[[[ 伝えたい言葉 ]]]








「三上先輩――――っっ!!」




遠くから聞こえる聞き覚えのある声はさらりと無視をして。
自販機で飲み物を買い終えた三上は、何食わぬ顔でその場を離れた。
後ろからの呼び声はだんだん大きくなり、走る音が聞こえたりもするけれど、当然の如く無視。
別段第六感を信じているわけでもないのだけれど、今ここで振り向くのはとてつもなく嫌な予感がする。

しかし、そんなあからさまな無視でも、相手には効かなかったらしく。






「三上先輩、三上先輩、三上先輩、三上先輩、三上先輩、三上先輩―――っっ!!!!」



「っるせぇんだよお前はぁ――――!!!」






しつこくすぐ後ろで自分の名を呼びつづける相手に、
とうとう三上の怒りのメーターは振りきれ、彼はついにくるりと後ろを振りかえり、
その相手―予想通りの人間、藤代を怒鳴りつけた。





「ひどいっスよ先輩。無視することないじゃないっすかー」


「うるせー。俺にはお前の相手する理由がないんだよ」


「いーじゃないですか別にー。あ、それで。手紙きましたか?」


「――――あ?」





わくわく。と、例えて言うなら懐く犬の目をキラキラさせながら言った藤代に、
三上は少しためて―少し拍子の抜けたような声を発した。

期待に満ちた藤代の瞳が、その反応を見て心底残念そうに沈んだ。
そして、三上がそれが何のことなのかを問う暇も与えずに、いつもの、気の緩むような笑顔を浮かべ、





「じゃあ、手紙きたらなんて書いてたか教えてください!んじゃ!!」





と言って、風のように消えていった。












「―――なんだ、あいつ」




数秒ぽかんと、藤代の不可解な行動に呆気にとられてから、
気にするだけ無駄だと思い直して、三上は部屋の扉を開けた。
余計な時間を食ったといわんばかりに重々しいため息をついて、そのままベッドに倒れ込む。
そういえば、そろそろ寮の夕食の時間ではないのか。と気付き、
顔の位置をずらして、机の上の時計に目をやり。


そして見つけた。見なれぬ封筒。





「・・・・・・?」





がばっ、とベッドから体を起こして、腕を伸ばしてそれを掴む。

確かに朝にはなかったもの。
差出人の名前は書かれていないが、宛名は確かに自分の名前だ。
となると、これは自分宛てへの手紙ということになる。が。





「こんな字書くヤツなんていたか・・・・?」





そもそも、手紙などを送ってくるような知り合いすらもそう居ない。
家族からなら電話の方がずっと早い。それはもちろん、他にも言えることなのだが。


ふくらむ不信感を抑えつつ、ぴりぴりと封筒の端を切る。
中からは二つ折りにされた便箋が出てきて、中の字もやはり、綺麗だった。





ぼす。ともう1度ベッドに倒れ込んで、軽くその文面を目で追う。
追っているうち、彼特有の笑みが、徐々に浮かんでいった。





















三上さんへ



突然手紙なんて書いてすみません。小島です。

この前は、傘ありがとうございました。
おかげで荷物も無事に濡れずに済みました。
三上さんは、風邪とか引きませんでしたか?

本当なら、すぐにでも傘返しに行きたかったんですけど、
さすがに他校に簡単に行くわけにいかなくて、ずっと持ったままです。
でもせめて、ちゃんとお礼が言いたくて、この手紙を書いています。

寮の住所は、風祭経由で藤代に聞きました。
彼にも、「ありがとう」って言っておいてください。

傘は、そのうち。三上さんに忘れられる前には返したいと思ってます。
最悪、風祭に頼んで藤代に預けてもらうつもりです。

本当に、ありがとうございました。
三上さんも、サッカー頑張ってください。



小島有希






















P.S.


藤代が、ついでにって誕生日教えてくれたので、ちょうどその日に届くように投函します。




















2枚目へ便箋をめくり、少し目で追ってから、三上は勢い良く起きあがり、
そして部屋の扉を開けて、いないとは思いつつも藤代の姿を探した。
やはりそこには藤代の姿はなくて、突然開いた扉に驚いた廊下にいた寮の仲間が、
びっくりした表情で三上を見つめていた。





まあ、いい。言うだけならいつでも出来る。
そのうち、嫌でも会うんだからな。





そう思って、今度は椅子腰掛けて、もう1度手紙を読み直した。























P.S.


藤代が、ついでにって誕生日教えてくれたので、ちょうどその日に届くように投函します。
だから、誕生日おめでとう。
傘のお返しもかねて、いつかお祝いしたいと思ってます。
もし、今度また偶然会えたら、そのときは。










精一杯のおめでとう、言わせてください。










































「おい藤代。おまえ桜上水行きたいよな。行くよな。よし、行け」


「へ?な、何ですか三上先輩いきなり!」


「で、俺も連れてけ」


「だから何でスかー!!!」








偶然なんて待ってられない。
事は、早い方がいい。
相手に遠慮があるなら、こっちが動くまでだ。





再会の日は遠くない。






FIN


えー・・・あー・・・・うー・・・・。
ごめん、好きだわ三上先輩(爆死)
ヤバイです。ヤバイです。只今stmimiの中で三上有希波が来ております(なんだそりゃ)
あいったー。大した内容でもないのにこの作品が1周年の企画の中で一番好きだよ(笑)
内容的にはすっげ寒いですけどね(爆)

三上有希はむしろ有希→三上で!
徐々に三上氏が落ちていったら最高です!(笑)
てゆーか面白いんだよ三上有希!!(暴露(笑))

今回友情出演藤代氏。水風での烈火並にオイシイ役取りです(笑)
ありがとう。君は使いやすい(笑)
そんでもって1つ謎を暴露。
ナゼにどうして有希嬢からの手紙は三上の机上にあったのか(爆)
親切な同室さんが持ってきてくれたのだとstmimiは信じてます(おい)

ちなみに。今回ので傘シリーズは終了なり(笑)
・・・・これがちゃんと本当になってくれることを祈りマス。
突発でまた続きが書きたくなる事がないことを祈りマス(おい)



モドル