[[[ 
彼方から ]]]










屋敷には、久々に人の気配が漂っていた。


開け放たれてた襖や障子。
時折聞こえる話し声。
そして、終始鳴り止まぬ、ハタキを振る音と、箒を動かす音。

そう、彼ら―陽炎、水鏡、風子の3人は、この火影の隠れ屋敷へ、
大掃除をしにやってきているのだ。




滅多に掃除を行わない・・・というか、訪れもしないその屋敷は、
至るところにホコリがたまり、また、段々と朽ちていっている。
これ以上放って置くと、大変なことになるだろうという危機感を感じたらしい。
影界玉がもう手元にないので、移動には手間がかかるが、この際仕方ない。
こうして出かけた陽炎に、偶然彼ら2人が出会うのは、
陽炎が家を出て、ほんの数分後のこと。

そして、遠慮する陽炎の言葉を聞きもせず、
半ば強引に風子が手伝いにいくと宣言するのも、すぐ後のことだった。






そして、掃除が始められてから早2時間。
太陽はすっかり真上に昇り、掃除も着々と進められていた。
全ての部屋を掃き終わり、ホコリもすべて落とし終え。
目に付くところもつかないところもしっかりと拭いた。
もう大体のことはやり終えたかと思え、3人が揃って縁側で風に当たっていたとき、
思い出したかのように陽炎が、あ、と呟いて、おもむろに立ち上がった。





「何、陽炎どしたの?」


「ええ・・・・押し入れのね、整理もしないといけなかったのよ。
すっかり忘れてたわ」


「押し入れー?そんなの後でいいじゃん。先にお昼しない?」


「・・・虫干しだけでも、先にやっておきたいの。ごめんなさいね」


「―――しょーがないなあ」





すまなそうに苦笑いした陽炎に、風子がそんなことを言いながら、すっくと立ち上がった。
そんな風子を、一瞬きょとんとして見た陽炎に、風子がにっと笑って、言う。





「1人でやるより、2人の方が断然早いじゃん。
それに。お昼はみーちゃんが作ってくれるって言ってるし!」


「なっ・・・!!ちょっと待て。いつ僕がそんなことを・・・・」


「私らが虫干しやってる間に、みーちゃんがお昼作る!
そしたら、終わる頃には食べれるでしょ? うーん、風子ちゃんかしこい!」


「それは・・・確かに名案だと思うけど・・・・。
でも、当の水鏡くんは・・・・・・」


「だーいじょうぶだって。みーちゃん、料理上手いし」


「そういうことを言ってるわけじゃ・・・」


「じゃ、各自行動開始ー!」





そう言って、陽炎の背を押す風子の後ろでは、
何かを諦めたような水鏡が、ため息混じりに行動に移っていたそうな。




そんなこんなで、虫干しを始めた陽炎と風子は、
まず押入れに入っているものを、一つ一つ出し始めた。
といっても、そう数が多いわけでもないので、それは別段大変というわけでもなかったのだが。










「―――これって全部、400年前からあるんだよね」





当時の人が使っていた服だろうか。
それが入った箱を出しながら、ぽつり、風子が言葉を洩らした。





「そうよ。もしかしたら、もっと前からあるものかもしれない」


「でも、まあ。400年前には、確実にあったんだよね」


「・・・・・・?えぇ、そうだけど・・・・・・?」


「じゃ、もしかしたら、小金井達が使ったかもしんないよね」





言いながら、じっとその服を見つめて。

風子がふと、目を閉じた。





「服とか・・・・・あとなんだろ、鍬とか?
何も持たずに行っちゃったからさ、やっぱ、どっからか調達しなきゃいけないじゃん?
ってことは、この家にあるもの。使ったりしたのかなーって」





