「ギョロとウルルンって、名前はなんて言うんですの?」




夕食後の和やかなひととき。
突如呟かれた矛盾しまくりのセリーヌ言葉に、全員がアシュトンに注目した。












[[[ 
たまごとヒヨコ ]]]












「・・・・・・・え?」



一同の注目を一身に受けたアシュトンが、戸惑ったように声を上げた。
彼の肩の上では、ご指名を受けたギョロとウルルンすらも、ギャフギャフと身を揺らしている。




「何言ってるんだよセリーヌ。こいつらにはギョロとウルルンっていう名前がちゃんと・・・」

「そうですよ、セリーヌさん。今だってちゃんと名前で呼んでたじゃないですか」




数秒きょとんとした後でアシュトンがそう答え、クロードも賛同して言った。
しかし、それに対してもセリーヌは慌てず騒がず、そしてもちろん納得などは欠片もせず。
ちっちっち。と人差し指を左右に揺らして片目を瞑ってポーズを作った。



「あら、それくらいわかってますわよ。
私が言っているのは、レナが名前をつける前の話ですわ」

「・・・・前?」



セリーヌの言葉を繰り返し言って、アシュトンが2匹を見上げる。

言われて見ればその通り。
今でこそレナのつけた『ギョロ』と『ウルルン』という名はあるけれど。
それ以前はどうだったのか、誰も知らない。



「こいつらいちよー魔物だから、名前なんてないのかも・・・」

「甘いですわね。あのラスガス山脈の魔鳥には、ちゃーんとジーネっていう名前がありましたわ」

「あ、そういえば・・・・」



アシュトンの閃きにも、ハキハキと言葉を返す。
皆がうーん・・・と悩んだところで、さも今閃きましたと言わんばかりの表情で、
爆弾第2段を投下。








「・・・・・そういえば、ギョロとウルルンって双頭竜でしたわよね?
名前って、頭の数だけあるのかしら?それとも、体の数で1つだけですの?」

「えっ、そ、それは・・・・・・・」




続けて投下された爆弾発言に、慌てふためくアシュトン。
クロードも、アシュトンほどではないにしろ、少しは興味が湧いたようだった。





「そうか・・・。もしかしたら僕たち、ギョロとウルルンに違う名前を強制してたかもしれないんだ・・」

「でも、こいつらだって『ギョロ』と『ウルルン』って名前でちゃんと返事するよ?」

「あら、もしかしたら内心怒ってるかもしれませんわよ」

「えぇっ!そんな・・・・・」

「名前の数は・・・やっぱり頭の数だけ・・かな。2匹で1つじゃ可哀想だしな」

「クロード・・・。可哀想、で済んだら、世の中もっと平和ですわよ」

「うっ・・・・」




アシュトン、クロードの両意見を軽く受け流し、さんざん引っ掻き回した後、
彼ら2人の意見交換が白熱するのを確認してから、そっとセリーヌはその場を離れた。













「ごめんなさいね、レナ。あなたのつけた名前に、文句があるわけじゃありませんのよ」

「いえ、それはいいんですけど・・・。どうしてあんなこと言ったんですか?
しかも、私には口出し無用だなんて・・・」

「あら、だってレナまで寝不足になられては困りますもの」

「?」



少し離れていたところでことの様子を見ていたレナが、セリーヌに不思議そうに問いかけた。
事前にセリーヌから「あなたは口だし無用ですわよ」と言われ、
遠巻きに見ていることをオススメされた理由も、どうしてあんなことを言ったのかは、結局わからず終い。
そのことが気になって部屋に戻る最中聞いてみたのだが・・・。

セリーヌから返されたのは、不可思議なこんなセリフ。




「あの2人・・・・。
『たまごとヒヨコとどっちが先?』という風な単純に質問で、一晩悩み明かすタイプだと思いません事?」

「・・・・え?」

「もちろん、あなたもそうだから、口出し無用にしたんですのよ」

「・・・・・?」




明日は寝坊してもらわないと困りますの。

依然不思議そうな面持ちのレナには気付かれないように小さく呟く。
そうこうしてるうちに辿り着いた自分達の部屋の扉を開けながら、



「つまり、そういうことですわよ」



と、意味ありげに笑った。











部屋の中には編みかけのマフラーと、これからマフラーとなる毛糸玉の山。
慣れないことはするものじゃないと、重い荷物を持ったりした長老様がよく言っていたけれど、
今になってから痛感。

慣れないせいで、予定は大幅に狂ってしまった。
本当ならば、もうとっくに完成させているはずだったのに。


それならば仕方ない、と。考え付いたのがこの作戦。

きっと彼らはこれから当分のあいだは議論が白熱し、そしてその後は気になって寝つけないはず。
となれば、明日の朝寝坊するのは目に見えていて・・・・その分時間が稼げると言うもの。








せっかくですもの、目覚めたら枕元に・・・・ってやりたいですわ。




レナに気付かれないようにそっと呟いて、一先ずは大人しくベッドに入る。
レナが眠ったのを確認してから行動開始。


きっと朝まで頑張れば完成しますわよね・・・・。
密かな決意を胸に秘めて、今はとりあえずレナの寝息を聞き漏らすまいと聞き耳を立てる。








彼女の夜は、まだだまこれから。









FIN.


何気にクリスマスな内容で泣けてきます(笑)
このお馬鹿の頭の中には、クリスマスまでUPを待つなんていう考えはないみたいです(おい)
とりあえずアシュセリ強化週間第1作目。誰のためにマフラー編んでるのかよく見たら書いてませんが(おい)
アシュセリ視点で見てくれればそう見えないこともない・・・よね?(逝ってこい)
このやる気と創作意欲・・・・はともかく、どこまで自分の文章力がついてってくれるかどうかが不安です(死)
現に、一つ全然まとまらなくて困ってます(泣)
いつか・・・・・・台詞だけでもまとめてゴミ箱へ・・・・・・!(やめとけ)



モドル