■ 恋愛初心者 ■





「ヨンサ、この子知ってるの?」



日本の我が家、郭家。
その家の息子の部屋にごろごろと転がり込んでいたある日。
ベッドと机の隙間に落ちていた写真を摘み上げて、潤慶がそう問い掛けた。



「知ってるよ。時々会うから」

「ふーん・・・・・・・・」

「・・・どうしたの潤慶。さっきからずっとそれ見てるけど」

「ヨンサ、この子、名前は?」



写真から目を離さずにそう訪ねる潤慶に、英士が怪訝な表情を示してから、小島有希、と小さく答えた。



「ユキ・・・・・やっぱり」

「やっぱり?」

「ねーねー、ヨンサ。この子、ヨンサの彼女?」

「違うよ」

「そっか。良かったー」

「?」



親戚のよしみとは言え、わけのわからない従兄弟の行動についていけなくなったのか、何か用事を思い出したかのように振舞って、英士が部屋を後にする。
そんなことを気にする様子もなく、潤慶は未だ写真を眺めていた。




初めて会ったのはいつだったか。
日本に住んでいた数年前の、ある春の晴れた日。
気持ちいい気候に誘われて、遠くまで歩いて見つけた公園で、
長い黒髪を靡かせて、ボールを追いかける姿を見つけたとき。
思わず声をかけて、一緒にボールを追いかけた。
次があるとも限らない、曖昧な「またね」の言葉と共に名乗ったときの笑顔に、
心まで奪われた。覚えて貰えているかさえわからない、ほんの、ひととき。






「・・・・・・ヨンサの知り合いなんだ・・・・・・・」



ベッドに横になりながら、小さくぽつりと呟く。
空白の3年間の間に、仲良くなられたのはなんとなく妬けるけれど――好都合。
2度目の奇跡を願っていながらも、叶わないと諦めかけていたから。

それでも、天は彼に味方した。



寝転んでいた体勢から、勢いよく起き上がる。
下から英士の声がする。どこかに出かけたわけじゃないらしい。
起き上がった勢いを殺さずにドアを開けて、廊下に飛び出して声を張り上げた。









「ヨンサー!次はいつユキに会うーー??」






奇跡までのレールは神様が引いてくれた。
あとは自分で動いて、辿りつくだけ。


覚えていたわけじゃなく、忘れなかっただけの気持ち。
それでも今、とても大事に思えるなら、それは多分勘違いじゃなかったんだろう。





小学生の時の恋。はたしてそれは勘違い?






FIN?
―――――――――

何となく『第一印象』と被ってるような気がした人は素直に挙手しましょう。
はい、大正解です。花丸あげましょう(死)

書きたかったものは、『小学生の恋は勘違いか否か』ってこと。
一目ボレっつーのもそうっすね、勘違いかどうか微妙なところ。
どうなんだろう、勘違いなのか?解答求む(笑)

 

モドル