::Flower
「風、吹かないかしら」
頭上に満開の桜が広がっていた。
花と花の間から、真っ青な空が見える春の日。
「散るぞ」
「それが見たいんじゃない」
桜の木々横を通りすぎながら、当たり前のように有希が答えた。
穏やかな空の雲は流れる気配がなく、風は、吹く兆しすら見えない。
「満開の桜も好きよ」
通りすぎた桜の木を、振り帰りながら有希が言った。
「八分咲きも、それなりに綺麗」
後ろを歩いていた有希の足音が途絶えた事を知り、不破が振り返る。
それに気付いた有希が、静かに歩き出した。
「でも、一番好きなのは、散ってるところ」
風に吹かれて花びらが舞ってるところが、一番綺麗。
呟くように、そう付け足した。
風が吹き、空気が動く。
風にそよぎ、枝が鳴く。
枝から離れた花弁が空へ舞いあがる。
あたり一面に、広がる桜吹雪。
そして出来上がる、桜の絨毯。
その様を見るのが、一番好きだった。
「・・・花は儚く散る命だからこそ、綺麗だというからな」
「そうね」
歩き出した有希が横をすり抜けてから、不破が繕うようにそう言った。
有希がそれに、返事を返す。感情の、篭もらない声で。
「でも私、その考え方好きじゃないわ」
きっぱりと言い放った有希に、不破が、首を傾げた。
「すぐ枯れるから、とか。すぐに散るから、とか。
そんな理由で、花が綺麗だとは思えないもの」
「なら、何故花は綺麗なのだ?」
「さあ?」
不破の質問を軽く受け流すように、
悪びれた様子もなく有希が肩をすくめた。
そして振り帰った不破ににこりと笑いかけて、言った。
「でも、綺麗でしょ?」
「・・・・・・・・・・・・そうだな」
不破が簡潔にそう答えた。
微笑みかけた有希の後ろ髪が風に靡いた。
彼女の後ろで、桜の花弁が、儚く吹雪いていた。
桜は散るから美しいのではないと。
桜は、散るのが美しいのだろうと。思う。
FIN.
儚く散るから美しいだなどと誰が言ったのかはおいといて(死)
桜に限らず。
命あるものが美しいのは、生きてるからだと私は思う。
とりあえず、桜吹雪が好きなのは作者です。
桜吹雪サイコー!桜の絨毯サイコー!
今のうちのクラスの教室、真横に桜の木があるのです。
授業中桜吹雪が見れる絶好ポインツ。
進級して一番嬉しいことは、これかもしれない(爆)