暖かな夢を見ていた。

頬を伝う涙の熱さで目を覚ました。
目を開くと見える、見なれた天井。
自分自身で作り上げた自分の城。

居心地の良い部屋。
ぬくもりの残る布団。
朝日の差し込む窓辺。

その中にひとつ、不似合いな涙の痕。

何もない。ただ、夢を見ていた。






::ウタカタ







どうぞ、と行って差し出されたカップは、
手を出すより先に目の前の机の上に置かれてしまった。
行き場のない、浮いた両手。
ありがとう、と小さく礼を言いながら、
不自然にならないようにもう1度膝の上にそれを置いた。

置かれたばかりのカップの湖面は、小さな波と共に湯気を立てる。
カップを持ち上げて両手で包むと、両手一杯に広がる暖かさ。
しばらく、手の中で揺れる湖面を眺めていた。

覗き込む。自分が映る。
映っているのは光の消えた瞳。



「どうかしましたか?」



いつまでもカップを口に運ぶ気配のないまゆらに、
闇野が恐る恐ると声をかけた。
なんでもないですよ、顔を上げて答えた。
にこりと作り上げられた笑顔は力無く、綺麗だった。


本当になんでもないんです。嘘じゃないです。
ただ、あんまり暖かすぎるから、つい思い出してしまうだけ。



「全く。まゆらは嘘が上手だねえ」



ずっと椅子に座ったまま外を眺めていたロキが、
そこで突然声を上げた。
皮肉を込めた声で、からかうように笑ってそう言う。


意地悪だ。
そんな風に同じ笑顔で笑うから、私はあの夢を忘れられない。




「嘘じゃないよ?」

「どこらへんが?」

「全部」

「全部嘘なくせに」

「どこが嘘だって言うのー?」

「全部」

「何よそれー」



バカバカしい不毛なやりとりが数回続いて、
堪えきれないようにロキが小さく吹き出した。
つられて、まゆらも笑い出す。
傍らで寝ていた犬がひとつ、欠伸をした。

暖かな、居心地の良い場所。



「で、何があったの」

「・・・・・・」

「この期に及んでまだ『何でも無い』とか言う気じゃないよね?」

「たまには騙されてくれてもいいと思わない?」

「まゆらの嘘は上手すぎるからねえ」



そう言ってまた、くつくつと笑った。
過ぎたるは尚及ばざるが如し、とでも言いたいのだろうか。
ロキが『上手過ぎる』と評する彼女の嘘は、
違和感で覆われた分かり易さを帯びている。
知らない人間ならそのまま流してしまう何気ない動作ひとつが、
見知った人間にとってみれば違和感と成り得る。



「わかってて知らん振りするのも優しさだと思うよ?」

「御託はいいからとっととわけを言う」



ずず、とお茶を啜りながら手をひらひらと振る。
取りつく島もない、というのとは少し違うかもしれないが、
何を言っても無駄、という点では同じ。



「上手過ぎない嘘ってどんなのかなあ?」

「話題を変えようとしてもダメ。――スピカ」



ふと、ロキの視線が上がって、
扉から顔を覗かせていたスピカに合わせた。
すっかり空になったカップを持ち上げて、
無言のうちにお代わりの要求。
スピカの方も無言で頷いて、
ぱたぱたと音を立ててキッチンへと向かって行った。

無言の会話。
一番簡単で、一番難しいコミュニケーション。



「夫婦みたいだね」

「んなっ!?」

「あはは。ロキ君が慌ててる。おもしろーい」

「まゆら!!」



怒った様にロキが机に手をついた。
そんなことはお構いなしに、まゆらはひたすら笑い続ける。
一向に止む気配のない笑い声に気を悪くしたのか、
ロキがむくれて、乱暴に椅子に座りなおした。



