「うわあ・・・・!」



扉をくぐるなり飛び込んできた光景に、
思わずまゆらが感嘆の声を上げた。


場所は雑居ビル3階。
窓にはでかでかと書かれた『貸し衣装』の文字。

『1度言ってみたかった』というまゆらの意思で半ば強引に連れてこられたその店は、種類豊富、の宣伝文句の通り、品揃えはなかなかのものらしい。
そう広くは無い部屋は、申し訳程度の人の通り道と試着室以外のスペースが、全て洋服で埋め尽くされている。

和服。洋服。チャイナ服。礼服に喪服。
一体誰が着るのかは定かではないが、童話のお姫様が着ていそうなドレスまであったりする。


呼吸困難でも起こしそうだ。
洋服で埋め尽くされた部屋の中、
はしゃぐまゆらを尻目に、ロキが小さくため息をついた。





「まゆら。あんまりはしゃぐとこけるよ」



すでにたくさんの洋服達を手にとっては返し、返しては手に取るというはしゃぎっぷりを披露しているまゆらにそう言う。
しかし、返ってくるのは気のない生返事。
全神経はすでに前方の洋服にいってしまっているらしい。
ミステリー好きとは言えやはり彼女も女の子。
洋服を見る事は、楽しくて仕方ないのだろう。



「何があんなに楽しいんだか・・・」

「まあそう言うなよロキ。
大堂寺が楽しんでんだからそれでいいじゃねーか」



ため息をつくロキの横から、機嫌良さげに鳴神が言った。
彼のそんな機嫌の良さすらもなんだか疎ましくて、
わざとらしいため息をついて、ロキが答える。



「そりゃ、ナルカミ君はそれでいいだろうね。
これに付き合うだけで、後でお茶を奢ってもらえるんだから」

「ま、そーゆーこったな」

「・・・・・・これが神の末路かと思うと泣けてくるよ」

「食えるときに食う。サバイバルの鉄則だろ」

「どんな生活送ってるんだよ君は・・・・」


「ロっキくーんっ!見て見てー、これなんかどう?」



楽に想像できる旧友の貧しい生活の涙を誘う哀れさに目頭を抑えたとき、何やら白いドレスらしきものを抱えたまゆらから声がかかった。
それに気付いて目をやると、そこにはいかにも楽しそうな彼女と、腕を組んで何やら考え込んでいる光太郎の姿。
ちなみに彼は、ばったり道で出くわして、『面白そうだから』といってついてきた愉快犯(語弊)だったりする。



「いや、待て大堂寺。
どっちかって言うと、こっちの方が良くないか」

「えーそうかなー?光太郎くんはこっちの方が好きなの?」

「下手に派手なのよりはな」

「うーん・・・・」



差し出されたものと、自分が手に取ったもの。
その2つを見比べて、困ったようにまゆらがうなる。
自分が気に入ったものも捨て難いけれど、光太郎のセンスは確かなものだ。
どちらにしようかと数秒唸り続けていると、
見かねたロキが、一言。



「別に急いでるわけじゃないんだから、両方着たら?」

「あ、そっか。そうだよね!」



即時解決。
ロキのつるの一声で悩みの解消したまゆらは、とりあえず自分が手に取ったほうから着てみることにしたらしい。
着替えるべく試着室へ足を進めて――くるり、振り返った。



「ねえ、光太郎くん。
せっかくだから光太郎くんもこれ着てよ。
それで、一緒に写真撮ろう!」

「ああ、俺は別にいいけどな」

「やったぁ!じゃあ、光太郎くんも早く着替えてね!」



そう言って、上機嫌でまゆらが試着室へと消えていった。
嵐が去った、といわんばかりの静けさが部屋に漂う。



「さて。じゃ、俺も着替えるか」

「付き合いいいねー、光ちゃん」

「性分だからな。探偵も何か着りゃいいじゃねえか。
着るだけならタダだぜ」

「僕は遠慮しとくよ」

「そうか?後で後悔しても知らねえぜ」

「それってどういう・・・・」



どういう意味?という言葉は、全て言い終わらぬうちに
意味ありげな光太郎の笑みにかき消されてしまった。
そのうちわかるって、とまたも意味深な言葉を残して光太郎も試着室へ消えていく。
残ったのは、ロキと鳴神のみ。



