「お前は今、『幸せ』なのか?」
穏やかに笑うようになっていた。
前々からそうだった。と言えば身も蓋も無いが。
穏やかに笑うことが多くなっていた。
だから、思わず言葉が漏れた。
[[[ 意味 ]]]
日が長くなって、暖かくもなった。
誰かが言った。のんびりしに行こう。と。
誰がどういう意図でそう言ったのか、など特に興味はないが。
成り行き。言うなればそんな風に、また自分も連れてこられた。
のんびりと過ごすには、ちょうど良すぎる場所。火影の隠れ屋敷。
静けさを邪魔するものは何も無いし、個々が思い思いに好きなことを出来た。
暖かな日差しが差し込む。縁側と呼べるような場所。
何をするというわけでもなく、ただぼんやりしていた。
顔を上げれば、風子や小金井が、楽しそうに何かをしており、
土門や烈火達が、座って何か話していた。
自分の隣。
少し離れた隣には、同じように座って、外を眺める陽炎がいた。
穏やかに笑って、それを眺めて。隣に座っていた。
最初会ったとき。・・とは大分イメージが違う。
戦わせるよう仕向けるのに、笑顔は必要無いから、当然と言えばそうだ。
しかし、少し前の笑顔とも、何か違うような気がした。
だから、聞いてみた。幸せか、と。
突然の問いに、少し驚いた表情を見せて、陽炎は微笑む。
そして、少しも悩まずに、答えた。
「幸せよ?」
くすりと小さく笑って、また微笑む。
それに対し、疑問を持つ。
「何が・・・・」
何が、幸せなのか。
最後まで言わず、半端なところで言葉を止める。
言う必要がないと思ったのと、口に出すことが、何故か躊躇われたから。
その2度目の問いに、陽炎は少し悩んだ様子を見せる。
でも、それもほんの少しのことで、またすぐに答える。
「『幸せ』だと、思えること」
相変わらず微笑んで、陽炎は答えた。
答えた後、また視線を烈火達に戻して、穏やかに笑んでいた。
答えになっていない。
まず、真っ先にそう思った。
『幸せ』の意味を聞いたのに、その答えの意味もわからない。
「――さっぱりわからん」
思ったことをそのまま口にすると、
それでいいのよ。と、陽炎は答えた。
『幸せ』だと思えること。それが『幸せ』だと言った。
つまり、どういうことなのか。
説明しろと言われても、無理だと答える他にない。
さっぱりわからない。――でも、なんとなくわかるような。そんな気がする。
矛盾。でも、そうだから仕方ない。
暖かな日差しが差し込む。縁側、と呼ばれるような場所。
何をするでもなく。ただぼんやりと過ごす。
顔を上げれば、仲間と呼べる存在が目に映る。
それを『幸せ』と呼ぶのなら、否定はしない。
『幸せ』だと思える。だから、『幸せ』
モドル