ある日君とケンカした。
君のいない、久々の帰り道。
[[[ 君がいない ]]]
気がつけば放課後。
いつもと同じ、退屈な授業がやっと終わりを告げた。
いつもなら、そんな終業を知らせるチャイムが待ち遠しくて、
HRなんか面倒くさいくらい、早くこの教室を後にしたかった。
でも、なんでだろうね。今日はもっともっと、退屈な授業でも聞いてたかったよ。
簡単なHRが終わって、教室を生徒達が去っていく。
1人、2人、ついに私は最後の1人。
のろのろと教室を出て、廊下を進んで、くつを履き替えて。
校舎を出てすぐに見える、校門に、人影はない。
誰も、いない。君が、いない。
きっかけが何だったのかなんて、正確には思い出せない。
わかってないかもしれない。でも、私達はケンカしてる。
そのことが、ホントは嘘とか夢とかじゃないかと思いたくて、現実逃避みたいに違う事に没頭しても。
こうやって、1日が終わって、君の顔を見ないだけで、現実を付きつけられる。
いつもいる校門に、君はいない。
1人きりで歩く道はやけに寂しくて、前を向くのも嫌になって、下を向いて歩いた。
話したいことはあるのに、聞かせたい人が居ない。
ノドの奥で声が詰まって、息苦しかった。
学校では、教室では、烈火や土門や柳といっぱい話をして、あんなに笑って。
それは嘘ではない楽しさだったのに、ただ1人の帰り道だけで、こんなにも苦しくなる。
「そーいえば。こんな感じの歌があったっけ・・・」
搾り出すように声を出して、無理に大きく上げて。
誰に聞かせるでもなく、そう言って、上を向いた。
それはいつだったか教わった歌。
あのときは幼くて、歌の意味なんて深く考えないで。
どんな哀しい歌も、みんな声を合わせて元気に唄っていた。
でも今は違う。声を合わせる友達もいない、1人で。
そして、言葉の意味も。わかってしまう。
小さく息を吸って、曖昧な記憶を辿り、歌を思い出す。
「ともだちとーともだちとーけんかーしたー。そーのーつぎーのひー」
誰もいない道に、彼女の歌声が響いた。
「なーぜーかとってーもさみしーくてー。したばかりみていたー」
それはまさに、今の彼女。
「つぎのひもーつぎのひもーともだーちはー。しらーんーふりー。
ぼーくーはとってーもかなしーくてー。なみだーがこーぼーれーたー」
歩きながら唄っているせいで、少し切れた息を整えるため。
本来の歌のリズムとは違う、長い休みを取って、また唄い出す。
「けーんーかなんかしなけりゃー。いまーごろきみとー。
みちーくさーしなーがらー。おしゃべーりーしているーのにー」
まだ終わりは迎えない歌が、不意に止んだ。
上を向いていた風子が下を向いて、まぶたを閉じて。涙が一筋流れた。
本当に・・・・そうだね。
今だから、今だからわかる。痛いくらいのその気持ち。
君がいない。あんなに一緒にいた君がいない。
いつもなら今頃、帰り道。
なんでもないことを私が一方的に話して、そして君は聞いているだけ。
時々相槌を返すくらいしかしてくれないけど、それだけで十分だった。
みちくさなんてほどでもないけど、空の色が変わるくらいゆっくり歩いて家に帰って。
また明日、って言って。笑顔で手を振ってたんだろうな。
でもいない。今はいない。今日はいない。君がいない。
ケンカなんかしなければ、当たり前みたいにいた君が、いないんだ。
一筋流れた涙を、手の甲で軽く擦って拭う。
君がいないだけで、こんなにも胸が痛いよ。
続きは・・・・なんだっけ。
途切れた歌の続きを思い出すように、また記憶を辿る。
思い出して、また目を閉じて。開いて。少しだけ笑顔を作って、また唄った。
「ろくがつのーろくがつのーあめあーがりー。まちーかーどでー。
あのこーがーかたをーたたーいてー。ごめんねとわーらあったー」
大丈夫、大丈夫。
歌の中でこの子達は、ちゃんと仲直りしてる。
私が『あのこ』になって。ぽんっと肩を叩いて。
ごめんね、って笑えば、きっと多分、仲直りできるよね。
「それーからーぼくーらはー、どんーなとーきでもー。
ここーろをーつなーいだー。ともだちにー・・・・なった」
1つ何かを乗り越えて、また一緒に笑い合えたら。
前よりもっと深い絆が出来て、またきっと一緒にいられるようになるから。
そう、信じたいから。
だから私が『あのこ』になって、ぽんって肩を叩いて。
ごめんね、って言って笑いかけたら。
小さくでいいから、笑い返してくれるよね?
・
・
・
ごめんね。
大好きだよ。
FIN.
stmimiは童謡で泣けます(待て)
今回の題材ですが、実在する歌で童謡です。
『友達になった日』ってやつです。知ってる人もいるのではないかと。
もとから私は童謡とかそういうのが好きで、友達にそういう歌が載ってる本を借りたのですよ。
(結局まだ返してねえよ。ごめん、Jr.・・・・(死))
それで、パラパラってページを捲って、目にとまった歌。これ。
歌詞を目で追って、それだけで目が潤みました。
涙腺が弱いのでしょうか?でもね、「ごめんね」って『あのこ』が笑いかけてる場面想像したら泣けるよ?
友情ものに弱いです。恋愛ものはニガテです(CP小説書くやつのセリフじゃない)
まあそんなわけで。この話も涙流しながら書いてましたからねー(笑)
いや、でも実際。自分のかいたSSに心打たれて泣く事あります(待て)
えーとね・・・キルメルの『不器用』とか。良い例だね(笑)
全然読み返さなかったから・・改めて読んで見て、心打たれた。
アレ書いた当時の私に乾杯!って感じ(笑)
・・・話がそれましたが。とりあえずこれは我が愛しの後輩白音ちゃんへ。
久々に書いたキリ番SSでしたとさ(死)5555HITだって・・・10000も前だよ・・・(撲殺)
とゆーわけで。ありがとさんでした。
てか、全然有り難さが篭もってなくてごめんよ(苦笑)
題材ケンカで明るくするのもどうかと思ってさ・・・(言い訳)
モドル