「ナルカミくんは?何か着ないの?」

「興味ねえな」

「この後お茶するのだけが楽しみだもんねー」

「なんだ、わかってんじゃねえか」

「なんだかなあ・・・・・」

「そいや、大堂寺のやつ一体何着るんだろうな」

「さあね。
まゆらのことだし、何かしらミステリー絡みだと思うけど」

「垣ノ内もか?」

「・・・・そっか、光ちゃんもお揃いで着るんだっけ」



まゆらならともかく、あの光太郎がミステリーな洋服をおいそれを身に纏うとは到底思えない。
いくら付き合いがいいとは言え、さすがに遠慮するだろう。
となると一体何に着替えようというのだろう。



「・・・・ま、どうでもいいか」

「それもそうだな」



実に張り合いのない相手である。

そうこうしているうちに、先に試着室へ入ったまゆらの着替えが完了したらしい。
それまでは出てこなかったが、奥に居たらしい店員と何やら話をしている声が聞こえる。
話し声がだんだんとこちらに近付いてきて―――。

白いドレスの裾が、角から覗いた。





「じゃーんっ!花嫁まゆらちゃーん!!」



少し丈の長い裾を引き摺って、彼女は笑顔で姿を見せた。

純白のドレス。
控え目なブーケ。
先ほどとは足音すら違うところを見ると、
靴もヒールか何かを借りたのだろう。
軽く化粧を施した頬が、うっすらと紅く染まっている。



「えへへー、実は1回着てみたかったんだよねー」

「お似合いですよ」



まゆらの隣でドレスを裾を持ち上げていた店員らしき女性が、嬉しそうに笑うまゆらにそう言った。
ありがとうございます、と照れ笑いを浮かべながら礼を言って、もう1度ロキ達の方を向く。



「ね、似合う?ロキくん!!」

「・・・・ま、あ。悪くはないんじゃない。
馬子にも衣装って感じ」

「んもー、もっとちゃんと褒めてよー。
ね、ね、鳴神くんは?」

「おう、似合ってるぜ、大堂寺。猫に小判って感じだな」

「うわーい。ありがとー」



何でそこで喜ぶんだ。

微妙に何かがおかしい彼らに、いつもならそんなつっこみが入るはずなのに、今日に限ってそれがない。
その代わり、呆然と純白のドレスに身を包んだまゆらを見上げ、言葉をなくすロキの姿がそこにあった。


