白くて柔らかい、
手の中にすっぽりおさまる小さな山にかぶりつくところを想像して、
こぼれそうになる笑顔を必死におさえる。
そして、抱え込まれた紙袋を落とさないように、
さらにしっかと抱いて、走る速度をさらにあげた。
その小さな幸せが、冷めてしまう前に。
/// これもしあわせ ///
「肉まんとー。カレーまんとー。ピザまんとー。あんまんとー
・・・・が3つずつあるんだけどさー。どれから食べる?」
嬉々として紙袋の中身を広げる風子の無邪気な笑顔と、
紙袋に入っていた4種各3個総計12個の中華まんを見て、
さすがの水鏡もしばらく思考がストップした。
机の上に所狭しと広げられたそれらは、未だ温かそうな湯気を立たせている。
それほどまでに足早に・・・というか、走ってまで来なくてもいいだろう・・・?
なども思ったりしたが、とりあえず今は、彼女の努力に文句を述べる事はやめておくことにした。
「どーでもいいが・・・。時期がまだ早くないか?」
会話を続ける為のどうでもいい話(半分くらいは本気であったが)を風子にふってみる。
――と、風子は即座に
「いーじゃん、別に。食べたかったんだ」
と、またまた笑顔でのたもうた。
それで、この量か・・・。
天高く馬肥ゆる秋とはよく言ったものだ。と、先人の言葉に嫌に納得する。
つまり彼女は、今現在食欲の秋の真っ只中にいるわけで。
それで、この量なわけなのだ。
「いくらなんでも食べきれないだろうが」
3つか4つが限度だろう?
呆れつつそう呟き、手近なものを手に取った水鏡に、
「さーあ。わかんないよー?」
と、挑発的に笑って、おどけつつ、風子も1つ手に取る。
こぽこぽこぽとお茶を注いで、一息ついて。
――さぁ、準備は万全。
それでは。
いただきます。
FIN.