[[[
王冠 ]]]








「おやっさんがね、テスト終わったら、おでん食べにおいでって言ってくれてるんだ」



おごってくれるらしいよ。と付け足し言ったのは風祭。
それはもうテスト最終日だった。

1学期初めの定期考査というのは、さほどツライものでもないけれど、
出来ればお断りしたいのが本音。
それとやっとお別れを言えることに喜びを正直に顔に出している奴は多い・・・と思う。
例えば風祭、そして佐藤、その他大勢。
そんな最中、彼の言い出したその言葉を聞かされたのは、何も私だけではなかったらしい。


「なんや、小島も呼ぶんか?」

「いいのか?そんなに人数呼んで・・・」


後ろからひょっこり顔を出した佐藤と水野が、口々にそう言う。
それに、『小島さんにも勉強教えてもらったから』と風祭が返す。
その後ろには、1人黙って佇んでいる不破がいるけれど、
風祭達の後ろにいるのだから、きっと彼も呼ばれているのだろう。


「えっと・・・、それで、小島さんも行かない?」


佐藤と水野への説明が済んだのか、思い出したように風祭が言った。


行きたい・・・けど・・・・・。
行くとなると放課後になり、それは部活の後になる。
その後に行くと、帰りはかなり遅くなるし。
あまり帰りが遅くなると、心配されるだろうしな・・・。

母親の小言を聞くのはまっぴら。でも、せっかくだし・・・。
そんな2つの思考を行ったり来たりしていると、思わぬところから助け舟が出された。


「帰りが遅くなるのが心配なら、先に(家に)電話しとけばどうだ」

「――あ、なるほど」


あまりに簡潔すぎる結論に、一瞬動きは止まったけれど、
不破から出された提案に素直に同意を示し、『行く』と風祭に告げた。





***





部活終了後。一通りの片付けが済んだ後、
校門のところで風祭達と合流し、例のおでん屋さんへ向かった。
あの後、すぐに家に電話したから、帰りが多少遅くなっても大丈夫。
他愛の無いことを話していると、何時の間にかその河川敷についていた。



「もうちょっと待っててって」


テストが終わったことを告げに行った風祭が、小走りで走り寄ってそう言った。
まだ、仕込みが終わってないとかなんとか。
時間つぶしに、と。風祭や佐藤達はボール片手に場所の開けたところへ走っていった。


ふぅ・・・。
ため息をついて座りこむ。背もたれにしている壁が冷たくて気持ち良い。
テスト。というものは、精神的に結構疲れる。
終わったから、気が抜けたのかもしれない。
だから、風祭達に混じってサッカーをしようという気は起こらなかった。

疲れたなぁ・・・・。
もう一度ため息をついて、膝を抱えた。
少し首が辛かったので左の方向に動かすと、綺麗に咲き乱れる白い花達が目に入った。


「綺麗・・・・」

「何がだ?」


呟いた独り言に返事が返ったことに驚き、がばぁっと勢いよく顔をあげる。
口調でわかってはいたけれど、やはりそこには不破がいた。


「え・・・・や、ほら、そこの花」

「・・・・シロツメクサだな」


瞬時に対処ができなくて、カタコトの日本語風になってしまった台詞に、
律儀にも花の名前を答えてくれる。


そうなんだ・・・と答えると、そこで会話は途絶えてしまった。
特に話す内容も無いし、そもそも二人きりで話したことすらないため、余計に会話が続かない。
別に沈黙が嫌いなわけではないけど、とりあえず、必至に次に切り出す話題を考える。

――でも、意外なことに、先に会話を切り出したのは不破(ヤツ)だった。







「――・・・・大丈夫か?」




「・・・・・・・・へ?」



間抜けな返事の後に、間髪入れずに、何が?と問うと、
ため息をついていたから、と答えた。
聞いといてナンだけど、その答えはほとんど聞いてなかった。
ただ意外で、ひたすら意外で、結構驚いてたから。

確かにため息はついたし、正直疲れてるけど。
・・・気付かれるとは思ってなかった。
ろくに話しても無いのに。よく・・・見てるんだ・・・。


心の中の討論の末、出された結論に、
自分自身驚きながら、そして異様に否定して、相変わらず無表情な不破に切り出した。



「――ねぇ、王冠とか、作ったことある?」


・・・我ながら、唐突だったかもしんない。
別に話題を変えたかったわけじゃないんだけど、口を突いて出たのはその台詞だった。
言い終えた後、多少後悔したその台詞に、(幸いなことに)不破はない、と一言答えた。

