少しだけ少しだけ遠回りして。

いつもと違う、今日を作ろうか。









[
[[ 遠回り ]]]









「刺激に乏しいですわね・・・」



和やかな午後の日。
片手にティーカップ。テーブルの上に小さなお菓子。

そんな部屋の中で、セリーヌが、ため息混じりにそう言った。




「何か言いましたか?セリーヌさん」

「毎日毎日つまらない、って言ったんですわ」




丸いテーブルの向かいに座るアシュトンに、もう一度、さぞ悲しそうに言い直して、
また、セリーヌがため息をついた。



場所はマーズの村。
すべてが終わって、平和を取り戻したこの国に。
今、彼女を満足させるようなお祭り事も、大事件も存在しない。

大好きなトレジャーハントに出かければいいのだけれども、
帰ったばかりでまたすぐに出かける・・というのも何だか気が引ける。



だからといって、ここまで平和すぎるというのも、結構辛いことなのである。




「先日のトレジャーハントも不作でしたし。新しい情報も入ってきませんし。
毎日毎日やる事もなくて、本当につまらないと思いませんこと?」

「え・・・そうかなぁ?僕はこのほうがいいですけど」




そう言って、アシュトンがまだ湯気の立つお茶をこくりと飲み込んだ。

元来。のんびりとした性格の彼には、確かに今のほうが良いのかもしれないが・・。




「何か、変わった事でもあればいいですのに」



そう言ってまた、はぁ、とため息をついた。









毎日毎日、穏やかなときが流れて。

平和な、時間が流れて。

人々は笑い合って。何事もなく暮らしている。



だからこそ、変化に乏しくて。刺激が少なくて。

毎日、同じような行動を繰り返すしかない。



そんなの、つまらない。









心の底から不満そうな表情を浮かべたまま、お茶を口に運ぶセリーヌを見て、
少しだけ困ったような顔をして、それからちらりと時計を見てから。

すっくと、アシュトンが立ちあがった。








「セリーヌさん、買い物行きませんか?」

「買い物・・って、夕食の?もうそんな時間ですの?」

「え?えーっと・・・・。ほら、やる事もないですし」

「・・・それもそうですわね」







カチャリと小さな音を立ててカップを置き、セリーヌも立ちあがる。
扉を空けて外に出ると、太陽の光がやけにまぶしく思えた。




「ねぇ、アシュトン。今日の夕食、何にするつもりですの?」




そう言って、後から出てきたアシュトンを振りかえる。が。


彼が進もうとしていた方向は、店とは全く逆の方向だったりした。






「・・・ちょっと、アシュトン!そっちはお店とは逆方向ですわよ?」

「うん、だから。ちょっと遠回りして行きませんか?」

「え?」








「毎日変化がなくて、つまんないって言ったよね」






そう言って、にこやかに笑って、セリーヌの腕を掴んだ。






「だから、いつもと違う道通って行こうよ」







いつもと同じ道を通って、いつものように店に行くのが、一番近い。


けれど、それだとまた、同じ毎日を過ごす事になるから。






だから、今日は。







「・・・子供みたいな考え方ですわね」




呟くように言ったセリーヌの言葉に、叱られた子犬のような表情を浮かべたアシュトンを見て、
セリーヌが、くすりと笑って、歩き出した。




「でも」




いつもとは、違う道を。






「折角だから、遠回りして行きましょうか」





そう言って、嬉しそうな顔をしたアシュトンを見て、また笑って。
遠回りをして、店とは逆の方向へ、足を進ませた。













変わらない毎日だなんて、そんな風に思っていても。

そんな風に、『毎日』を変えていないのは、自分だったりするのです。

だから今日は少しだけ、遠回りしていきましょうか。



少しだけ違う、『今日』を作るために。





FIN.


アシュセリです。案外あっさり書けてしまいました。

何でアシュトンがマーズの村にいるのかとか。
なんか話し方明らかにおかしいだろとか。
つーか、マーズの村って遠回りできるほど広かったかとか。

思う事はたくさんあるでしょうけど。
お願い見逃して(爆)

なんつーか、こんなほのぼのな2人が書きつづけられたらいいなぁ・・(願望かい)
姐さん女房になるのはしょうがないことだとしても(しょうがないんか)
アシュトンも、ほどほど強引に育ってくれるように・・・・(おい)

ところで。
無理矢理にでもアシュセリを確立させようとするには。
やっぱりアシュトンはマーズに定住させるしかないのでしょうか?(笑)



モドル