某月某日。というか11月13日。
本日めでたく誕生日を迎えた彼は、某少女の家の前で、立ち往生していた。
/// 家族週間 ///
本日誕生日を迎える彼・・・水鏡は、霧沢家の前で、暇を持て余していた。
手の内にあるのは、見慣れた文字で書かれてある、脅迫文紛いの招待状。
『来なかったら錐1000本』・・・は、彼女が言うと冗談の域を軽く越えそうで、それなりに怖かったりする。
もうちょっと、マシな誘い方はできないのか・・と心の中で悪態をついて、
腕の時計で時間を確かめた。
現在、6時57分。
指定された時間まで、あと3分。
先程から、家中走り回っているのか、どたどたという足音がよく聞こえる。
どうせ、烈火だの土門だのが、迫る時間に焦って右往左往しているのだろうとかんがえて、ため息をつく。
仲間と過ごす、2度目の誕生日。
さすがに忘れることは出来なかった。インパクトのある、招待状のおかげで。
ただ、何故場所が烈火の家ではないのだろうか。ということが気がかりだった。
場所として一番適当なのは、あそこなのに。
そうこうしている間に、時刻はいつのまにかPM7:00.
気付けば、足音も止んでいる。
もう、大丈夫だな。
そう思って、インターホンを鳴らす。
ぴんぽー・・・・ん
間延びした音が家に鳴り響く。誰かが走る音がして。
ばたんっっっ!!!
いきおいよく扉が開いた。
「お、来た来た。さぁっすが、時間ぴったり!」
「あぁ・・・」
「えーと。じゃ、中どーぞ」
言われるがままに玄関をくぐる。
扉をくぐった後、またうるさいくらい盛大に迎えられるのかと思っていたのだが。
そこにいたのは、烈火でも土門でも小金井でも柳でもなくて。
意外にも願子だったりしたのだった。
「何してんのさ水鏡ー。早く入りなよー」
「そだよ。どしたの、みーちゃん?」
「あ、あぁ・・」
中に、居るのか・・・・?
そう考えて、案内されるがままに導かれて、ある部屋に入る。
恐らくリビングなのだろう。テーブルの上に並べられた料理の数々(見るからに多い)
それにプラスして、ケーキ等々。
しかし、やはりその部屋にも予想した面々はおらず、
笑顔で迎えてくれたのは(会った事こそ初めてだけれども)風子の母親だったりした。
「あなたが水鏡くん?初めまして。話はいつも風子から・・・」
「もー、ママ!話はあとあと!!」
そう、言葉を遮るようにして、風子が水鏡の腕を引き、
テーブルのまわりに置かれてある椅子の1つに座らせた。
水鏡はと言うと、ことごとく予想を裏切られ、状況を飲み込めずに居た。
それに気付いた願子、水鏡の腕を引いて、こっそり耳打ちする。
「風子ね、今日のためにずーーっとがんばってたんだよ。
烈火達が計画してたパーティー別の日に代えてもらったり。
お料理練習したり・・・」
だから、感謝してよね!
最後にそう言って、えっへん、という風な素振りをしてみせた。
ほどなくして、風子に呼ばれてキッチンの方へと走っていったが。
残された水鏡は、いつもいつも予想以上のことを考え付く北風小僧に、
呆れ半分嬉しさ半分で、複雑な表情を浮かべていた。
――感謝してよね!
あぁ、もちろんだ。
ふと顔を上げれば、すでにテーブルの上のセッティングは完了。
女3人は、片手にクラッカー。
向けられた先が、自分であることに気付いて、
ある程度覚悟をして、ふ、と表情を緩める。
「ハッピーバースデー、みーちゃん!!」
ッパーーーン!!!
大きな音を立てて、紙吹雪が舞って。笑顔が零れた。
1年にたった一度の。今、ここに居る事を喜ぶ今日だから。
今宵貴方に、家族をプレゼント。
FIN.