とある晴れた朝・・・よりも少し遅い午前のこと。
ある一人の人間・・・と呼んでもいいのか悪いのかわからない『それ』の行動に、
ついに我慢の限界を超えた被害者達が、対策本部なるものを結成していた。

そのバカバカしい出来事が、あんまり関係無いような人間も巻き込んで展開していくなど、
電線に仲間と共に止まるスズメは、全く予想していなかった(当たり前)






 

自業自得










『虚空対策本部』



花菱家の一室にどどんと貼られたその題字を凝視して、
水鏡は数秒動きを止めた。

用件を尋ねる間もなく電話で呼び出され、仕方無しに来てみれば、
通された部屋の扉には、わけのわからない・・・・ある意味そのまんまの題字が
これでもかというくらいに大きく貼り出されている。


内容がバカバカしいことであることは簡単に伺える。
巻き込まれても、被害を被るだけのような気もする。

ならば話は簡単。逃げるが勝ち。



そこまで考えて、水鏡はくるりときびすを返し、
今しがたくぐったばかりの玄関へ向かった。

――――が、時既に遅し。



ばたんっ!という効果音と共に扉が開く。
そして中から出てきた風子により、水鏡は強制的な参加を強いられたのだった。




***




「―――というわけなの。いい?」

「・・・・せめて説明しろ」


扉の向こうに居た、烈火や小金井や土門・・・。
早い話が水鏡以外の全員との間で、話し合いはもう進んでいたらしい。
新たに水鏡も加わり、話を再開しようとした風子に、
ごもっともなつっこみが水鏡より下った。


「面倒だからまとめて言うと、
いい加減虚空がムカつくから、皆でこらしめようって言ってたの」

「本っ当に必要なトコだけまとめたな・・・・」


一部分を強調した、簡単に嫌味と取れる水鏡の言葉はまず無視し、
『こらしめる』方法を、風子らが提案し始める。

特に熱心にその話し合いに勤めるのが、
主な被害者の風子、陽炎、そして柳。
その中でも風子や陽炎は、特に被害が多い。
・・・となれば、日頃の恨み辛みは積もり積もってかなりのものだと考えられる。
そのためか、その場に漂うオーラは、
人一人くらいなら簡単に呪い殺せそうな殺気を帯びていた。

烈火達に至っては、その被害の現場を毎度毎度目の当たりにしているし、
いい加減鬱陶しい。・・・という気持ちもあるのか、
前者ほどにはいかずとも、それなりに熱心に案を提示していた。


・・・が、内容は少し(かなり?)常識離れしていたりした。



「いっそ、
コンクリ抱かせて海に沈めるとか」

「お寺で鐘突かせて、煩悩振り払わせるとか」

「どっかの飛行機にくくりつけて異国に飛ばすとか」

怪しげな研究所売り飛ばすとか」

「大きなお鍋でぐつぐつ煮ちゃうとか」

「烈火兄ちゃんの炎で灰にして、ツボにつめて河に流しちゃうとか




おいこらちょっと待て。


一通りの意見が出たとき、水鏡はあくまで心の中でつっこみをいれていた。
この場で下手に口に出して反対意見を述べようものなら、非が自分に向く虞もあったから。
・・が、今問題にしたいことはそこではなく・・・。

余りに現実離れ、そして常識すらも通用せぬ域に達している。
こんな人間ばかりが揃っている所為なのか、それとも自分がズレているのか・・。
その選択に悩んでいたとき、不幸にも扉の向こうで聞いてしまっていた成男の表情を見て、
水鏡は自分の神経の正しさを確認する。


沈めるだの異国に飛ばすだの売り飛ばすだの・・。
それではまるでどこかの悪役の使う手段ではないか。
だいたい、最後の意見だと、烈火の使える火竜が1つ減る分、
戦力が大幅に衰えるし・・・。


後ろで盛り上がる6人を向こうに、水鏡の思考もそこまで展開する。

虚空の人権より、戦力の方を重視している辺り、
やはり水鏡の意見もまともとは言いがたいが・・・。





「・・・・・・おい」



何かに気付いたように水鏡は、依然盛り上がる6人に声をかける。
・・・が、皆はその討論に集中し、聞く耳持たぬ。を貫く。


「おい」


今度は少し強めに言った言葉に全員が(やっと)気付き、
何だ。とでも言いたげな視線を水鏡に投げかけた。



「どーでもいいが・・・・。
こんな所でこそこそ会議を開いても、当の虚空には筒抜けだと思うが・・」


と言い、烈火にちらりと目をやる。
それにつられて、皆の視線も烈火に移る。



「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」


しばし沈黙が流れ・・・・





「し、しまったぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!」




風子の叫びがそれを破った。






「・・・っておい」


やはり気付いてなかったか・・・といった呆れた表情を水鏡が露にする。
自分も今しがた気付いたばかり。というのを棚に上げて。



「れ・・・烈火!虚空は何か言ってない!?」

「わ・・わかんねぇ。
もしかしたら、また勝手に外出て散歩とか行ってるかもしんねー・・・」


またってことは、以前もあったのか。
というのはこの際暗黙の了解で誰もが無視し、今の事態の改善を必死で考える。
気付いていないならそれで良し。・・が、もし知られていたら・・・・・。


