[[[ 幸福隣接論 ]]]







「こーゆーのも、『シアワセ』なのかね?」





冗談めかしてそう言うと、貴方は無言でちらりと私の方を見た。
いきなり何を言い出すのか、とでも言いたそうな視線に、
何でも無いよ、と答えて、また、手元のものに視線を移す。

手にあるのは、珍しく手に取った、普段貴方が読むような分厚い本。
絶対読めるはずがない。と言われたのに腹が立って、絶対読んでやる。と宣言したものの、
今はもう、いかに時間をかけて読んだフリをするかに考えを集中してしまっている。完敗。
こんな文字の小さくて分厚くて挿絵の少ない本の、どこが楽しいんだろう
・・・なんて言うと、作者に失礼だね、やっぱり。



音の無い静かな部屋に、一定の間隔でページをめくられる私の本の音が、時折響く。


きっと貴方は、私がもうギブアップしてることを知ってて、
後で中身の感想なんか聞いてくるんだろうな。なんて考える。
わかってて聞いてくるんだから、それほどタチの悪いものはない。

必ずついてくる嫌味な笑顔がすぐに浮かんでくるあたり、やっぱり勝てないんだな。と思う。




でも、そんなところも、嫌いじゃなかった。













「あのねー、みーちゃん」




私の後ろに居る貴方の背中にもたれかかって、わざと必要以上に体重をかけてやる。
言葉では何も言わないけど、目で止めろと言ってるのを気付かないフリをして、
手に持っていた、意味のない本を置く。












「みーちゃんはイジワルだ」








完全に不意を打たれたのか、間抜けな顔をする貴方を見て、軽く笑ってやる。
少し経って、いつも以上に不機嫌な顔になったのを確認して、さらに言ってやる。




「で、全然私の相手してくれない。ケチ」




2発目は不発だったか、あんまりダメージもなかったらしく、いつもみたいに涼しい顔。
これに、今度は私が少し膨れて、目一杯背中にもたれかかってやった。




「でも」




さすがに私が辛かったので、ラクな体勢に戻す。
軽く膝を抱えこんで、こつんとつま先に当たった本をもっと遠くに滑らせて、膝に顔を埋めた。















でも、ね。















「本当は優しいとことか」

「勝手に来ても文句言わないとことか」

「すぐ照れるとことか」

「時々子供っぽとことか」









そーゆーとこ、好きだよ。







静かに呟いてみると、固まってるのかなんなのか、無反応。
今前に回り込んで顔見たら、結構面白い事になってるんだろうな。なんて考えて、また笑ってやる。

そんな、何でも無い貴方の動作が、時折見せる優しさが、ちょっとした考え方が。
こうやって背中合わせで居ることが、背中で貴方を感じることが。
全部全部好きだから。



だから、部屋の中でたった2人で、共にあるという現実だけで。



こんなにも幸せになれるんです。




FIN.


こーゆー雰囲気好きなのですわー。
あとね、なんかズレてるんだけど。私の中のみーふー像は。

背中合わせ。

なのです(謎)

顔見なくても何考えてるのかわかって、話さなくても気持ちがわかる。
傍にいるってだけで、安心できる。等々。
そんな感じで(わからんよ)

つーか。これって幸せになるのかいねー・・・?(大問題)


モドル