな理由かい。
呟いて、ホッとしたような表情をして、またシゲはふっと顔を強張らせた。


「理由とかは書いてへんのか?」

「あぁ・・・」

「そーか・・・」


考え込むように2人は押し黙り、呆然と駆け抜けるボールを目で追った。
彼らが気付いているのかどうかは定かではないが、
部活はしっかり再開しているのだ。念の為。

それはともかく。



「風邪かなんかか?夏風邪はタチ悪いって言うで」


マネージャーであり、女子部部長。
小島有希嬢の欠席理由についての論争が始まったのだった。


「それは違うだろう」

「なんでや」


シゲの言葉をうけた不破の返事に、次はシゲが疑問を返す。
――と不破は一言。




「夏風邪は馬鹿がひくというからな」

「・・・・さよけ」


それならば、とシゲは考え込み。




「風邪ちゃうんやったらなんや?腹イタとか、頭イタか?」

「それぐらいなら、来るんじゃないのか?」



「じゃ、なんや。事故とか言うんちゃうやろな!?」

「それなら、もっと大事(おおごと)になってるだろう」



「それやったら、もちっと程度の低いケガでどうや!!」

「――・・・ケガぐらいで休むような奴だとは思わんが」




思い付くだけの欠席理由を、ことごとく不破に却下されながら、
シゲはだんだんムキになりつつあった。
もちろん、それは不破も然り。

余談だが、そんな2人の遠くかなたからしきりに呼びかける水野がいたりしたのだが、
彼らの論争はすでに白熱化しており、そんな呼びかけなど、例え耳に届いていても相手にする気など全くないのだ。

早い話が、無視である(死)


それはそうとして。



「だあああぁぁぁ!!なんやねん、さっきからケチばっかつけよって!
ほんならお前はなんや思うねん、不破!!」


あまりにも自分の意見がボツったシゲは、
ついに怒りをあらわに(やつあたり、とも言うが)し、不破に詰め寄った。
しかし不破は、怯むことなくすらっと、


「睡眠不足か何かじゃないのか?」


と言ってのけた。

それにシゲは勝ち誇ったように言う。


「甘いな!眠いんやったらガッコで寝たらえぇんや!!」

「――・・・お前だけだろうが、それは」



両者は真っ向から対立し、彼らの背景には稲妻が!!(錯覚)
しばらくの間にらみ合ったのち、ふっと視線を下げ、シゲが言った。



「・・・・俺はやっぱり『風邪』に1票や!」

「俺は『睡眠不足』だな」


やはりかみ合わぬ答えに、こんなところで不毛な闘いを続けていてもし方がない。

と、いうことは。



「ほな、答え合わせといこか。
今から小島ちゃん家行って、直接答え聞いたる!」

「・・・名案だな」



こんなところで意見一致した2人はすっくと立ちあがり、


「負けへんで」

「臨むところだ」


と、不敵に笑ってみたり。


かくして、己の意見を引っさげた男共は、他人の迷惑省みず、
くるりとグラウンドに背を向けるのだった。



さて、くどいようだがサッカー部は練習中であり、
彼ら以外はしっかりボールと戯れているのである。
そんな中、意地の張り合いをしていた2人を遠くから見ていた水野は頭を抱え、
風祭はわけもわからず、仲良さげに見える2人を、嬉しそうに見ていたとかいなかったとか(どうでもいい)




ちなみに、この論争の題材である小島有希嬢当人は、
最愛の兄上の試合に行っていたらしい。というのは、また別のお話。





=幕。=


言わなきゃならんコト

フィン嬢にプレゼントです。5000HITありがとう!!
なんか知らんけど、この作品1日で仕上げました。リク貰った翌日に(死)
ふと浮かんできたネタ。書きやすかったなぁ・・・・(遠い目)

ちなみに、リク内容に『ギャグ』って項はありませんでした(死)
んー・・なんでこんなのになったんだろうねv(撲殺)
でもまぁ、笑って許してあげてください。だって、君にはまたシゲ有希あげるらしいから(謎)

どーでもいいけど、このレイアウト、ハマりました(笑)
背景いらんわ、これ。
それにつけても、シゲの関西弁の書きやすいことこの上なし〜・・・(平安風(爆謎))
・・・ハイテンションなんです、今(笑)



もどっとく。