■ 戦う少年少女 ■ 殴る。 魔法も使う。 回復もする(もちろんアイテムで)。 今日も彼女は大活躍。 「浮かない顔して、どうかしたかい、ルック?」 こともあろうに戦闘真っ最中。 こんな雑魚敵に魔法を使うのはもったいない、と言わんばかりに、 攻撃命令が出ずに後列でひまを持て余していたルックに、 同じく後列で前列の3人を暖かく見守っていた(参戦しろよ)ネルが声をかけた。 仲間を信じている故か、はたまた否か。 どちらにしても、恐ろしいまでの余裕である。 「・・・・・」 「あ、もしかしてヒマなのか?攻撃魔法は使うのがもったいないから、眠りの風くらいなら使わせてあげてもいいけど」 「必要ない」 「・・・・ならいいけど。あんまりぼーっとしてると、向こうからの飛び道具にやられるよ。せっかく後列にしてるんだから、傷なんて負わないでくれ」 「そう。それだよ」 「――― は?」 ルックとの会話を終了し、せめて意識だけでも戦闘に戻そうとしたネルの言葉に、ルックが謎の返事を返して、ネルが間抜けな声を上げる。 声を発すると同時に顔をルックに向けると、彼はとても不満そうな顔をしていた。 ちなみに、未だ戦闘中である。 「『それ』って・・・・何が?」 「何で僕は後列なんだよ」 問い返したネルに、唐突に返った答え。 意外な言葉にネルが呆けたとき、前方でロッテがモンスターを殴り倒す音がした。 「・・・・・何で、って。今までだってずっと後列だったじゃないか。何を今更・・・」 「今までなんて関係ないね。 僕は後列にいるのに、何であいつは前列なのかって聞いてるんだよ」 「あいつ・・・って、ロッテかい? ・・・それは、彼女のもってる武器がSレンジだから・・・・・・」 「僕のだってSレンジだろ」 「それはそうだけどさあ・・・・・・・」 しつこいまでに食い下がるルックに、ネルが顔をしかめたとき、 2体目のモンスターを切りつける音が、辺りに響き渡った。 「よく考えて見ろ、ルック。 前列にいる3人は、みんな武器がSレンジだろ? これで君を前列なんかに持っていったら、 ただ立ってるだけの人間が出てくるじゃないか」 「なら、熊か青いのをパーティから外すとかしたらいいだろ」 「そんな無茶な・・・・・」 自分勝手なルックの解答に、ネルがいい加減頭を抱える。 ちょうどその時、2体目のモンスターが断末魔と共に姿を消した。 残りは、あと1体。 「いきなりそんなこと言い出すなんて、一体どうしたんだよルック。 今までは、むしろ『後列万歳!』って感じでサボりまくってたじゃないか」 「うるさいよ」 「・・・・・・・・・とにかく。君が何と言おうと前列には行かせられない」 「・・・何で・・・・」 「攻撃が低い。防御も低い。 一撃で戦闘不能に陥るような人間を前列に置くなんて博打を打つ気は無いよ」 「・・・・・・・・・」 「同じSレンジでも、ロッテの攻撃は多少効くし、防御だって人並みなんだ。 だとしたら、やっぱり通常攻撃出来る場所に居て欲しいんだよ。 ・・・・頼むから、わがまま言わないでくれ」 きっぱりと言い捨てられたルックが、顔をしかめたとき。 えいっ!という声と共に振り下ろされたロッドが空を切り、 ロッテが、モンスターにトドメを差した。 戦闘終了。 前列の3人と、後列で唯一戦っていたクレオが、ふうっと安堵の息を洩らした。 「ごくろうさま、4人とも!」 「『ごくろうさま』じゃないですよ、ネルさま。一体何を話してたんですか?」 「ごめんごめん」 「『ごめん』じゃねえだろうが、ネル!」 戦闘終了と共に和んだ空気の中、笑顔でネル以下4名が言葉を交わす。 そんな中、未だ苦い面で下を向いていたルックの頭を、誰かがぽんっと叩いた。 「ちょっとルック!戦闘中におしゃべりするのやめてよね! ルックに攻撃がいかないようにって、すっごく気使ったんだから!」 「・・・・・・・・そんなの、君が勝手にやったんだろ」 「何よそれー!ルックが怪我しないようにって、頑張って前守ってるのに!」 ぷう、っとむくれて、ロッテがネル達が戯れている方へと走っていった。 片手に握るロッドは、本拠地を出たときに比べてひどく汚れている。 ・・・・・ロッドの正しい使い方を、忘れているような気がするような。しないような。 そんな彼女の後姿を見ながら、ルックがまた、目を伏せた。 何が哀しくて、同じ魔道師の女の子に、前を守ってもらわなくてはならない? 男だったらいい、とか。そういう問題でもない。 自分の防御が低いこともわかってる。でも、それだって問題じゃない。 いつもいつも、立ち尽くしながら見る彼女の赤い髪の揺れる背中を見て、 『守られてる』ことを実感するのは、屈辱的で・・・・・悔しい。悔しすぎる。 かと言って、あの頑固人間がそう簡単に考えを変えるわけも無し。 状況改善の見遠しは暗い。 少年の心は複雑だった。 戦う少年少女。 今日も元気に守ったり守られたり。やっぱり、守られたり。 とりあえず、丈夫になって出直しましょう。 FIN. ――――――――――――――― ルックが丈夫になる?うわ、無理っぽい(おい) 書き終わってから気付いたのですが。 ルックがロッテの観察してませんわよお客さん!(死) リク内容『戦闘中、前衛に出て戦っているロッテを観察するルック』なのにね、まったくもう!(死) えーと。多分これは、ギャグなんだと思います(そうなの?)(おい) ロッテが前列で、しかも自分の前で戦ってるのを見るのが辛いルックさん。 ので、戦闘中ヒマだったネルと一緒に討論を繰り広げる馬鹿話。 あんたら、余裕ありすぎます。レベルいくつだこら(関係ない) とりあえず言いたかったのは、女の子に守られると男は辛いだろうってこと。終わり(謎) |