「そんな・・・せっかく考えたのに、逃げられるじゃない!!」


そう、つまりそういうこと。

逃げられる・・・というよりは、表に出てこなくなる。という方が適切だろう。
どちらにしろ、こらしめるのは不可能となる。
皆が最悪の状況を想像し、今までの行動が水の泡と消えていくことを予想した。

その時、悔しさ紛れに悲しむ彼らの気持ちとは裏腹に、
軽やかな足音が廊下から聞こえてくる。




トントントン・・・・がらっ!



「うおっ!な、なんじゃお主ら、こんな所に集まりよって・・・」



扉が開くと同時に聞こえた声の主は。



「「「「虚空ーーーーーっ!?」」」」




こいつ、本当に散歩行ってやがった!?


そう言いたげな烈火に、虚空がゆっくりと近づく。
その様子を見ながら、風子らが「気付かれてない!」と喜びの表情を見せる。
烈火のところに辿り着いた虚空は、今のこの様子を問う。


「一体何をしとるんぢゃ?」

「べっつに、どーやってお前をこらしめようか・・・って話してただけだ」



・・って、言ってどうする。


虚空の問いに、律儀にもしっかりはっきり正直に答えた烈火に、
半数はつっこみを入れ、残りは呆れ果て、風子はお得意のハリセンで制裁を加えていた。



「な、なんと・・・・」


烈火の言葉に戸惑いを見せ、虚空がわざとらしく声を上げる。


「罪もない年寄り相手になんてこと考えとるんぢゃ!」


「「誰が罪もない年寄りだっっ!!」」


烈火への制裁を終えた風子と、一瞬にして完全復活した烈火の声が大きく響く。
それにはさすがの虚空も気合で圧される。


「べ・・・別に良いではないか。減るものじゃなしに・・・」


「「そーゆー問題じゃない!!」」


見事にハモる2人の言葉に、虚空は完全に気合負けしている。
ハタから見れば、ただのイジメにしか見えない(おい)


「わ・・・・ワシはただ・・・・・」

「「・・・ただ?」」


既にいじけモードに突入の虚空を見兼ね、
ほんの少しだけ声を穏やかにして、言葉の続きを促す。


「自分に素直に生きておるだけぢゃ(きっぱり)」


「ちったぁ人の迷惑考えやがれ!!・・・・・って、ん?」


また声を張り上げて言った烈火が、言い終わった後に疑問の声を上げる。
それもそのはず、先ほどまで見事にハモっていた風子の声が途切れたのである。
聞こえてこない声の主の方へ視線をゆっくりと移し―――・・・
小さく、悲鳴に似た声を上げる。



「ふーん・・・・・自分に素直に・・・・ねぇ・・・・・・」


「ふ・・・風子・・・・・?」


命知らずか考え無しか、
今ふれてはいけないとわかりきっている風子に、土門が声をかける。
それに、風子は凍てつくような視線を投げかけ、土門は帰らぬ人に(待て)



「そんな・・・・勝手な理由で・・・・・・・」



もはや尋常じゃない風子のオーラの後ろには、
やはりもう普通じゃない、2つの人影がついていた。

水鏡と小金井は、その場の雰囲気の険悪さに、自らの身を案じ、早々と部屋を後にしていた。




「バカなセクハラかましてんじゃないーーーーー!!!!!!」


「ぅぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ」






―――と、いうわけで。

結局は余計な根回し抜きに、虚空は己の行動にキレた女性らの手により、
見事お縄につき、言うもおぞましい体裁を受けたとか受けなかったとか。


その後、花菱家の裏手に広がる山中の、ある大木の枝に吊るされた虚空は、
身体中の傷からの苦痛と、飢え、そして寒さや孤独と闘いながら、
隣に同じく(自主的に)吊られるミノムシとの会話を試みるが、
見事玉砕し、長い夜を眠らず、涙ながらに過ごしたと言う。



*終わっとけ*


〜言わなきゃならんコト〜

200HIT取得の白音ちゃんに送ります。
初期のキリリクのはずなのに、最後に追加はごめんなさい・・・(死)

なんつーか、今回言い訳するのもいやです(爆)
私のトコの虚空は本当に・・・・・(遠い目)
あんまり笑えるような場面も少ないし・・・修行が足りないね(してないし)
みーふーなんて欠片もないし(死)

このままつらつらと言い訳述べても仕方ない。
ここらで逃がしてあげてください・・(泣)

んでは、200HITありがとう白音ちゃん!
来てくれるのは嬉しいが、
私のためを思うなら、もうあんまり取って欲しくないかな、キリ番・・(爆)


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