: 電話 :
鳴り出した電話には、1つの予感があった。 先に電話に出ようとした母親を止めて、自分で受話器を取る。 聞こえてきた聞き覚えのある声を聞いて、 予感が的中したことに、誰にも気付かれないくらい、小さく笑った。 「どうしたの、急に」 『郭?ちょうど良かったわ、今ヒマ?』 第一声まで予想通りの言葉を発する有希に、 行動がワンパターンだな、と思う。決して口には出さないけれど。 「まあね」 『じゃ、1時間以内にいつものとこに集合。 都合がつくようなら、真田くんとかも連れてくる事』 「唐突だね」 『いつものことでしょ?』 「確かに」 『1秒でも遅れたら、何か奢ってもらうわよ』 「自分勝手」 『今更よ』 「あ、開き直った」 『今に始まったことじゃないじゃない。そろそろ慣れなさいよ』 「慣れてるよ、とっくに」 『だったらくだらないこと言わないの。 それじゃ、後でね』 「遅れたら何か奢ってもらうよ」 『遅れないわよ!・・・じゃあね』 電話口の向こうで受話器が下ろされる。 間抜けに響く、通話終了の音。 それを聞きながらまた、小さく笑った。 彼女はいつだって突然唐突。 でもその自分勝手は、信頼されてるみたいで少し、心地良い。 FIN. 「君の自分勝手はいつもきれいだ」 有希は、良い意味で自分勝手な人間だと思う。 |