お題11『癒しの歌声』後。







「アスラン!!怪我はもういいんですか?」



顔を合わせるなり満面の笑みでそう言ったニコルが、小走りに駆け寄ってきた。
ほんの3日会わなかっただけなのに、心底喜んでくれているらしいその笑顔が嬉しくて、つられるようにアスランもふと笑みが零れる。



「ああ・・・。そもそも、3日も入院するのが大げさ過ぎたんだ」

「ダメですよ、怪我を甘く見たら!
それに、普段休暇なんて無いに等しいんですから、たまには良かったんじゃないですか?」

「まあ・・・・それは・・・・確かに・・・・・」

「ラクス嬢もお見舞いに来てくれたんでしょう?」

「な、何で知って!?」

「ラクス嬢にお知らせしたの、僕なんです。
噂によると、入院してる間ずーっと看病してくれたとか。良かったですね、アスラン」

「どこでそんな噂・・・・」



心なし照れたように顔を背けたアスランをニコルが小さく笑う。
そして、ふと下げた視線に彼の手に握られている見覚えの在る袋を見止めた。



「その置き土産、少しは役に立ちました?」

「え、ああ・・・・・」



言われて、手に持っていた袋を胸の辺りまで持ち上げる。
中身がぶつかりあって、カタリと小さな音が鳴った。



「良い暇つぶしになった。・・・・・と言っても、初日以外ほとんど使ってないんだ。
せっかく渡してくれたのに・・・・すまない」

「いえいえ。せっかくラクス嬢が一緒なのに、暇な時間なんてあるわけないですよね、やっぱり」

「ニコル!」



今度こそ心底照れたように顔を紅く染めて怒ったアスランを、ニコルが声を立てて笑った。



「とにかく!!・・返すぞ」



怒ったように袋を突き出したアスランの様子を、未だくつくつと笑いながらニコルがそれを受け取る。
そしてその場を袋を開け、その中から数枚のCDを取り出した。



「これ、実は僕のじゃないんですよ。
クラシックばっかりじゃさすがに飽きるかな、と思って。皆にもいろいろ借りて」

「だろうと思ったよ」

「この2枚はディアッカで、こっちはラスティから借りたんです。
それで、そっちのラクス嬢のCDなんですけど・・・・・・」



手にしたCDを一枚ずつアスランに渡しながら説明するニコルの言葉が途中で途切れ、
今までCDに注がれていた視線が、ふとアスランの後ろに向いた。
その視線の示すとおり、背後にはいくつかの気配。
恐る恐る振り向くと、やはりと言うか何と言うか、先ほどまではこの場にいなかった2人の姿がそこにあった。



「よう、アスラン。怪我は、もういいのか?」

「何だ、もう戻ったのか。いっそそのまま戻らなければ良かったものを」



ディアッカと、イザーク。

ニコルが手にしていた数枚のCDのうち、ディアッカとラスティから借りたというCDはすでに説明がなされた。
残るクルーゼ隊メンバーで、CDを貸しそうな人間は2人。
その上で、今この場、ニコルの視線の先にいる人間がラクスのCDの持ち主だということは。

つまり。

















「アスラン・・・・・。信じがたいのはわかりますが・・・・・・・・・・事実です」











突き付けられた衝撃の真実を前に石化したアスランに、至極重い口調でニコルは告げた。



背中越しに聞いた衝撃の告白に、
勢いよくニコルを振り返ったアスランの表情は固かった。
見開かれた目は戸惑いに揺れ、口は喘ぐように軽く開けられている。
何をそんな大げさな、と人は言うかもしれないが、本人はいたって真面目だ。




「ニコル・・・・・俺・・・・俺は・・・・・・・・・!」

「気持ちはわかります・・・・・僕だって最初これを受け取ったとき・・・・・・・」

「すまなかった・・・・俺の為にお前がそんな苦労をしてたなんて・・・・・!」

「いいんです、アスラン。僕が勝手にしたことなんですから・・・・」

「ニコル・・・・・・」




部屋の入り口にて、ショックの余り正常さを失い混乱状態に陥ったアスランと某日の衝撃を思い出したニコルによる三流ドラマが今、繰り広げられた。




「何なんだこいつら・・・・・・」

「さあな・・・・・・・・・・」




それを目の前に、意味がわからんと言った風に眉をひそめてイザークが言う。
何となくアスラン達の心中を察したディアッカは、はぐらかすように視線をそらして曖昧な言葉を返した。




