■ call ■ 白い雪が地面を覆う。 冷たい風が弱く吹く、雪の舞う寒い日。 「珍しいとこで会うもんね」 散歩の途中立ち寄った公園。 寒いせいか人の少ないそこには、偶然にも見知った顔。 雪の降り積もる地面に、真新しい足跡を残しながら、 不破の姿を見るなり、彼女はそう言って微笑んだ。 「あんたも散歩?」 「小島もか」 「まあね。綺麗に積もってるから、歩きたくなったのよ」 そう言いながらまた足を踏み出して、誰も踏んでいない綺麗な雪に跡を残す。 踏みしめたときに鳴る小さな音が、心地よく耳に残った。 「この分じゃ、明日の部活は大変ね。 水溜りがすごいわよ、きっと」 「注意を怠ると、滑ってこけるだろうな。 下手をすれば足を痛める」 「・・・・・止めといた方がいいかしら」 「それが賢明だ」 不破がそう言うと、有希が悔しそうな顔をして、足もとの雪を軽く蹴った。 寒い日。昼間の時分でも降り続ける雪が、夜になって止むはずも無い。 となれば、明日の朝のありさまは否が応でもわかるというもの。 放課後のグラウンドなど、雪が残っているか雪解け水で散々なものになるだろう。 部活の出来ない日の授業など、退屈なことこの上ない。 「でも、雨の日だってサッカーはするわけだし。 ちょっとくらいの水溜りくらい、どうってことないわよ!」 「・・・・・・小島らしい言い分だな」 「あったりまえでしょ?何のために学校行ってると思ってるのよ」 小さく笑う不破に、自信満々に有希が答える。 どうやら彼女にとって学生の本分とは、サッカーをすることらしい。 実に、彼女らしい。 嘘偽り無く心から胸を張って。そう言いきれる彼女は、すごいと思う。 同時に、綺麗だと思った。 「・・・・にしても、よく降るわね。 綺麗なのは確かなんだけど・・・部活できないかもしれないとなると、憎いわね」 言いながら、有希が歩き出す。 後姿にちらゆく雪が、綺麗だった。 白く舞う雪と同じ名を持つ貴女。 春に咲いた貴女なのに、その名前は良く似合う。 「・・・・・・・ゆき」 風の音に紛らせて、言う。 何ともとれる微妙なアクセントをつけて。 「ゆき」 「・・・・・ああ、綺麗よね。雪」 「・・・・・・・」 「・・・・不破?」 「・・・そうだな」 「? うん・・・・・・・?」 有希が戸惑いがちに返事を返す。 そして不破の言葉の意味がわからないように首を傾げる。 そんな有希の仕草を見ながら、今度は聞こえないように。 小さく、もう1度呟いた。 「・・・・・・・良い名だ」 ぽつり呟いた言葉が、辛うじて有希に届いた。 自分のことを言っているのだと、わかったようなわからないような顔をしながら、 戸惑ったような表情で、微かに頬を染めた。 そんな彼女に背を向けて、不破が公園を後にした。 白く舞うゆき。とても綺麗なゆき。 凛として、真っ白な美しさを持つゆき。 春に咲いた貴女についた、冬に散る名前。 矛盾した、でもとても綺麗な名前。 空から雪が舞い落ちた。雪のちらつく後姿が、綺麗だった。 FIN? ―――――――――― 何のこっちゃ(待て) 何てことのないただの言葉遊びなんですが、うまく行きませんでした(ダメじゃん) でも冗談抜きにして、雪の中にいる有希はなかなかに綺麗だと思うんですけどどうでしょう? 彼女は春生まれですけど、冬の方があうような気がする。 つか、雪が似合う。 私の中の有希のイメージは雪なのかもね(全部平仮名にするとわけわかりません)(笑) 真っ白で。綺麗で。全てを包み込む。 時に厳しく時に優しく。こんな感じでしょうか。 |