のおつとめ

 











彼女の朝は早い。
家の中で誰よりも早く起き出して、家の者を起こさないように作業を始める。
まず初めは身支度。それが済めば次は洗濯。
あらかた朝食の用意を済ませた頃に一家の長が目を覚まし、
それを確認してから、天気の良い日は庭木に水をやる。


ちなみに、意外と彼女達の朝も早い。
早く支度を済ませた方が、もう一人の家へ出向く。
ほとんどは彼が、時々彼女が。
遠回りになるのもおかまいなしに、どちらかの家でどちらかを拾って学校へ向かう。






今日は、とても天気が良かった。











「かげろーう!」



道から声がした。
毎朝毎朝、ほぼ同じ時間。
陽の光を浴びながら水をやる自分を見つけると、彼女はいつも声をかける。




「おはよう。今日も早いのね」




水をやる手を止めて、道路の方に顔を向ける。
いつもと同じように、手を振る笑顔の彼女が見えた。
そして彼女の隣にはまた、いつもと同じ顔。




「水鏡くんも、おはよう」

「ああ」

「毎朝早くて感心ね」

「下手に寝坊すると、みーちゃん後でうるさいしねー」

「一緒に行こうと言っておきながら、遅れる方が悪いんだろうが」

「1回くらい大目に見てくれたっていいじゃん。
みーちゃんの意地悪」

「ま・・・まあ、とにかく行動が早いのはいいことよ。
烈火なんて、まだ寝てるもの」

「そろそろ起こした方が良くない?
あいつ、今日遅刻したら1週間連続だよ?」

「そうね・・・・・これが済んだら起こそうかしら」




そう言った陽炎に、風子が便乗するように大きく頷く。
そう簡単には起きないから、おじさんに頼んだ方がいいかもねー、
と楽しそうに付け加えながら。




「そいえばさ、お正月に陽炎、お節とか作る?」

「・・? ええ、そのつもりだけど・・・・・」

「じゃ、今年はもう必要ないね。
今までは、うちで作ったやつをお裾分けしてたんだ」

「そうだったの・・・・」

「そ。毎年毎年すごかったよー、だて巻とかお煮しめとか取り合いだもん」

「ふふ・・・確かに、お互い譲らなそうね」

「分けてもらってる分際で、譲らない烈火が悪いの!
・・というわけだから、今年はそっちが風子ちゃんにお節ご馳走してよ?」

「・・・ええ、美味しいのを作って振舞わせてもらうわ」

「で、今まで烈火達に分けてた分はみーちゃんにお裾分けしたげるから。
有り難く受け取るように」

「別にいらな」

「い・る・よ・ね?」

「・・・・・・・・・・好きにしろ」




有無を言わさぬ風子の迫力に、水鏡も観念する。
実に扱い方を心得ている・・・と言うのだろうか、お互いに。
遠慮も含んだ水鏡の言葉には、こちらが強く出ればいいのを風子は知っている。
そして、強気の風子に敵うものはいないと水鏡も知っている。




「そろそろ行くぞ」

「え、あ、うん。じゃね、陽炎」

「ええ、行ってらっしゃい」

「お節、楽しみにしてるからねー」





ひらひらと手を振りながら、楽しそうに風子が言う。
それに対して、まかせておけと言わんばかりの笑顔を陽炎も返して、
二人の背中を見送った。



腕にした時計の示す時間は、遅刻ぎりぎり。
手にしていたホースを地面において、手をふきながら家へと上がる。
そのままの勢いで階段を昇り、息子のいる部屋へと出向く。
目覚ましはとうに消されていた、彼の『あと5分』発言は、何分前に言われたのだろう。






「烈火、そろそろ起きなさい!遅刻するわよ」




声を張り上げてそう言った。布団の中からうめき声が聞こえた。








さあ、今日も1日、頑張りましょう!







FIN.

7777HITリクでした。
いつの話やねんってツッコミまくりです。でも書いたので許してください(死)

水風+陽で日常テイスト。
陽炎さんは毎日庭木に水をやってると私は決め付けている。
花菱家に庭木があったかどうかは覚えてないけど!(待てや)

で、おまけに水鏡家と霧沢家と花菱家の位置関係がまるでわからないので、
水鏡と風子の二人が花菱家の前を通学路として使うかすらわからない。
・・・・・・コミックスで、家の位置関係とか発表して欲しかったなあ・・・。

というわけでした。
日常テイスト、出来てます?








モドル