「用がないならさっさとどけ。入れんだろうが」




未だこっちの世界に帰って来ないアスランを押し退け、イザークが部屋へと入る。
それに続くように部屋に入ろうとしたディアッカが、ふと立ち止まり、
アスランの手にあった2枚のCDを掠め取った。




「これ、俺のやつ。貰ってくぞ」

「え、ああ・・・・・・・借りてて 悪かったな、ディアッカ」

「別にいいって」




ディアッカの言葉で現世へカムバックしたアスランが、半ば放心状態で礼を述べる。
その様子を察し、すでに部屋の中に入っていたイザークが振り返り、ずかずかとアスランの目の前まで戻り、無言ですっと手を出した。




「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」




無言の応酬。というか。
無言の要求をするイザークの手をじっと見つめて身動きが取れなかったアスランの無反応にいい加減イザークが痺れを切らし、苛立ったように一声上げた。




「何を呆けてる。さっさと返せ」

「それ・・・・・・・・CDを、だよな」

「当たり前だろう。とっとと返せ」

「CD、なんだよな」

「くどいぞ貴様!!」

「答えてくれイザーク!・・・・・大切なことなんだ!!」




いきなり声を荒げ、身動きの取れる怪我をしていないほうの手でアスランがイザークの肩をつかんだ。
突然のことで目を見開いたイザークに対し、アスランは低い声で告げる。




「今俺の手元には2枚のCDがある・・・・・・・」

「それがどうした。いいから手を離せ」

「1枚は聞いていないからわからないが、もう1枚は確実にラクスのものだ」

「手を離せと言っている!」

「そして・・・・1枚はラスティのもの。もう1枚はお前のものだと聞いた」

「さっきからそう言っているだろう!手を離してとっとと返せ!」




怒り心頭。
完全に頭に血の上っているイザークとの微妙に噛み合っていない会話の後、
悲しそうな表情を浮かべてアスランがイザークの肩から手を離した。
そしてくるりと振り返り、ニコルの方を向いて項垂れた。




「嘘だと言ってくれ・・・・・二コル」

「アスラン・・・・・・」

「ラスティなら・・・・ラスティが所有者だというのなら、まだ信じられるんだ!」




アスランの悲痛な叫びに、ニコルは目を伏せて無言で首を振った。
最後の希望が消えうせ、悲しみに暮れたアスランの背中があまりにも痛々しかったのか、今まで出来る事なら無関係でいようと隅にいたディアッカが、ぽんとアスランの肩に手を置いた。




「なんつーか・・・まあ・・・・・・しばらくすれば慣れるって、な?」

「確かにお前はもう慣れたかもしれない・・・。でもな!俺は今聞いたんだ!!」

「いや、驚くのはわかるけどさ」

「出来れば知りたくなかった・・・・・・・!」




そう言って、CDごしにぐっとアスランが拳を握った。
痛々しいアスランの傷心具合に、涙するニコルと同情するディアッカの優しい手が伸びる。
そのまま3人で別の世界で悲しみに暮れる三流ドラマ第2弾が始まる、かと思いきや。