純白のドレス。控え目なブーケ。
少しだけ高いヒール。軽く化粧を施した頬に浮かぶ、笑顔。

馬子にも衣装だなんてとんでもない。
本物の花嫁にも見紛うほどに彼女は―――。




「どうだ探偵。ちょっと後悔したか」

「・・・・・光ちゃん」



後ろからの楽しげな声に振り返る。
そこにあったのは、白いタキシードを身に纏う光太郎の姿。
なるほど、花嫁の対となるのは、やはり花婿ということか。



「似合うね、光ちゃん」

「まあな。探偵も、そろそろ着たくなってきただろ?」

「べっつに」

「なんだよ連れねえなあ」


「あ、光太郎くんも着替えたんだ!」



光太郎の存在に気付いたまゆらが、歩きにくそうに危なっかしく近付いてくる。
傍で店員が、今にも裾を踏みそうな彼女を心配そうに見ているのもおかまいなし。



「やっぱり似合うねー。さっすがあ!」

「そっちも結構似合ってるな」

「えへへ、ありがとー」



素直な賞賛の言葉に、まゆらが更に頬を染めた。



「じゃあ、早速写真を撮ろう!」

「大堂寺、先に一人で撮れよ」

「えー、なんでー?
一緒に写ってくれるんじゃなかったの?」

「さっき俺が選んだやつ着たら、一緒に撮ってやるよ」

「あ、そっか。もう一着あったんだっけ」

「そゆこと」

「んー、でもなー。何枚も写真撮るお金なんてないし・・・」

「撮らないのか?もったいない」

「女子高生のお小遣い事情は厳しいのだ。
残念だけど、このドレスは本番までおあずけってことで」

「いっそのこと、このまま教会行ってやるか?本番」

「あはは。やだなー、光太郎くんてば」



光太郎の言葉にまゆらが軽く手を振って笑った。
言っている本人も、言われている本人も、もちろんそれが冗談だとわかっての行動なのでさしたる問題はない。
が、問題があるとすれば、その言葉を発した当人が、言った後にロキに向けて浮かべた、にやりとした笑みであって。


あからさまに、挑発している。
それがわかるからこそ、人の思い通りにはなりたくないという思いが働いて、ロキは興味無いと言わんばかりにそっぽを向いた。



「本番つっても、大堂寺は家が神社だろ。
ウェディングドレスなんて着れんのか?」

「うーん、どうだろ・・・・」

「それ以前に、相手がいるかどうかが問題だな」

「あ、光太郎くんヒドイっ!!」

「まーまー、抑えろ大堂寺。
この際教会でもどこでも早く行ってとっとと写真撮って来い。
んで、さっさとお茶しに行こうぜい」

「もう。鳴神くんはそればっかり・・・。
だいたい、この近所って教会なんてあるの?」

「探せばあるだろ、どこだって」

「それじゃあダメじゃない。
もういいよ、私着替えてくるから・・・」

「そんなこと言って。
どうせなら教会で写真撮りたいのが本音だろ」

「それはそうだけど・・・・・」

「よしっ。じゃあ決まりだな。
早く教会探して写真撮ってくれ!」

「探したとしても、この格好で外出るのー?」

「タクシーか何か呼べばいいんだろ」

「タクシーかあ・・・・。ねえ、ロキくんはどう思う?」



すっかり3人で盛り上がっていたため、カヤの外に追いやられていたロキに、まゆらが問いかける。
思いも寄らない突然の問いかけに、話は聞いていたものの、ロキが戸惑う。


せっかくのウェディングドレス。
また着れるかどうかわからない。
写真に撮りたい。
どうせなら教会で撮りたい。
この格好で外はうろつけない。
タクシーか何かを呼ぶ。

だんだんと大きく、そして細かくなっていく彼らの計画。


3人のうち1人はただ単にこの後に待ち構えるティータイムを待ち望んでいるだけで、別の1人はロキの反応を楽しんでいるだけ。


となれば、実現性の低いこの計画に、かける言葉は限られている。


@勝手にすれば
A知らないよ
Bどーでもいいんじゃない?


実に簡単な選択肢である。


でも。


3人のうち1人は。確実に本気で悩んでいて。
心から、彼の答えを待っている。


教会でウェディングドレス。
それが仮初のものでも、写真に写せば一生残るモノ。
白いドレスを身に包み。隣の誰かに向かって、微笑む。








―――冗談じゃない。
















「・・・・・こっちの方が似合いそうだよ、まゆらには」


「―――――ふえ?」




適当に、そばにあった服を掴んで、押しつけた。



「いくらまゆらの家が神社だからって、
教会で結婚式しちゃいけないって決まってるわけじゃなし。
相手だって、探せばいいだけのことじゃない。
今からそんなもの着て写真撮る必要、ないと僕は思うけど」

