そら
澄み渡るあおい空に向かってうんと腕を伸ばす。
当たり前だけどそれはずっと遠くて。
伸ばしても伸ばしても、届くはずなんかなかった。
少し悪あがきがしたくなって、伸ばされた腕の先の手を、開いたり、閉じたり。
そんな様子は、端から見れば、さぞ怪しげなものなんだろうと今更に思う。
「遠いね」
思い出したように呟いて、ゆっくりと腕を下ろす。
少し離れたところで見ている貴方に、聞こえるか聞こえないかくらいの声で。
別段、聞こえなくてもいいセリフなのにちゃんと聞いてる貴方が、当たり前だとでも言いたげな視線で私を見る。
当たり前。
そんなの分かりきってること。
そんなのどうしようもないこと。
それくらい、もちろんわかってる。
でも。
「遠いね」
あの空の向こうに行けた人は、何人もいるのに。
空を飛び越えて、その先へ行った人は何人もいるのに。
でも、それは私の言ってる場所じゃないんだ。
「遠いね」
行きたいわけじゃないんだ。
ただ、本当にあるのかどうか気になっただけ。
手が届かないから。
見えないから。
本当にあるのか、気になっただけ。
そらの向こうに何があるかなんて。
ウチュウとか、タイキケンとかいう返事が欲しいんじゃないよ。
そらの向こうに何がある。ってわけじゃないことぐらい、わかってるから。
『そら』くらい遠い場所に。『ねむる』場所があるだけ。
そらほどに遠い場所へ。
そこでねむる大勢の人へ。
安らかに安らかに、ねむっているのでしょうか?
届かないとどかない。
腕を伸ばしても仕方ない場所で。
安らかな安らかな、時が流れているのでしょうか?
遠すぎる場所でねむる友へ。
安らかに安らかに、ねむっているのでしょうか。
終