戦争が終結し。
死んだと思っていた父は何故か(しぶとく)生きており。
おまけに息子がMSに乗って命を賭けて戦っている間に新しく芽生えたものがあったらしく。
母が死んでからこっち父と2人きりだった家族は今、息子の預かり知らぬところで倍以上に増えていた。
この居心地の悪さをどうしたらいいのだろう。
最愛の婚約者(未婚)の淹れてくれた最高の紅茶を啜りながら、
隣に座る婚約者と、血の繋がらぬ兄の楽しそうな会話を聞きながらアスランは途方に暮れた。
兄。そう、兄なのだ。兄。
あの銀髪が。
あのおかっぱが。
そう、あのイザークが。
兄。
夢なら醒めてくれ。
何度目かもわからない心の中の叫びは、今度も叶う気配がなかった。
「どうしましたの、アスラン?さっきからずっと黙り込んで・・・・・・」
よほど嫌な顔でもしていたのだろうか。
気がつくと、ずいぶんと心配そうな顔をしたラクスが自分の顔を覗きこんでいた。
慌てて大丈夫ですと答えても、眉はまだ小さくひそめられたまま。
きっと、上手く笑えていないのだろう。
そりゃそうだ。笑えるはずがない。
今自分は、最も愛しい人と最も苦手な人間に挟まれているのだから。
兄、と言われて思い出したけど、イザークって年上だったんだよなあ・・・・・・・。
混乱する頭ではまともなことは考えられないのか。
そんな当たり前のことを思いながらアスランはすっとラクスから視線を外し、遠い目で天井を見上げた。
「何だ貴様。言いたい事があるならはっきり言え」
「言えるもんならはっきり言ってる・・・・・」
はあ、と。それはもう深いため息を吐きながら、手にしていたカップをテーブルに置いた。
戦争終結後。
父と驚愕の対面を果たし、その驚きも覚めやらぬうちに新しい母だと紹介された銀髪の婦人。
何を突然!と叫ぶより先に、その見覚えのありすぎる銀髪に背筋を凍らせたのはいつのことだっただろう。
戦時中一人で暮らしていた部屋を強制的に引き払わされ、
実家に強制連行されたことも記憶に新しいというのに、つい遠い昔のように感じてしまう。
もう戻らないと思っていたラクスも、結局蓋を開ければ元の婚約者と言う位置に収まっていたし、
はっきり言って何不自由ない幸福を手に入れたといっても過言ではないのに。
「上手くいかないもんなんだなあ・・・人生って」
「何を一人で老け込んでいる。平和ボケか」
「平和・・・・・平和・・・・・・・か、これが・・・・・?」
淡々と、これまたラクスの淹れた紅茶をすするイザークが語る言葉に、
またも遠い目をしながらアスランが呟く。
もう戻らないと思っていた婚約者が自分の元に戻ったのは確かに幸せだ。平和とも言える。
百歩譲って。
父が自分の預かり知らぬところでさっさと再婚し。
それを機にいきなり家族団欒に目覚めたのか、未婚の婚約者も含めて実家に(借りていた部屋も強制撤去して)集結させられたことを。
幸せや平和と呼ぶとしよう。
しかし。だがしかし。
自分の婚約者と、かねてから彼女のファンだったらしい同僚が一緒に暮らすのは。
平和でも何でもないだろう・・・・・・・!?
強く拳を握り、心底無力な自分を不甲斐なく思う表情を浮かべながら、アスランは強く唸った。
「アスラン・・・・やっぱりさっきからおかしいですよ?お部屋で休んだ方が・・・・」
「大丈夫・・・・・大丈夫です、ラクス・・・・・・・・。
というより、貴女をここに残して部屋で休む方が心配で心配で・・・・・」
心配そうにアスランの腕に手を添えるラクスに、
それこそ涙でも流れるんじゃないかと思うくらい切なそうな声でアスランは答えた。
その言葉に嘘はなく、ここに彼女を一人置いていくなど、それこそ心臓に悪い。
「アスラン・・・・私は別に大丈夫ですから、部屋で休んでくれてかまわないのですよ?
ここにはイザーク様もおられますから、心配しなくても・・・・・」
「ラクス・・・・・それが心配なんだとどうしてわかってくれないんです・・・・・・!」
「どういう意味だ、貴様ぁ!」
「そのままの意味だ、そのままの」
泣く泣くラクスに訴えた言葉に怒るイザークに、今度はきっぱりとアスランは言った。
別にイザークがラクスにどうこうするとかを懸念しているわけではないのだ。
そこまで思慮分別のない人間だとは思っていないし、むしろそういう常識はそこらへんの人間よりあると思っている。
しかし、問題はそこではなくて。
例え自分がここから離れ、この場に残された彼等の間に交わされるのが微笑ましい談笑だとしても。
その行為自体が考えただけで悔しく。
それ以上に、あのイザークがうきうきと話す様子をつい想像してしまうことのダメージは大きい。
信じていたのに・・・・・・!