「そうかなあ・・・・?」

「そうだよ」

「それで、この服?」



そう言って、ロキが渡した服を見て首を傾げる。

手に取ったときは気付かなかったのだが、それは童話のお姫様をイメージしたとも思われるようなえらく可愛らしいドレスで、劇か何かでしか着ないであろう代物だった。

これが自分に似合うのだろうか。
明らかに当惑しているまゆらの表情。



「え、や、あの。
せっかくだし、普段なかなか着ないものを着てみるべきじゃないかなーと・・・・」

「そっか。それもそうだね」

「そうそう」

「じゃあ、ロキくんこれ着てねv」

「・・・・・・え?」



そして手渡される、ひとつの衣装。



「・・・・・・これは?」

「小人の衣装だよ」

「小人・・・・・?」

「だってこれ、白雪姫の衣装でしょ?
せっかくだもん、ロキくん一緒に写真撮ろうよ!」

「いや、僕は遠慮して・・・・」

「ダーメ。もう決めたの」



そう言って、くるりと踵を返してまゆらがもう1度試着室へと消えていった。

残されたのは、衣装を手に呆然と佇むロキと、にやにや笑う光太郎と、用事が早々に済む事を切に願う鳴神の3人。



「何笑ってんの、光ちゃん」

「いやー?下手なヤキモチだよなーと思ってな」

「誰がヤキモチなんか・・・・」

「そういうことにしといてやるか。じゃ、俺も着替えるかね」

「僕も着替えなくちゃなんないのかな・・・・」

「自業自得だな」

「うるさいよ」



すっかりと相手の策にはまってしまったことが悔しくて、
自分で掘った墓穴に落ちた事が悔しくて、
憎まれ口を叩きながら、ロキも試着室へと消えていった。





FIN.


魔ロキ2作目。早過ぎ。
どことなくロキ→まゆ風味?
もうちょっと甘いのが書いてみたい・・!
ああ、でもバカバカしいことで争う彼らも好きだ・・・!(帰って来い)
またも、下にアニメ感想があったりする。
つか、アニメ感想が書きたいがために小説書くのやめなさいね、自分(死)

 

☆魔ロキアニメ感想☆
(反転)

『ドラキュラの罠』?とかいうやつ。ロ キ さ ま 冷 め す ぎ ! 何!?あの人生に疲れた感漂う素っ気無さは!?原作ではもうちょっと子供っぽさ溢れてなかったか!?機械嫌いとか言いながら、ノリノリでゲームしてなかったか?(死)つーか、ロキと光ちゃんもうちょい仲良しだったと思うんだけど・・・・。レイヤにだけ優しいロキは何だか世知辛いなあ・・・。まゆらにしたって光太郎にしたって、もうちょい愛ある対応があったと思うんだ。冷めてる。冷めてるよロキさま。つーか、あのゲームセンター照明暗すぎだろ(言うな)んで。ゲームの中に入っちゃったまゆらと光太郎とロキですが。ロキよ・・・・・。おまえ、「レイヤを撃つなんて出来ないよ」とか言ってたけど、息子は問答無用で撃ってましたやん。極度の親バカが君の魅力だと思ってたのに・・・・!所詮家族よりも女を取るというのか・・・?(嫌な響きだ)にしても、バーチャルでもやっぱり通販マニアっぽい闇野さんは可愛かったなあ・・・(笑)ナルカミくんも結構あの衣装似合ってたと私は思う。そして、そして・・・!ヘ イ ム ダ ル !(笑)あんたサイコー!ちゃぶ台返しサイコ−!!(爆笑)すっかりボケキャラだNE☆あーもう、可愛いなあ!(笑)フレイの空回りっぷりもやはり愛しい。それでこそ君達だ(その定義は間違ってる)花嫁姿で登場したまゆらさんは、無表情なのがひたすら怖かったです。せっかくあんな格好してるんだから、笑顔で迎えてそこの人生に疲れた少年の未来に光を灯してやってくれよ(何の話をしている)ロキまゆが原作でも見れない変わりに、ひょんなところで光まゆを見てしまいましたよ。結婚式かー。続けてくれても問題なかったのに(大アリだ)あ、でも。操られて襲いかかってくるまゆらに攻撃できなかったのはちょっと嬉しかった!すっげえ、些細で泣けるけどネ!(泣)あー、世知辛いなあ・・・・・!  本日のまとめ。ロキさまは、レイヤは好きでもフレイヤは苦手らしい。姿形で女の子を判断しちゃいかんよ(それとこれとは話が違う)

ぷりーずぶらうざばっく