恋しくて






乙女が虚空を見つめてため息をつけば、人はそれを恋と言う。







「今日、授業中小島さんがため息ばっかりついてたらしいんだ・・・・」



部活の休憩時間。
心配そうな顔をしてぽつりと呟いたのは、サッカーボールを抱えた風祭だった。



「誰に聞いたん?」

「水野くん。休憩に入ってから、なんか小島さんぼんやりしてるから・・・。
どうかしたのかと思って、とりあえず聞いてみたんです」

「部活中はそのような素振りは見せていなかったが?」

「うん、だからサッカーしてる間はいつも通りなんだけど・・・・」

「サッカーやめたらいきなり暗なるてわけなんやな」

「そうなんです」



言いながら、ふと向こうで座って休憩している有希に目をやる。
なるほど、ボールを追っているときに輝いた瞳はどこへやら。
今はついと顔を軽く上げ、虚空を見上げてぼんやりとしている。



「今も、たまに思い出したようにため息ついてるんだ・・・・」

「サッカーしたあてたまらんのちゃうん?」

「休憩時間が惜しいということなのかもしれんな」

「でも、それだったらあんな風に座り込んでないで、一人で自主練すると思うんだ」

「・・・・それは一理あるな」

「うん。だから僕なんだか心配で・・・」



言いながら、風祭が抱えたボールをぎゅっと抱き寄せる。
もしかして人に言えない悩みに頭を抱えているのかもしれない。
そんな心配がぐるぐると頭の中を駆け巡っていく。



「病気とかじゃないといいんだけど」

「・・・・・もしかしたらほんまに病気かもしれんで」

「どういうことだ?」



意味深に呟いたシゲの言葉に、2人の視線がシゲに集まる。
それに、もったいぶるように腕を組んで、一人で納得するように何度も頷いた。



「わけがわからん。わかるように説明してもらおうか」

「病気は病気でも医者でも治せん病気やな。せやったら小島ちゃんの行動全部説明つくで」

「そ、それってどんな病気なんですか!?」



ずずい、とシゲの答えを待つように、2人が身を乗り出す。
そして、腕を組んだままの状態で、自信満々に口を開いたシゲの第一声は



「恋わずらいやな」

「・・・・・こい?」

「わずらい・・・・・」



怪訝な顔で迎えられた。



「サッカーやっとるときはともかく、他ん時は上の空。
しかも時々ため息ついとるっちゅーわけやろ?そんなん恋わずらい以外の何でもあらへん」

「え、で、でも。小島さんが恋わずらいなんてそんな・・・」

「唐突すぎると思うが。昨日までは何ともなかったのだろう?」

「恋っちゅーんはある日突然始まるもんなんやで・・・」

「そんな・・・・・」

「そうは言うが、毎日通っている学校で、そうそうきっかけというものは存在しないと思うが」

「何や今日あったかもしれへんやん」

「何かとは?」

「そんなん俺が知っとるわけないやん」

「じゃあ、どうするんですか?」

「つーわけで」



言って、くるりとシゲが振り返る。
視線の先にいるのは、何やら疲れた顔をしている幸無き男水野竜也。



「たつぼん、どうせ聞いとったんやろ?腹くくって今日あったこと全部話してみ?」

「・・・くると思った・・・・・」

「何か知ってるの?水野くん!!」

「知ってる・・・・・といえば、まあ・・・・・」

「いったい今日何があった」

「いや、正確に言うと今日というか、何というか・・・」

「もったいぶらんと早よ言いな」

「・・・・・・今日、珍しく疲れた顔して教室入ってくるから、何かあったのかと思って声かけたんだよ」

「それで?」

「そしたら」

「ほんなら?」

「夜更かしして寝不足だ、って・・・・・」

「・・・・・・寝不足?」



はあ、とため息をつく水野の周りで、男共はいっせいに首をかしげた。



「小島さんが夜更かしなんて珍しいね」

「課題でもあったのか?」

「いや、なかった。だからいちよう理由を聞いてみたんだ」

「ほんで何やったん?」

「・・・・・・・・・・・・げえむ」

「は?」

「ゲーム、やってたんだと」

「・・・・・・・・ゲーム?」

「小島ちゃんが?」

「するんだ・・・・・小島さん」

「ちなみに何のゲームなん?」

「サモンナイト3とか・・・・何とか」

「知っているか?」

「まあ、名前くらいはなあ・・・・」

「そ、それで?」

「そうやん。寝不足やからって今日の小島ちゃんはおかしすぎやで」

「まさかそれが理由の全てではあるまい」

「・・・・・・・・・・聞きたいか?」

「な、何やその聞き方」

「聞いちゃいけないことなの・・・?」

「いいから聞かせろ。このままでは気になって仕方ないからな」

「・・・・・ゲーム名聞いたから、いちようどんな内容なのか、って聞いてみたんだよ」

「結構律儀やでな、たつぼん」

「うるさい」

「いいから、続きは!?」

「そしたら」

「そしたら!?」

「いきなり・・・・・目の色が変わって・・・・・・・・」

「変わって?」

「語りだしたんだ・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「ちなみに内容はさっぱり覚えてないからな」

「まあ、知らないゲームの話だしね・・・・」

「聞かされてもわからないのは仕方ないな」

「つまり、小島ちゃんが今日一日おかしかったんは」

「ゲームのせい・・・・ってこと?」

「そこまでストーリーのいいゲームなのか?」

「話を聞いていた限り、小島がそこまで入れ込んでるのはストーリーというより・・・・」

「キャラクターなん?」

「もしかしたら、理想の人がゲームの中にいたりしたのかな?」

「それで恋わずらいか・・・・・」

「恋わずらい・・・・・・。ああ、確かにそんな感じかもな・・・・」

「な、何やねんたつぼん。いきなりそんな切ない表情せんでも・・・」

「で、それは何という人間だ?」



切ない表情で虚空を見つめる水野に、不破が問う。
すると水野があげていた視線を下げてふっと切なげに笑い、
ぽつり、と呟いた。



「・・・・・頭に皿があって」

「皿?」

「きゅうりを常備してて」

「きゅうり?」

「攻撃するときの鳴き声がそのまんまな」

「鳴き声・・・・?」



水野の言葉の意味を理解できず、首を傾げる三人を見据えながら、
最後の一言を、重い口を開いて、彼は言った。




「・・・・・・・カッパだ・・・・・・・・」







休憩終了を告げるホイッスルが、むなしく響いた。





FIN.
・・・・・・・・・・・・・・
カッパ×有希序章。むしろ有希カッパ。
有希さん出てきてないけどね。まあそのうちそのうち(続ける気かよ)

というわけで、こんなん出ました(ぇ)
どうでしょうとーさん。ダメですかとーさん(びくびく)

(2004.5.3)

ぶらうざばっく