ディアッカあたりがこの場にいたなら、「何をだよ」と即座につっこんでくれるであろう、
もっともらしい叫びが、アスランの胸中では叫ばれた。
「だいたいしつこいぞ、貴様!いつまでそうやってぶつぶつ文句を言うつもりだ!
母上方の決めたことに、まだケチをつける気か!?」
「そんなことはない!
俺だって父上の決めたことに今更文句を言うつもりはないし、幸せになって欲しいとも思う。
・・・・むしろ問題は他にあるというか・・・・・・何というか・・・・・・・・」
「つまり何か。俺がこの場にいるのが気に食わんと。そう言うんだな!」
「いや・・・まあ・・・・・・噛み砕いて言うとそんな感じで・・・・・」
テーブルを挟んでの攻防戦。
それをハラハラと見守っていたラクスは、『俺がこの場に〜』の下りを聞いて、まあ、と小さく声を上げた。
「いけませんわ、アスラン。
家族が共に暮らすというのはとても幸せなことですのに・・・・」
「いや、あのですね、ラクス。
俺とイザークは別に血の繋がりがあるわけでもなんでも・・・・」
「けれど、今はご兄弟なのでしょう?」
「まあ・・・・義理で・・・・・・・・・そうなってるみたいですね」
「なのに貴方ときたら、私が知っている限り、1度もイザーク様をお兄様とお呼びしていないのですよ?」
「そりゃまあ・・・・呼んでませんし。呼ぶ気もないですし」
「せっかく出来たご兄弟ですのに・・・・・・・もったいない限りですわ」
「そんなこと言われましても・・・・・・・・」
ほう、と残念そうに顔を伏せたラクスをあたふたと見下ろして・・・そしてふとイザークの方を見た。
あっちもこちらを見ていたらしく、一瞬目が合い――そしてそれを機にイザークが口を開く。
「先に言っておく」
「何だよ」
「間違っても、俺を『兄』などとは呼ぶな。薄ら寒い」
「俺だって!・・・・頼まれたってごめんだ」
そう、吐き捨てるようにアスランが言うと、悲しげに顔を伏せていたラクスが顔を上げて、
今度は辛そうな顔のままでイザークの方を向いて言った。
「『兄』と呼ぶのはお気に召しませんか?
私もずっと一人っ子でしたから、お義兄様とお呼びするのを楽しみにしていましたのに・・・・」
「い、いえ。そういうわけでは・・・・・・!
俺はただ、アスランに『兄』と呼ばれるのが嫌なだけで。
ラクス嬢はお好きに呼んでくれてかまいませんから!」
「本当ですか?私、それを聞いて安心しました!
そうですわ!せっかくですもの、イザーク様も私のことを『ラクス』と呼んでください!」
「そ、そんな呼び捨てなんて!恐れ多い!!」
「何故です?私は将来貴方の義妹になるんですもの、別におかしくなんかありませんわ」
「そう・・・・言われましても・・・・・・・・」
「ラクス、ですわ。ラークース。呼んでみてください」
「そこまでおっしゃるなら・・・・・・・あー・・・・ラ、ラク・・・・・・・」
「ラ・ク・ス。ですわ」
「・・・・ラク、ス・・・・・・・・・」
「――はい、お義兄様!!」
それはそれは、清々しいほど可愛らしい兄妹の図だった。
あー、照れてる照れてる。あのイザークが。珍しいもん見たなー・・・・・。
きっちり自分を切り離された世界で繰り広げられる素敵兄妹の図を見ながら、
アスランはこの瞬間、結婚より何よりまず先に、この家を出る決意をしたという。
無理矢理終わる。
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もしもイザママとザラパパがくっついたら絶対こうなる(ならんならん)
つーか、やっべえ。自分で書いといてこの構図萌えるよ!!(爆)
前回のお題以外の種小説同様、イザークはラクスマニアです。
そんな彼が好きなんです。歪んだ愛でも愛は愛(死)
そして今回もやっぱりイザーク以上にアスランが壊れましたね・・・・苦労人☆
(つーか、イザもラクもアスも口調わからんよ、全然;;)
個人的にイザママとザラパパのカプは好き(ぇ)
アスラクとイザラクは言うに及ばず。だからこそこの家族設定はかなりツボ。
誰かこれでシリーズ書きませんか。いや、マジで。期待してます(託すなよ)
ところで、素朴な疑問なのですが。イザママは未亡人ですか?ジュール一家は母子家庭?
もし違うかったら大変ですよね。別に私は困らないけど(マテマテマテ)
というわけで、清花ちゃんに個人的なお礼小説でした。
どこらへんがお礼やねん、とかは禁句です。
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