今ここにある、服も、道具も、全て全て。
過去へと流れた彼らが、1度でも、触れたことがあるかもしれない。


もはや400年前の人となった彼らと、現代を生きる彼女らを繋ぐ、
不確かな、それでも、尊い絆。





「・・・・・・・・この場所を、紅麗が知っていたかどうかもわからないし、
知っていたとしても、本当にここを家として使ったかどうかはわからないわ」





手と止めてそう言って。1度間を置いて。
そして。でも、と言って。にこりと笑って。陽炎は、続けた。







「そう考えると。紅麗も、薫くんも、少しは・・・・・・近くに感じられるわね」












別の時を生きる、2度とは会えない人間を。
こうして、物を・・・何かを間に置く事で、こんなにも、近くに感じられる。












「―――さ、早く終わらせましょうか」


「ん、そだね。みーちゃんの手伝いもしないと、後で不機嫌になるの目に見えてるし」


「そこまでわかってて、それでも水鏡くんにやらせるんだから。
貴女も困ったものね」


「別に無理矢理やらせてるわけじゃないじゃん。嫌なら嫌って言えばいーの。
言わないみーちゃんが悪い!」





はっきりとそう言いきった風子に、陽炎が呆れながらも小さく笑った。
それを見て、風子も小さく舌を出して、いたずらっ子のように笑った。


戯れる時間はそれまでにして、2人が黙々と作業を続ける。
いくつかの箱を全て出し終えて、次はその箱の中身を出す。
一つ一つを日のあたり場所に並べ終えて、初めて虫干しは終了するのだ。

いくつかの箱から、中身を全て出し終えて。
さあ、いざ最後の箱だとその蓋を開けたとき。


陽炎が、あら、とおかしな声を上げて、一瞬、言葉を詰めた。





「・・・・陽炎?どしたの?」


「・・・・・・・・見覚えのない、ものがあったの」


「忘れてるだけじゃなくて?」


「違うわ・・・・・虫干しするのははじめてじゃないから、
大抵の中身は覚えているの。
それでも・・・これを見るのは初めて」


「それってどういう・・・・・・」





どういう意味?
そう、問おうと思い、陽炎が蓋を持ったまま覗き込んでいる箱を、風子もまた覗き込む。
中にあったのは、硯や筆。そして・・・・・・1本の、巻物。


そして、巻物を括る紐の傍らにある、小さなサイン。
そして、その名前は―――――。









「っっ・・・・!!! みーちゃん呼んでくる!!!!」






































烈火兄ちゃん、柳ちゃん、風子姉ちゃん、水鏡、土門兄ちゃん、陽炎。

・・・・そこにいるとしたらそんなもんかなあ?

皆、元気してる?

オレは元気だよ!!

そっちにあってこっちにないものっていっぱいあるから、やっぱり大変だけど。

でも、紅麗が元はこっちの人間だから、いろいろ教えてもらって何とかやってけてる。

だから、烈火兄ちゃん達も心配することないよ。特に柳ちゃん。

オレ、楽しくやってるんだから、これ読んで泣いたりしないでよ。

兄ちゃん達に会えないのは、やっぱりちょっと寂しいけど。

でもオレ、ちゃんと元気に頑張ってるぞっ。

だから、兄ちゃん達も元気でね!































400年の時を越えて、届いた1つの手紙。
ほんの少し前まで、隣で、すぐ近くで笑っていた人間からの、
最初で最後の、大切な手紙。

別の時で生きる、もう2度とは会えない君が、確かに存在したと言う事。
それを、こうして物が・・・手紙が教えてくれた。



悲しむ事など何もない。何も、何も。






FIN.


と、ゆーわけで。
みずき嬢、10000HIT越えおめでとー!!(ぱちぱち)
お祝い小説の割には、微妙にCPないし前振り長いしヤマないしオチが甘いけど(死)
でも、お祝いなんです。信じてちょうだい(笑)
そこここに不可解な点があったりするのも見逃してちょーだいvv
(その時代、硯や何やらがあるのかーとか。火影屋敷にゃ押し入れがあるのかーとか。
つか、その屋敷って陽炎さん住んでねーのかーとか。←大問題
400年前の手紙が、そんな完全な状態で残ってるのかーとか)(死)

ま、とりあえず。おめでとー、みずき!!
これからのますますのご発展及び、もうそろそろホムペにイラが載らないかしらという期待を込めて。
これを貴女にお贈りしますv(てか後者ってどうよ)頑張れみずき!
ホムペに載せんでもいいから、手紙で送ってよー(待て)

(ところで水鏡・・・・・出番少なっ(死))



モドル