その言葉を聞いて、手近にあったシロツメクサを2本ほど取る。


「――王冠は結構時間かかるけど、2本で時計とかも作れるのよ。
ほら、ここをこうやって、ここに通して・・・・」


昔さんざん作った時計(とは言い難いかもしれないけど)を手際よく作り、不破の右手に括り付ける。
それをまじまじと見つめる不破を、内心びくびくしながら見つめる。
すると、数秒それを見つめた後、不破も手近なそれを摘み、自分でも作り始めた。


「・・・これでいいのか?」


何分も経たぬうちに出来あがった時計を、今度は有希の手首に括る。
上手い・・・・・・。
本当に初めて作ったのかと疑いたくなるような出来映えに、クラッシャーの異名に再度納得する。
なら次は、と。調子に乗って王冠作りに突入。


「王冠はね、さっきのと作り方はほとんど変わらないの。
こうやって、ここに通して。それでこうして・・・・。それの繰り返し」


追加で摘んだ数本のシロツメクサ達を束ねながら、熱心に聞き入る不破を見て微かに笑う。
こんなことを熱心に聞く、男子なんていたんだ・・。と、冗談半分で思いながら。

十数本目を束ね終えたとき、要領がつかめたのか、不破がシロツメクサを摘み始める。
数十本摘んだかと思うと、無言でさっきの一連の動作を復元し始めた。
無心で黙々と一本一本束ねるその光景は・・・・。
言っちゃなんだけど、それなりに面白い。

また軽く膝を抱えて、気付かれないように小さく笑う。
意外(ある意味予想通りだけど)なところを見たようで、なんだか楽しい。
手順を間違えたのか、時々手元が止まると、困ったような顔をして考え込む。
糸口を見つけると、またいつもの無表情に・・・少し生き生きしているような表情になる。
その一連の動作を、何も言わずにずっと見ていた。





「・・・・できた」


十数分後、地面に散らばる無残な犠牲者(?)とは裏腹に、
見事な出来映えとなった王冠を満足そうに一望して、不破は顔を上げた。

これでいいのか。と聞こうと思ったのか、
一度口を開いたにもかかわらず、何も言わずに噤む。
相手から、返事が返らぬことがわかったから。


後ろから、(用意が出来たらしく)風祭が呼ぶ声が聞こえる。
すぐに行く、と告げて、目の前に小さな寝息を立てる有希に、自分の上着を無造作にかけた。
ふと、左手にかけている王冠の行き先に悩んで一瞬迷ったが、
すぐに思い立ち、そっと有希の頭へと乗せる。

1人で残していくことに、一瞬迷ったりもしたけれど、
10分だけ寝かせておこうと考えて、今はそっとしておくことにした。
そして、くるりときびすを返して、明かりの灯るところへ向かう。









黒の服を纏い、白の冠を乗せた姫君は、今、安息の夢の中へ







FIN.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不破有希です(爆死)
テストが終わった喜びを、こんなカタチで表してみました(すな)
てゆーか、またも新ジャンルですよ。何処行った、メイン!!(死)
最近のブームはホイッスル!ですわ〜、・・・・移り変わり激しいぞ、自分(笑えない)
基本的に、有希ちゃんいればOKです。相手はほぼ誰でもOKです(死すべし)
ただ、単独首位は不破君ですね〜、何故だろう・・・・(知るかよ)

ところで、作中の言い訳をば・・・・;;;
実は私、王冠なんぞ作れません(爆死)うぅっ・・・辛いわ不器用(笑)
それと、1つ疑問。シロツメクサって・・・あるよね?(大問題)
間違えてたら嫌だなぁ・・・ウチの国語辞典には載ってませんでした(載ってるかっての)
あと、あったと仮定して、時期あってるかな・・・・1学期中間・・・・(滝汗;;

・・・・いーよね、別にvv初作品なんてこんなもんよねvv(撲殺)
ところで、不破有希好きな方。友達になってください(ゼロフィリん時も言ったな(死))


モドル