ひとり。ふたり。さんにん。


指折り数えるには、簡単すぎるそんな数字に。
指を折るごとに、辛くなるのは何でだろう。













[[[ かず ]]]













「向こう・・・・戻るって、本当?」





夕焼けも姿を消した、そんな午後。
皆が帰った後の、静かな部室に一人残ったそいつに、有希が心なしか声を震わせて、聞いた。


日が落ちている所為か、嫌に静かな部屋に、更なる沈黙が落ちた。
部員が皆帰宅し、生徒も居ない。
話し声が、どこからも聞こえないことがそれを余計に深くさせる。
開け放していたドアから、時折吹く風の音だけが響いていた。


部室に1人残っていた、そいつの金髪が、その風に靡いて、少しだけ揺れた。
でも、揺れたのは髪だけで、本人は、微動だにしない。
背中を向けているから、表情も見えない。


無反応のそいつを見ていると。
何故だか、手足の力が抜けていくような感覚に襲われた。








「ねぇ・・・・どうなのよ。答えなさいよ、シゲ!」






一向に反応を見せないシゲに、有希が声を荒げて、言った。
予想以上に部屋に響いた声が、数秒耳に残って、消えていった。

けれど、やはりシゲは、振りかえりもしなかった。









また、沈黙が降りて。
どちらも、何も話さず、動かない。
ただ、時計の針の音だけが、単調に時を刻んでいた。
下校時間のとっくに過ぎた学校は、もうそろそろ、日直の先生などが見回りにくるのだろうか。

けれども、今の有希に、引く気はなかった。















しばらくして、シゲの頭が少し動き、でもやはり振り向きはしないで、言った。









「・・・・・・誰に聞いたん?」



「夕子・・・・先生」



「あかんなぁ、姐さん。口止めしといたのに。しゃべりやねんから」






まるでいつもと変わらない、心なしか低い声が響いて、また静かになった。

何か言いたいのに、言わなきゃならないのに。
有希の心がそう叫んで、でも、言葉は出てこなかった。


















「小島ちゃん」







呼びかけられて、我に帰り、はっと顔を上げる。
いつのまにかこちらを向いていたシゲの顔が見えて、目を見張った。




























「堪忍な」



















出来る事なら。いつものようにふざけた風に。
気休めでいいから。その場凌ぎの嘘でいいから。

冗談めかした笑顔で、はぐらかしてほしかった。





例えそれが無理でも、そんな悲しい笑顔は、向けないで欲しかった。








簡単な、そんな一言だけを告げて、部室を後にしようとしたシゲに、
すれ違いざまに、声を振り絞って、有希が言う。









「・・・・・・・・・帰って、くるんでしょ?」













最後に言ったその一言に、返る言葉はなくて。
代わりに、無意識だろうか伏せられた目が、何かを告げていた。
そう広くない扉ですれ違ったために、少しだけ擦れた肩が、ひどく痛かった。












ひとり。ふたり。さんにん。

よにんめを数える指を折るのに、何故こんなにも勇気がいるの?






FIN.


ずっと思ってた事。暖めてたんだけど、暗いから、書くの止めようと思ってた。
でも、なんかもう頭の中これでいっぱいになっちゃって、「こりゃ書くしかねぇな」と思ったので書いた(謎)

あいにく私は、本誌読んでないから、どーゆー経過でシゲがあーなったのか知らん。
けど、選抜いった。ってことだけは、知ってましたので。
ずっと思ってたんだよね。帰ってくるか、否か。
友人に問うてみたところ「住民権移してるだろうから戻らんだろ」といわれてしまいました。
もっとも過ぎて泣けるわ(笑・泣)

結構リキ入れて書いたコレを、敢えてゴミ箱に入れたのは、
暗いから。本誌の今後の展開が不明だから。
そして、それ以上に。

本誌の展開無視してこれからもシゲ有希を書こうと目論んでいるのに、
こんな小説表においてたら、やりにくくなるから。


です(爆死)

本当は、もっと明るめに書きたかったんだけどね。
もしそんなのが書けたら。今度こそ表に出しますか。


モドル