呪文






「ルックは、風の紋章使いだよね?」



出会い頭にそう聞くと、何を今更という顔をされた。
呆れたルックがそのまま素通りしようとするのを必死で止めて、また聞いた。



「じゃあ、風の紋章術以外で他に使えるものってある?」

「・・・・逆に聞くけど」

「なあに?」

「君は土の紋章術以外で使える紋章術はあるわけ?」

「ううん、ないよ」

「僕も一緒だよ」



素っ気無くそう言って、今度こそ私が止めるのも聞かずにルックが階段を降りていく。
その後姿を見ながら、私ははあと深くため息をついた。


このところ、私はおかしい。
話をしたり、歩いたり、普段と同じ生活をしているのに、時折ひどく胸が痛くなる。
ズキズキして、とても苦しくなるのだ。
いつもと変わらない、同じことをしてるはずなのに。




最初は病気かと思ったけれど、そうじゃなかった。
だったら、毒か何かをくらったのかなと思ったけど、それでもなかった。


それで、私は思った。これは、きっと呪いなんだ、って。


だから、ジーンさんのところに行って、事情を話して、聞いた。
人に呪いをかける紋章術はあるんですか、って。
そしたら、ジーンさんは少し悩んで、綺麗な笑顔を浮かべてこう言った。
『少なくとも、風の紋章術にそんなものはないわね』。



ジーンさんはああ言ったけど、やっぱりこれは呪いなんだと思う。
だって、私は確かに、こんなに。
ただ一緒にいるだけで、話をするだけで。
胸がズキズキして、こんなに苦しいのに。





「ミナ・・・・・どこかな」



不意に、ミナをぎゅっと抱きしめたいと思った。
このフロアにいないということは、またどこかへ行ったんだろう。
そう思って、急ぎ足で階段へ向かった。

下階へ続く階段から、足音が聞こえた。



「ルッ・・・・・ク?」

「どうせ猫を探しに行こうとしてたんだろ」

「え、うん・・・・・それはそうだけど・・・・・」

「食堂のとこにいたよ」



そう言って、抱きかかえていたミナを、私のほうへ寄越した。
ミナが私のほうへ来る瞬間、少しだけ触れた腕が熱い。



「探してくれたんだ・・・・・」

「別に・・・。たまたま見つけただけだよ」



ふん、と素っ気無くルックが言った。。
ズキズキと胸が痛む。高鳴る。息が、できない。
これはきっと、呪いなんだ。
こんな風に不意打ちで優しくなんかするから、私の呪いはいつまでたっても解けやしない。
この呪いをとく呪文が、みつからない。



「ありがとう・・・・・・・・」



ぎゅっとミナを抱いて、視線を下げたままそう言った。
胸はずっと痛んだまま。
でも、どこか暖かい気がするのは何故だろう。


私にかかった呪いは、しばらくの間解けそうもない。




FIN.
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気持ちロテルク。
長いお話が書きたいなとは思うんですが・・・。

ロッテ片思いっぽいですが、いちよう相思相愛なのですよ。
今回はやけに乙女チックでしたね、ロッテ。
天然娘も可愛いですが、たまにはこんなのもいいよね。

(2004.4.18)

ぶらうざばっく