ぱっこーーん。






ドラマ開幕直前、イザークの都合よく手にしていたファイル攻撃がアスランの脳天にクリーンヒットした。






「ふざけるのもいい加減にしろ!!おちょくってるのかお前ら!!!」

「何を言う!!こっちは至極真面目だ!!!」

「尚悪い!!」




ファイル攻撃第2弾炸裂後、イザークが無理矢理アスランの手からCDを奪い取った。
奪い取られたCDはやはりラクスのもの。悪夢は現実となり得た。




「あーやっぱりそっち持ってくー・・・・・・・」

「やかましい!!」




きっちりと自分の手からラクスのCDを奪い取っていったイザークに、情けないまでの悲しみの声を上げるアスランにイザークの一喝が冴え渡った。




「何なんだ一体、腹の立つ!!!」

「いや・・・・何でも無い。衝撃の事実に頭がついていかなかったんだ。悪かった」

「今更謝るな!余計腹が立つ!!」

「・・・・・・・イザーク、最後に一つ聞きたいんだが・・・・・・」




何とか正気を取り戻したアスランが、静かに切り出す。
怒り心頭のイザークから返事は帰ってこないが、とりあえず聞いてるだろうということにして、尋ねる。




「それ、たまたまCD持ってたとかいうオチ・・・・・か?」

「何故わざわざオチなどつけねばならん」

「それは知らないけど・・・・・俺としてはオチついてた方が嬉しかったかなーなんて・・・・」




突き放すように返ったイザークの返事に、再び現実がアスランの前に立ちふさがった。




「ということは・・・・・・・・やっぱりファン・・・・・なのか、ラクスの」

「そうだ。悪いか」

「別に悪かないけど・・・・・・というか良い表情だなー、今の。
晴れ晴れしいというか、無駄に誇らしげというか・・・・・・・・・」

「彼女の歌は素晴らしいの一言だ。歌姫の名は、彼女こそふさわしい」

「言い切るし・・・・・・。もしかして、コンサート、とか行ったこと・・・・・」

「もちろんある。貴様だってそうだろう」

「いや、俺は・・・・・・」

「無いのか!?1度も!!?」

「いきなり怒るなよ!!暇がないんだ、仕方ないだろう!?
そもそも、何でそんな怒るんだよお前が・・・・・」

「暇がなくても無理矢理都合をつけるだろう、普通!それでも婚約者か!」

「普通、なんだ・・・それ・・・・・・てゆか、婚約者ってのは無関係なんじゃ・・・・」

「大有りだ!!だいたい何故貴様のような奴が彼女の婚約者など・・・・・!」

「あーもう!!ディアッカ!!こいつをどうにか・・・・・・!」




そろそろ暴走しそうなイザークから逃れるべく、助けを呼ぼうとディアッカの方を振り返る。が。










いない。














「!!?」












そこにあったはずの2つの陰は、こつぜんと姿を消していた。
再び混乱し始めるアスランの思考回路。
思い返して見れば、ファイルで頭を殴られた辺りから彼等の存在は皆無となっていた。




あいつら・・・・こうなることを読んで逃げたな!!?




ご名答。
だてに付き合いの長くないディアッカは、被害を被らぬ為とっとと行方をくらまし、
それに便乗するようにニコルもどこかへ行ったらしい。実に賢明な判断だ。

だがしかし、そうなるともう、この場の収拾をつけられる人物がいないということになる。







「聞けば、入院中ラクス嬢にずっと看病させていたらしいな!
忙しい身の上で、わざわざそんな重労働・・・・・!貴様は遠慮というものを知らんのか!
大した怪我でもないくせに、ラクス嬢にいらぬ心配などかけて・・・・・・!
もしそれがきっかけで、彼女が心労で倒れでもしたらどうする!!だいたい・・・」


「・・・・・・勘弁してくれ・・・・・・・・」







その後、憧れの歌姫を身近なライバルに取られたファンの嫉妬の炎は燃え上がり、
アスランは数時間彼の愚痴につき合わされたと言う。









終わっとけ。
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こんな君らが大好きだ(逝って来い)

ライバルの意外な趣味(=アイドル萌え)を知ってうろたえるアスランと、
自分がラクスファンであることに誇りを感じているイザークの夢の対談(死)
イザークよりはむしろアスランが壊れてるような気がせんでもないが、まあいいか。
とりあえずイザはラクス大好き。大ファン。むしろマニアで(え)
婚約者よりもラクスのデータ知ってそう。笑い。
そしてラクスについて語るときは最高に良い表情をすると思う。いっそ悦。
婚約者のアスランはライバルと言うよりむしろ敵。そりゃ仲良くは出来ないよね☆(笑)
仲良くなっといた方がいろいろと得をすると言うのに、つい目先の嫉妬に捕らわれて気付けない。バカな子・・・・!(死)


というわけで、ヒノエに贈るstmimiからのバースデイプレゼント。

プレゼントだけど、君からのオエビイザはしっかり貰うからな、ヒノエ!(えー)
期待してるvあー、すっごい楽しみーーー!!(笑)


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