::: HERO |
「どうも有難う御座いました、クライブさん!」 そう言ってぺこりとロッテがお辞儀をする。 そんなお辞儀するロッテを一瞥してから、クライブは無言で(もしかしたら何か言っていたかもしれないけれど、ここからでは聞こえない)その場を後にした。 嬉しそうに顔を上げたロッテの腕の中には、逃げ出そうともがくミナ。 それを見れば一目でわかる。彼女らが何をしていたのかは。 それはわかる。すぐにわかる。 わかってはいるけれど・・・・・。 何と言うか、まあ。正直、驚いた。 「あ、ルック。こんなとこで何してるの?」 「・・・・・・別に何しようと僕の勝手だろ」 「そっか。そうだね。うん、ごめん」 「・・・・・・・・・・・・・・いいけど」 ミナを抱いたロッテと角で鉢合わせた。 わざとではないけれど、覗いていたのを知られるのは嫌なので、いつもの調子で(しかし少し慌てて)悪態をついた。 いつもならここで不満そうに文句を返す彼女なのに・・・今日はこの通り。 心無い毒舌にも、笑顔の謝罪。 気持ち悪いくらいの上機嫌。 こっちの調子が狂いそうだ。 ミナが居て、機嫌がいいのはわかる。 それにしたって、この機嫌の良さはハンパじゃない。 何と言うか・・・・・気味が悪くて――嫌な予感がする。 「あ、もしかしてミナがちゃんと私と一緒にいるからびっくりしてる?」 立ち尽くし、微動だにせず無言のルックの様子を見て、 ロッテが何を勘違いしたかそんなことを言い出す。 その呟く様にも満面の笑み。 周りに花が咲いてるような気がするのは気のせいだろうか? 「実はね、クライブさんに探すの手伝ってもらったの!」 知ってる。 思わずそう口走りそうになるのを、必死で抑える。 「クライブさんてすごいんだよ! ミナがどこにいるかすぐ当てちゃうし、捕まえるのも上手いの!」 「・・・・へえ・・・・・・」 「捕まえるっていうか・・・・・ミナから寄ってくる、って言うのかな? 呼んだらすぐに出て来たときなんか、すごくびっくりしたもん」 「・・・・・・・・・」 「クライブさんてあんまり話した事無くて怖かったんだけど、 ミナが懐くってことは良い人だと思うんだ! 今からでも仲良く出来るかな・・・・・・・?」 浮かれて話すロッテのミナを抱きしめる力が強まる。 腕の中でミナが苦しそうにしているのを気づいているのかすらわからないほどに、彼女は上機嫌で危険だ。 すごい? 捕まえるのが上手? ミナから寄ってくる? 良い人? たかが1回ミナの捕獲に成功したくらいで。 ちょっとミナが懐いたくらいで。 今までの何十回にも及ぶミナ捜索隊に無理矢理出席させた、 隊員1号(=ルック)にも上回る絶賛ぶり。 ミナがどうこうとか言う前に――――悔しい。非常に。 「あんな暗い奴のどこが良いんだよ」 「あの暗さだって、かっこよさの1つだと思わない?」 「思わない」 「ルックは知らないかもしれないけど、すっごく頼り甲斐あるんだよ?」 「そんなの知らないね」 「話してみると結構優しかったし!」 「だからってあんな奴・・・・・・」 「私、あんなお兄さん欲しかったなー」 そう言って、ロッテが憂げなため息をついた。 ・・・・ダメだ。頭がどうかしてる。 すっかりクライブに魅せられているロッテの思考回路。 ミーハーの理由が『お兄さんみたい』なのがせめてもの救いだけれど、 現状に対して、そんなものは何の解決策にもならない。 ・・・・・腹が立つ。 「そんなに頼り甲斐があるって言うなら、 今度からミナがいなくなったときはあいつに頼むんだね」 「えー?ルック、手伝ってくれないの?」 「君が言ったんだろ。あいつの方が頼り甲斐があるって」 「別に『クライブさんの方が』なんて言ってないじゃない!」 「言ったも同然だよ」 「ルックだって、頼りにしてるのにー・・・・・」 「よく言うよ」 「本当だよ?ミナのこと探すの手伝ってくれるし。 魔法が強いの知ってるし。頼りにしてるよ?」 「・・・・・・・・・・・どれくらい」 「え?」 「クライブと比べて、どれくらい頼りにしてるって?」 ルックの突然に、ロッテが目を丸めた。 自分でも馬鹿げた質問だと思った。 ・・・・けれど、口に出してしまった後ではもう遅い。 「・・・・・どれくらい、って・・・・・。そうだなあ・・・・・・・・」 困ったようにロッテが考え込む。 数秒考え込んで――顔を上げて、 そして、恐る恐ると言った風に、口を開いた。 「・・・・・例えば」 「例えば?」 「クライブさんが、ピンチの時に出てきてくれる謎がいっぱいのヒーローだとするとー・・・・・・・ルックは、困ったときはいつでも助けてくれるヒーロー・・・・・・・みたいな感じ?」 「・・・・・・・・・・・」 「そ、そんな顔しないでよ!これでも一生懸命考えたんだから!」 「・・・・・・・・・・・・・ヒーロー?」 「・・・・・・ヒーロー」 「わかりにくい」 「だからつまり、クライブさんは本っ当に困ったときに助けて欲しくなるんだけど、ルックは、日頃から頼りにしたくなる・・・・・・って感じ、かな?」 「・・・・・・・何、それ」 「・・・・・・・・・・・私もわかんなくなってきた・・・・・・」 そう言って、ロッテがぶつぶつ何かを呟きながら、 考え込むように首を傾げた。 相手に説明しようとして、自分が混乱してたら世話ない。 心の中で悪態をつきながら、ルックが、こっそり笑っていた。 ピンチの時に居て欲しい人も。 いつも助けて欲しい人も。 誰もが、誰かのヒーロー。なんです。 FIN. |
現在脳内ルクロテ祭り開催中(リオルはどうした)(それはそれで(笑) ところでこれは・・・・ルクロテ?うん、多分ルクロテ?(だから何で疑問系・・・) てゆーか、幻水世界にナントカレンジャーはいないだろうに・・・(今更) 世にも珍しい?クライブ絡みのロッテ受け。 ハマったらどうしよう。どうもしないか、楽しいか(笑) でもやっぱ、基本形はルクロテでないと〜v(←楽しいらしい) 作中のロッテは、クライブに対して憧れを抱いているだけです。 ルックのことをどう思っているかはわかりません(わからんのか) はっきりしているのは、ルックはロッテが好きそうだ。それだけです(可哀想に(待て) |