好きです。好きでした。
―――似ているようで、全然違う。



好きです。とても。今は貴方が。


でも。好きでした。昔は彼が。









過去形











キーンコーン・・・



予鈴がなって、昼休憩の終わりを告げる。
暖かに過ぎていた午後の一時が終了し、また慌しげな空気に戻る。


どこまでも広がる蒼い空の下。最近は、通る風も温かみを帯びていた。
午後からの授業など存在しなければ、
そのまま寝入りたいほどの、麗らかな時。

春はもう、そこまで来ていた。





「チャイム鳴っちゃったね」

「教室戻るか」


“授業をサボる”などという甲斐性のない柳が、
テキパキと用意を済ませ、すくと立ちあがる。
それにつられるように烈火も立ちあがり、
2人、肩を並べて屋上から下階に通ずる扉へ向かう。



「じゃーな」

「寝るんじゃないよ、烈火!」



そう言う風子に、うるせえよ、とまた悪態を返して、たんたんと階段を下る。


2人の影が見えなくなった頃、
振っていたを手を下ろして、風子は一つ、息を吐く。

少し下向き加減に頭を下げ、また上げて、扉を見つめる。
少しだけ、寂しげに。





「おまえは戻らないのか?」





突然の言葉に、風子は必要以上に驚いて見せる。


隣にずっといた、水鏡の声。

別に、隣にいたことを忘れていたわけではないが、
不意を打ってかけられた言葉には、やはり動揺する。
なかなか浮かんでくれない返答のかわりに、
曖昧な言葉を返して、また黙り込む。







ふと浮かんだ、何と銘打っていいのかわからない、気持ち。



水鏡に知られて困るようなことじゃない―――でも知られたくなかった。
胸の中で浮かんでは消える。モヤモヤした何か。
・・・・悟られる前に、その場を去りたかった。



「あ・・・たしも、そろそろ戻ろかな」


無理に明るく振舞って、無造作にカバンに手を伸ばす。
―――が、そのままカバンを掴み、その場を去ることは叶わなかった。

カバンを掴むより先に、がしりと腕を掴まれる。水鏡の手に。
そう力を込めているわけでもないだろうが、振りほどくことは出来ない。


掴まれて、動けない。
それと同じくして、身体も強張る。
思うように、動かない。









「おまえ・・・は・・・・・」




掴まれていた腕に、掴んでいた水鏡の手に釘付けにされていた視線が、
その言葉に反応し、反射的に顔へと移される。



髪で目は見えない。
ずっと下を向いて、表情が見えない。

――でも、寂しそうで、哀しそうで。・・・痛い。


そんな表情をしながらも、彼はまだ続ける。




「やはり烈火が・・・・・」










 ――――――烈火が好きなのか?










そう呟かれるはずだった言葉は、途中中断される。







聞きたくない。


そう訴えるかのように、風子が首を横に振る。
完全に下を向いて。何度も何度も。
声にならない、悲痛な叫びを上げて。








「―――・・・悪かった」



いつものように静かに、でも、それ以上に低くそう呟いて、
掴んでいた腕をふと離す。

風子が、開放された腕を自分の元へ手繰り寄せ、
掴まれた個所に、そっと手を添える。




彼――水鏡が言わなかったこと。その続きがわかる。
でも、何を言えばいいかわからない。

まとまらない。混乱している。何もわからない。




そんな風子の隣で、水鏡が立ちあがり、階段へ向かおうとする。




行っちゃうよ?
言わなくていいの?何も。

――今じゃなくてもいいよね、きっと。でも、それでも・・・






「あたしは・・・みーちゃんが好きだよ?」




ドアノブにかけた手が止まり、鈍い動作で水鏡が振りかえる。




「しかし・・・」


「烈火は・・・好きだった」



好き・・・だったんだよ、多分。
曖昧な肯定を付け加えて、また黙り込む。


ずっと一緒だった。どんなときも、ずーっとずーっと。
近くにいることが普通で、自然で・・・。
なくなるなんて、思ってなかった。
だから、なくして初めて好きだと感じた。

勘違いかもしれない。
今はもうわからない。
そう、だって、今は―――。




次に言う言葉が思いつかないのか。
だから、とか、それで、とかいう接続詞ばかり呟く風子。
それを見て、少し嬉しく感じている自分を抑えつつ、
ゆっくりと歩み寄って、手を差し出す。



「―――続きは・・・言わなくていい」

「・・・・」




不安げな表情を見せる風子の手を無理に掴んで立たせ、
カバンを投げつけて、言う。



「――教室戻るぞ」

「―――・・・うん」










烈火が好きでした。
勘違いかもしれない。今はもうわかんない。
だって、今は違うから。
好きでした。きっと。そう、多分。

でも、今は違う。多分、じゃない。絶対。
好きだよ。ずっと。







FIN.


〜言わなきゃならんコト〜

初来店で100HIT取り、続いて333HITゲットしたみずきからのキリリク。
てゆーか、まず100HITのリクから書けよ(本当にな)

リク内容。『その他×風子。みーふー前提』ってつまりどーゆーコト!?(爆死)
もう、はっきり言ってリク内容背きまくりですわ、あっはっはー☆・・・・・・ごめん(笑)
だってね、ただ単純に『その他×風子』なら、簡単に(とはいかんだろうが)書けたかもしんないけど・・。
みーふーを前提にするのって・・・・どーゆーのがお望みだったんだ?(今ごろ聞くな)
しかも相手を烈火にしちまったい!小金井にしとけばよかったあーーーー!!(爆笑)

そんでもって、暗いのよね(死)
何故でせう?・・・・精神的に滅入ってたのか?いや、んなはずないね(おい)
あ、わかった。BGMが暗かったんだ(爆死)
相手をかなり切なくさせてしまいました(滝汗;;;
私も、自分自身「なんでこんな暗くなっちゃってんのさ君達!!」とか思ってたからねぇ・・・・(死)
もーちょい、軽いノリで書けばよかった・・・・(後悔)

とりあえず、333HITありがとう!!の念を込めてみずきへ贈ります。
まだまだ一杯溜まってるぜ、許せ(命令形(死))
今後ともご贔屓に〜♪・・・・なるべく簡単なリクしてくれたらすごく嬉しいな☆(死すべし)


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