「まゆら。往生際が悪いよ」

「ロキ君ともだけど、闇野さんとスピカちゃんも絵になるよね。
親子って言うか何ていうか・・・・」

「ま・ゆ・ら?」

「ワンちゃんとも仲良しだよねー、スピカちゃんて」

「まゆらさーん?」

「皆、スピカちゃんのこと好きなんだね」



だから、輪の中心にいるのはあの子。



「私も好きなのになー・・・」



好きなのに、『絵になる風景』を、作れた事が無い。



「・・・・まさかそれ?落ち込んでる原因て」

「ううん。違う・・・・と思う。うん、違うよ」



眉をひそめていったロキに、少し考えてから、
まゆらが大きく首を横に振った。
直接の原因はそれではないから。
例え、原因の原因がそれであったとしても。



「じゃあ、何」



いい加減呆れたようにロキが言った。
まゆらが、ついと顔を伏せた。



「・・・・・夢見が悪いの」

「夢?」

「夢を見るの」

「怖い夢?」

「ううん。良い夢」

「まゆら。言ってる事が矛盾しとるぞ」

「してないよ」

「夢見が悪いってのは、
普通悪い夢を見たときに使う言葉であってー・・・」

「でも、良い夢なの」



強い口調で、そう言い切った。




唐突に始まる夢に脈絡はなくて、
場所はいつもどこかわからないところ。
空の色も不確かで、まわりを形作る世界も、全て不安定。

ただ確かなことは、始まりはいつも独りだということ。


目の前に、誰かいる。

長い黒髪が見えた。ああ、闇野さんだ。
あそこの木刀を持った学生服は、鳴神くん。
可愛い笑顔を浮かべているのはレイヤちゃん。

まだまだ、たくさん。
遠くで笑っている。私の大好きな人達。

見つけた事が嬉しくて、走り出す。
いろんな人の笑顔を見ながら走って、走って。


辿りついた先で見つける、向こうを向いたロキ君。
振り返り、まゆら、と音の無い声で私を呼んで、
笑顔で手を差し出して。






そこでお終い。








「幸せな夢なの」



大好きな人達の笑顔に囲まれた暖かな夢。



「でも、悲しい夢なの」



手を取るより先に暗転する世界。
あと数p、届かない手。

頬を伝う涙。見なれた天井。
幸せで残酷な夢を見た日は、いつもそうして目を覚ます。


届かない手。
ワケも無く襲う悲しみ。
そして気付く。



疎外感。









居心地の良いこの場所が、遠くなったのはいつだっただろう?











きい、と音を立ててドアが開いた。
2つカップの乗ったトレイを持ったスピカが、おずおずと顔を出した。
続いてその後ろから、闇野も顔を出す。



「ああ、ありがとう、スピカ」

「ロキ様。ケーキはいかがですか?」

「ありがとう、貰うよ」

「わんっ!」

「フェンリル?・・・・ああ、そろそろ散歩の時間かな」



どやどやと一気に人の増えた部屋に、
先ほどまでとは打って変わって賑やかな空気が流れ込んだ。
目の前で繰り広げられる和やかな団欒風景を、
少し細めた目で見つめていた。


夢を見る。
大好きな人達の笑顔に囲まれる夢。
今と同じように、笑顔の溢れる夢。
他の誰かに注がれる、大好きな人達の笑顔。
届かない、手。







そこは和やかで暖かな、居心地の良い場所。

居心地の、良かった場所。





FIN?


暗い。
ラグナロク最初の方?
つーか、ラグナロクは辛くて私、見てられません。
まゆらの影が、薄すぎる(落涙)
疎外感とかやってられん。君が中心にいない魔ロキは寂しすぎる(本気)

この作品はまゆ→ロキっぽいですが、私はロキ→まゆが好きなんですよ。
原作やアニメで、もうちょいそういうシーンが欲しい。
1冊に1コマ。1話に1シーンあるだけで、stmimiは元気を取り戻すのに。
いーじーわーるーだー・・・・・・(黙れ)

というわけで、アニメのロキレイ具合に対抗してみたstmimiの散文でした。
悲しい抵抗だったわ・・・・・・(遠い目)


↓魔ロキアニメ感想(反転)↓
(改行してないのでウザイやも)

『恋する転校生』とかいうお話。フレイが出てくるので、まゆらが目立つというのはもはや確定事項(そうなのか)だから、私すっごく期待してたんですよ。マジで期待してたんですよ。ロキとまゆらの絡み!!それなのに・・・・それなのに・・・・・・・・!!(握りこぶし)1度も会話シーンがないって何ソレ!?回想シーンで会話したっぽいのが出てたけどさ!直接しゃべってたわけじゃないじゃん?(しかも素っ気無かったし!)あんなのアリかよ!?そんなに私を敵に回したいのか!?(何でだよ)すっかり暗くなった公園で、たいやきを差し出すフレイの後ろでロキが二人の様子を伺ってたところはちょっと萌えたけどさ!(笑)他はどうよ?私、今回のでフレイの好感度ぐぐんと上がったぞ!(マジ)ひたすら一途に大和撫子に尽くす姿に思わず感涙だよ!あんな嘘くさい偽名使ってまで転校してくる行動力はあるくせに、ファーストネームひとつ呼べないへたれ具合に落涙だよ!(笑)公園でまゆらを慰める姿とか、船(←名前忘れた)でお地蔵様と闘ってる姿とか。突然出てきて魔女っ子も真っ青な方法で魔落とし(?)したロキよりずっとカッコ良かったし!フレイ・・・・・・(あの明らかにおかしな口調を差し引いても)今日も君は輝いてたよ。本日のMVPは彼に決定ですかね(何ソレ)あ、個人的にはご丁寧にテレビの中から出てきたヘムにもあげたいなv(笑) 本日のまとめ。あの山奥にわざわざレイヤを連れてきた理由を是非聞きたい。皆勤賞でも狙っているのだろうか(違う)



ぷりーずぶらうざばっく