夏休み。
学校は、授業は休みでも、もちろん部活はあるわけで、
今日ももちろんあるはずなのに。

なぜか今日のその日のグラウンドは、
サッカーとは違うところで盛り上がりを見せていた。






  






「―――・・・何してるの?これ・・・」



学校に辿り着いたマネージャー兼女子部部長の小島有希は、
一角に集まり、何かに盛り上がっている部員達を一望し、誰にとも無く呟いた。

集団のほぼ中心に位置するのは、輝くような金髪男――もちろんシゲである。



『また』、何かやったんだ。


反射的にそう思って、有希自身もその輪の中へ突入。
しかし、その考えはどうやたハズレだったらしい。

それというのも、誰のどの顔を見ても、怒っておらず困ってもいなかったから。
それに皆、片手に白いふわふわのものを持って嬉しそうに・・・・。


そこまで考えて、はたと彼女のは立ち止まる。


白いふわふわ。そして、気のせいか辺りにただよう甘い香り・・・・。



ずかずかと人を押し退けて、
恐らく(とゆーか、確実に)首謀者であろう人物の前に立ちはだかり、
どばんっ!とちょうどあったテーブルに手を叩き付けた。



「何してるのよ、シゲ!!」

「何や、やっと来たんか小島ちゃん。遅かったなー」


「シゲ!!!」



再度がなる有希に、
初めはなんとかごまかそうとしていたシゲも、観念したように頭をかいた。




「あー・・・・話せば長なるんやけどなぁ・・・・」

「手短に話して」

「――ハイ」



有希の言葉に、何をどう話そうかと考えていたシゲの脇から、


「夜店で出すわたあめの試作だそうだ」


という声が聞こえてきた。



「いきなり出てくんなや、不破ー・・・」

「・・・さっきから居たが?」


脱力するシゲと、なおマイペースな不破をヨソに、有希は一人納得していた。

そう言えば、もうすぐどこかで祭りがあると、誰かが騒いでいたような覚えがある。
有希自身は行くつもりすらなかったけれど、
シゲなら出店側にまわっていても不思議はない。
どうせ、どこからか助っ人でも頼まれたのだろう。

よくよく見てみれば、目の前の・・・さきほど手を叩きつけたテーブルには、
なんとも本格的なわたあめ製造機が。



「・・・つまり、練習で作るのはいいんだけど、
その処分に困るから、わざわざココで作ってみんなに配ってるー・・・ってこと?」

「そや。さすがやな、読みが鋭いわー」

「あんたねぇ・・・」


おちゃらけるシゲに、これじゃ、練習できないじゃない。と有希は力なく呟く。
周りの部員達は、もうしっかり祭りムード。
今、これから練習を始める。と言えば、文句を言いそうなヤツが1,2・・・・。

そう思うと、残念な気分が有希の中に広がり始めた。
はぁ・・とため息をついていると、突如、目の前が真っ白に。



「で、これが小島ちゃんの分や」


一瞬、意識が遠のいたのかと思ったけれど、
目の前が白くなったのは、どうやらわたあめのせいだったらしい。

割り箸にささる。雲のようなわたあめ。
さすが、シゲの器用さには思わず脱帽。
素人とは思えぬほどの出来映えであった。
・・・素人かどうかは、怪しいところであったが。



「ありがと。・・・でも、いらないわよ、こんなに」

「えーやん、遠慮すんなや」

「別に、遠慮してるわけじゃ・・・」


やけに重く感じるわたあめは、正規の大きさより、大分大きいものだろう。
おかげで、片手がやけに重く、思わず両手で持ちたくなるほど。

そんなわけで、有希の言葉は本当に遠慮ではないらしかった。
手のうちの巨大わたあめの処分に困る。
捨てるのは嫌。だからといって食べきれない。
さて、どうするか。


悩むことなく、答えは出ていたりするのだが。



「不破、いらない?半分」

「――・・・・・おまえはいいのか?」

「うん、全部あげるわけじゃないし。それにどのみち食べきれないもの」

「・・・そうか」



ヒマそうにしていた(実際は頭の中ではいろんな考察が為されていたかもしれないが)不破に、
そう話をつけ、有希がはい、と手を伸ばす。
不破も受け取ろうと手を伸ばしたのだが・・・その手は、ハンパなところで止められた。


あぁ、どう受け取るかで悩んでいるのか。

生憎、わたあめにつけられた割り箸は一本。
これでは、分けにくいのも当然のこと。
そう感じた有希が、シゲにもう一本箸を要求しようとシゲに向き直る。




と、同時に。




「なんやねんな、不破。欲しいんやったらまだあるで」



という、シゲの明るい言葉と同時に、不破の手には、新たなわたあめがしっかり握らされていた。



「人のモンもらおーてか。お前も食い意地はっとったんやなー」



「・・・・って、あんたは何やってんのよーーーーー!!!!」




あっはっは。というシゲの満足げな笑い声と有希の叫び声がこだまする中、
不破はわけもわからぬままに自分の存在が有耶無耶にされていることに大層不満を感じ、
他部員はしっかり安全地帯に逃げ込んでいたとか。



結局、わたあめの半分は、夕子先生に回ったとか。



FIN.


言わなきゃならんコト

ふざけたことに、フリー小説になってしまった不破有希シゲ。
お気づきの方もいるかもしれませんが、このフリー小説は、
『屋台で売ってる食べ物』がテーマです(死んでこい)
ってーと、そろそろ次(みーかげ)のテーマも見えてきたでしょう??(笑)

どーでもいーけど、シゲ出番多すぎ。不破出番なさすぎ(死)
どこへいった、私の本命!!!(笑)
っつーか、最近すっかり不破有希シゲな構図にハマりました(再笑)
面白いのさ、このコンビ書いてると!!!(爆)

ちなみに、書きたかったのは
『わかりにくいヤキモチ妬いてるシゲ』と『報われそうで報われない不破』(爆)
うん、目標達成(撲殺)

タイトルは、適当に『わたあめ』ってことで(死)


ばっく