これからも、隣に笑顔がありますように



永遠の約束を














[[[ 未来予約済 ]]]


















「何してんのさ」




部屋の中央に置かれたソファに座りながら、
自分の後ろで何かをしている水鏡に向かって、風子は言った。




「いいから黙ってろ」




不満をたっぷり含んでいった言葉にも怯むことなく、そう簡潔に水鏡も答える。
その答えになっていない答えにため息をついて、
風子は手探りで探し当てたクッションを抱え込んだ。





コトの起こりは数分前。
いつものように訪れた、この家。水鏡の家。
別段用事がなくてもおしかけるこの家は、妙に居心地が良くていつでも長居をしてしまう。
今日もそうやっていつものように、少し話をして、その話も尽きた頃、
適当に本を読んだり、ぼーっとしたり、と暇を持て余していた。
そう、いつものように。




ただ、いつもと少し違ったのは、水鏡の方の行動で。








いつもなら、テーブル脇の椅子に座って、勉強やら読書やらしている彼が、
今日は何故か突然風子の後ろに回りこんで、何やら突然作業を始めたのだ。
何をしているのかと覗き込もうとしても、振り向くな、の一言で制止をかけられる。
そんな水鏡にぶつぶつ文句を言っていると、次の瞬間目の前は真っ暗になって・・・。


それが目隠しだということに気付くのに、きっと軽く30秒はかかったに違いない。








「ねー、みーちゃんってば。何してんの?」


「・・・すぐ終わる」







さっきからそればっかじゃん。


なまじ目隠しをされていて、水鏡の手元が見えないのがもどかしい。
時折聞こえてくる金属の擦れる音や、
何かごそごそやっているような気配が、余計に不信感を募らせた。



目隠しをほどいて、振りかえってしまえば早いのだけれど。
そんなことをしてご機嫌を損ねるのはゴメンだ。





そんなわけで、今の風子にはこうして大人しくしているほかに手立てはなくて。














「・・・・・・まだ?」













待ちきれないような、我慢の限界を越えたような辛そうな声で、風子が呟いた。



それから数十秒後、よし、と呟いて、水鏡の気配が風子に近付いた。












「もうちょっとの我慢だ。―――大人しくしてろ」


「ん。」











水鏡の言葉に、簡単な一文字を返して、
ただでさえ目隠しで見えない目を、さらに閉じる。





首筋に冷たい、金属の触れる感触がして、風子が一瞬、ビクリを体を震わせた。














長い間冷たい感触に襲われた首筋がその冷たさに慣れ、やっとそのモノの正体がわかった。
そして水鏡が何をしているのか、も。









彼はかけているのだ。

彼女の首に、細いチェーン・・・・・・いや、ネックレスを。

















カチ。と小さな音がして、水鏡の気配が引いた。
程なくして風子の視界を奪っていた目隠しが外されて、久々の景色に風子が1度目を閉じた。






そしてすぐさま首にかけられたものに目をやって、そして見つけた。


鎖にかかる、小さなリング。





















「指・・・・輪・・・・・・・・?」





首にかけられた鎖ごとそれを持ち上げて、出来る限り目の高さまで上げる。
シンプルで、大人しい。綺麗な青の光る小さな指輪が、風子の視界一杯に広がった。







「みーちゃん・・・・・これ・・・・・・・・」






ゆっくりと水鏡を振りかえり、戸惑い気味にそう問う。
水鏡はと言うと、おそらくその指輪の納まっていたのであろう箱を閉じて、あらぬ方向へ視線を泳がせていた。
そしてやがて視線を床に定めて、ゆっくりと口を開いた。







「・・・・・・・・・今はまだ、はめなくていい」







不自然な体勢だった体を、完全に水鏡の方にむけて、
その言葉を聞き漏らすまいと風子がまっすぐと水鏡と見据える。
その視線に気付きながら、そして惑いながら、水鏡はゆっくりと続けた。








「はめたくなければ――――捨てればいい」







少し寂しげに目を伏せてそう言って、水鏡は口を閉じた。



肝心の言葉は出てこない。
多分彼は言わない。

そんな気がして、風子は促すように、尋ねた。










「じゃあ・・・・・さ。もし・・・・はめたら?」












それもただのアクセサリーじゃない。
ちゃんとした意味を為す、約束のしるしとして、はめたなら。














「そのときは―――」







そのときは。
そこで一瞬躊躇ったように口を閉じて、そしてもう1度、次はしっかりと風子を見て、
彼はもう1度、口を開いた。

















そのときは。


















「ここが、おまえの家だ」



















微かに笑った水鏡のその言葉に、一瞬呆気に取られて。
次の瞬間その言葉の意味を理解して、また呆気に取られて。
しばらくしてから満面の笑みを浮かべて、頷いた。
何度も、幸せな笑みを浮かべて、頷いた。


首にかかる鎖を、それにかかる指輪を、手の中に大事そうに納めながら。





























いつも隣で笑っていて欲しいから


永遠の約束の、一歩手前を今しよう








指輪はまだ、はめない



でも



それはきっと、遠い未来じゃない







FIN.


話の内容についてはもう語りません(笑)
ただ、フォントが真っ黒な理由をば。
えーっとね。そっちのが映えるかなって思ったから。話が。そんだけ(独り言)

とにかく。
やっと(笑)HPを開設したみずきへの愛込めすぎて空回った作品(おい)
これからもますますの発展をお祈りすると共に、
私を萌えさせる作品を書き続けるように(待て)

なんか今、唐突にこの話の続編が書きたくなってきたよ(笑)


モドル