嵐は気付かぬうちに入り込んでいたらしい。










[[[ 
人災勃発警報 ]]]











「やあ大地。元気にしていたか」



部室のドアを開いた途端、突然聞こえたその言葉と、
そして開いた途端目に飛び込んだ、その言葉を呟いた人間を見た瞬間、
扉を開いた張本人、不破大地は反射的に扉を閉めた。


今部室にいた人間は、もしかすると自分の知った人間だったりするのだろうか。
否。そんなはずがない。奴は今仕事で多忙な生活を送っているはずだ。
こんなところで油を売っている余暇など持ち合わせていないはず。
すなわち、今のは幻覚なのだ。そうに違いない。

そんな葛藤(というより思い込み)があったかどうかは定かではないが、
不破は扉を閉めた後、すぐさまその場を離れんとしてくるりと踵を返した。

嫌な予感がする。
いつもならアテにしない第6感が、彼にそうささやいていた。



ばたん。


後ろで部室の扉が開く音がした。
ち、やはり無視をして見なかったことにしようとしていたことを気付かれたか。
そんな、なかなかに腹黒いことを思いながら、不破はアテもなくただ歩いた。
振り返る事は決してしない、振り返ればそこで負けだ(何にだよ)
ただ無言で、ひたすら前を向いて。

休憩中だったから良かったものの、運動場をひたすら無言で歩き回る姿は、
はっきりいって不気味以外の何物でもない。
しかも後ろに見たことの無い人間がぴったり同じ距離を保って付き纏っているのだから、
その不気味さは倍増している。

いい加減誰かつっこめよ。
自分でつっこむ勇気のない某MFは、ちゃっかり安全区域に避難しながらそう思った。


そのとき。







「京介さん!?」




他の部員にとってはある意味救いの(不気味な鬼ごっこが終止符を打つので)、
特定の人間達にとっては絶望の(そこまでいうか)声が、グラウンドに響き渡った。




「やあ有希。久しぶりだな」


「や、それはいいんですけど。一体何やってるんですか」


「見てのとおりだ」


「わからないから聞いてるんです」




スコアボード片手に、驚きを素直に表情に貼りつけながら、
小走りに走り寄ってきた有希を見つけて、彼―京介は振りかえり、何事もないかのように挨拶を交わした。




「久々に暇が出来たので大地を尋ねてきたのだが、
顔を合わせた途端逃げられてしまってな。
気付いていないのかと思って追いかけていたのだが」


「・・・それってどっちかっていうと、気付かないようにがんばってたんだと思うわ、私」


「やはりそうか」


「やはりそうか・・・って・・・・・」


「小島」


「それにしても、本当に久しぶりですね、京介さん。
元気でした?」


「ああ。それは心配な―」


「小島!」


「・・・・・何よ、不破」




グラウンドの真ん中で繰り広げられる和やかな会話に、
1度は気づかれる事なく流されたことにも負けず、なんとか口を挟んだ不破に、
有希は京介に対するそれとは全く違う態度で、不破を振りかえった。
それはそれで微妙に傷ついたりもするけれど、今はそんな小さなことを気にしている場合ではない。

目の前にいるのは、片やチームメイト、片やはとこという組み合わせ。
この2人を会わせた記憶は―――少なくとも自分が意図的に合わせた記憶は、ない。
ならば何故、この2人はこうも親しげに会話を交わしているのだろう。

考えても、わからない。




「――こいつが誰なのか知っているのか?」


「京介さんでしょ」


「・・・・何故知っている」


「誕生日にプレゼント貰ったって、前に話したじゃない」




ねえ?と京介に向かって相槌を求める有希に、
不破は確かそんなこともあったような気が・・・と過去を振りかえった。
そして、瞬時にその記憶を思考回路から導き出し、そして同時に思った。

あのときは確か、京介(ヤツ)の正体(というか素性)を、一切知らなかったはずだ、と。




「・・・・あのとき小島は、そのプレゼントを贈った人間が誰なのかわからないと言ったな。
俺もあのときは答えなかったはずだ。
ならば何故、京介のことを知っている」


「ああ、あれね。中開けたら手紙が入ってたのよ。
そこに、名前から素性から全部書いてあって・・・・・・。
ていうか、あんた。あの贈り物が京介さんからだってわかってたんなら、教えてくれても良かったじゃない」


「・・・・・・京介」


「なんだ」


「どういうつもりだ」


「何の話だ?」


「とぼけるな。何故わざわざ小島の誕生日にプレゼントを用意した。
おまえには関係ないはずだろう」


「はとこの友に贈り物をしただけだろう。何か不都合でもあるのか?」


「・・・・・・・・しかし」


「しかしも何もないでしょ。いいじゃないのよプレゼントくらい」


「・・・・先日といっていることが違うぞ、小島」


「細かい事は気にしない。あのときは京介さんのこと知らなかったんだから仕方ないでしょ?
ところで京介さん。暇ってどれくらいあるんですか?」


「そう長くはない。大体2日ほどだ」


「それだけあれば、十分ですね。
私、このまえのプレゼントのお礼がしたいんです。明日どこか行きませんか?」


「有希からの誘いを断る理由は無いな。
明日は1日不破家に落ち着くつもりだったが、それは止めにしよう」


「待て京介。それは―――」


「じゃ、明日朝10時に。・・・不破の家に迎えに行った方がいいですか?」


「小島も少し待・・・」


「その必要はない。私が迎えに行こう。家の場所も知っているから心配は無用だ」


「じゃ、待ってます。遅れないで下さいね」


「わかっている」





そうして明日の約束を取り付けた後、
彼ら2人はまた別の会話を繰り広げつつ、グラウンドの真中を後にした。
そしてそこには、会話から完全に外され、無視し続けられた少年が哀愁漂わせながら佇んでいたそうな。

そんな少年の悲しげな姿を見て、第3者1号はこうのたもうた。
「すごい!不破くんが口で負けてるなんて!」
そういう問題ではないということに、一体何人が気付けただろうか。


とにもかくにも。
気付かぬうちに、自分と似通うがためにいざ争うとなると一番やっかいな人間が参戦したことよりも、
なんだかんだで自分の存在が有耶無耶にされていることを怒りを感じながら、
少年は明日への闘志を燃やすのであった。






終わっとけ。


余りにも痛すぎてアトガキを書くのも避けたいとき、いつもなら逃亡するんですけど(待て)
なんやらこのアトガキも一部の方にはウケてるみたいなんで。
逃げるのもほどほどにしようかな、と(やめるんちゃうんか)

えー・・・・・あー・・・・・・・・・・・・・。
不破と有希と京介ですv(待て)
トライアングルとか言う問題じゃねえよ、カップリングとかいう問題でもねえよこれ。
不破も有希も京介も、キャラが全然違うじゃねえかようらあっ!(ちゃぶ台返し)
まだまだ未熟だな、私。
ギャグ要素を含むとついキャラの性格操作しちまうよ・・・。
(というか、性格が変わるからギャグが確立するのでは?)

さて、このお話を読んで、京介と有希の方がカップリングっぽいじゃねえか、と思った方。
それは大きな間違いです(は?)
話ん中で、有希が京介誘ったりしてますが。
それは全て、有希にとって京介が友達だからなのですよ。
だからこそ、気軽に誘える。と。わかりましたかー?

だからといって、不破有希が確立するのかというと、そういう話でもないんですが(おい)
とりあえずそんな感じでよろしく!(嫌な終わり方だ)

(どうでもいいけど、タイトル改名したらえらい事になったよ(死))



モドル