静かな庭園は今、賑やかな庭園へと姿を変えていた。
右を向いてもハロ。
左を向いてもハロ。
前を向いてもハロ。
どうしてくれようこの状況。
少年は苦笑を浮かべつつ頭を抱えた。
だがしかし、自業自得と人は言う。
「ハロハロ、ラークースー!!」
ぴょんぴょんと飛び回るハロ1号、人呼んでピンクちゃん。
「まあ、ピンクちゃん。おいたはダメですわよ」
飛び回るハロを微笑ましく見つめる婚約者。
今日自分が訪れた張本人のはずである。確か。
「ラークースー、ゲンキカー」
「はい!ラクスは元気ですよ」
「ハロ、ゲンキ!」
「ピンクちゃんも元気ですのね。それは良かったですわ」
「ラクスー。アーソーボー」
「まあ、ピンクちゃん。今はアスランがいるからダメですよ」
「ハロハロ!!」
「ごめんなさい。後で一緒に遊びましょうね、ピンクちゃん」
「ハロ!」
何故か成り立つ会話。
ついて行けない常識人。
はじき出されている現状。
疎外感。
おかしい――――。
確か自分は前もって連絡を入れた上でここを訪れたはずだ。
確かに彼女も笑顔で迎えてくれて、いつものようにこの庭に通されて―――。
今に至る。
かれこれ結構な時間ここにいるような気がするが・・・・。
まともに会話をした記憶は無いに等しい。というか無いような気がする。
どの会話にも、端々にハロの掛け声が入っていたような気がする。というかそうだ。
こ、の・・・・邪魔者!
ぴょこぴょこと跳ねる球体に殺気を含んだ視線を向けつつ、苛立ちを必死隠してアスランはひたすら紅茶を口に運んでいた。
いい加減水腹にでもなりそうな勢いだが、他にすることもないので仕方ない。
溢れんばかりの笑みを称えるラクスの笑顔を見るのは正直飽きないし、見てて微笑ましいものがあるにはある・・・のだが。
その笑顔が何故俺でなくハロに向く・・・・・・・・!?
男心は複雑だった。
目の前の婚約者は、その球体の邪魔者とばかり楽しそうにはしゃいでみせる。
成り立つはずの無い会話を独自の感性で可能にしてしまう。
おまけに自分が帰った後に遊ぶ約束など取りつけてしまうし・・・・・。
ぶつぶつとハロへの不満を並べたてているとき、彼ははっと気付いた。
『今はアスランがいるからダメですよ』
『後で一緒に遊びましょうね』
ラクスの言葉の意図するところ。
それは『遊びたいけれどアスランがいるから遊べない』ということで、それはもしや・・・・。
邪魔なのはハロではなく俺の方だということなのか・・・・・・・・?
「ラクス!!!」
どばん!と目の前の机に手をついて突然アスランが立ち上がった。
突然のことに思わず身を怯ませ、肩を縮ませたラクスが、恐る恐るアスランを見上げると、
もはや必死に近い表情でアスランは言った。
「たまには外に出てみませんか?」
表情とは裏腹に、いつも通り穏やかなアスランの物言いにほっとしたラクスが、
椅子を座りなおして嬉しそうに手を叩いた。
「まあ、どこに連れていってくださるんですの?」
「そうですね・・・出掛ける、と言ってもあまり賑やかなところには行けませんし。
ドライブくらいしかできないかもしれませんが・・・・・・」
「アスランの運転でドライブですか?とても楽しそうですね」
「あ・・・・・では、さっそく・・・・・」
「はい!行きましょう!――楽しみですね、ピンクちゃ」
「出来れば!!!!!!」
再び勢い良く手をついたアスランの唐突な行動に、ラクスの言葉が途中で止まる。
先ほどからひたすら挙動が不信なアスランに怪訝な表情を示しつつ、言葉の続きが紡がれるのと待つ、と。
「ハロは抜きで・・・・・・!」
懇願に似た申し出が、アスランの口から飛び出した。
「ピンクちゃん抜き・・・ですか?どうして・・・・」
「どうしても」
「でも・・・・」
「でも、は無しでお願いします」
「けれど・・・・」
「けど、も無しです!」
「どうしても、なんですの?」
「どうしても!」
「どうして・・・」
「ですからどうしても・・・・・・!」
終わりの見えない押し問答。
その後結局ラクスが折れ、ハロなしのドライブを楽しんだらしいのだが、
そこに至るまでの苦労が身にしみて、彼はしばらく思い出しては涙にくれたという。
アスラン・ザラ。
自分で贈ったものに焼くもちを妬く男。
FIN.
―――――――
男は黙って背中で泣け(何)
とゆーわけで、ヤキモチザラ氏でした。お粗末様。
ハロが絡むとギャグにしやすいなあ・・・・うふふ(怖)
これ以外の邪魔者が思いつかなかったもので。
でも実際問題、ラクスはアスランよりハロを大事にしていそうなので。げふ。
2003.09.25 stmimi
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